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一方的な恋心を抱く恋ばかりしていた。

いや、していると言った方が正しいか。

今までの人生でまともに付き合ったと呼べる人は一人だけだ。

今日はそのことについて書いてみよう。

中学生の頃までは、自分にとって誰かと付き合うということはなんだかほど遠いことのように思えて、漠然と高校生になったら彼と呼べる人が欲しいなと思っていた。

だからそれまでは誰に伝えるでもなく、心の中に秘めた一方的な片思いしかしたことがなかった。

高校に入学して1年が経った頃、その願いが叶って初めての彼ができた。

同じ高校の同級生だったが、クラスも違ったし、接点も全くなかった。

だけどその人は、その高校で私が一番初めにかっこいいなと思った人だった。

入学前のオリエンテーションが行われた日、入学後に使う教科書を買いに全生徒が別の場所へ移動した。

教科書の購入を順番待ちする列が階段の下から上まで続いていた。

そしてその時私は初めてその人を知る。

私の少し後ろ、階段の上の方で順番待ちをしていたのがその人だった。

今思えばあれは一目惚れだったのだろうか。

好きという感情こそ芽生えなかったが、顔や表情、立居振る舞いから現れる雰囲気に惹かれた。

入学してからはその人とはクラスも違うし、共通の授業も共通の友人もいなかったので、
ただただ廊下で見かけるたびにドキッとしたり、嬉しくなったり、気持ちが高揚するのを感じるくらいだった。

一方的な恋とも呼べない恋。

かっこいいなくらいの憧れだったように思う。

もちろん、誰にもそのことは言っていなかった。

その頃の私は極度の人見知りだったので話せる人も限られていて、目立つ人間でもなく、相手が私のことを知っているはずもないと思ってたし、それでよかった。

同じ高校に通っていても、なんだかその人とはいる世界が違うような気がして、まさか付き合うことになるなんて考えてもいなかった。

自分は自分の世界の中で、その中で誰かを見つけるのだろうと思っていた。

それが急展開を迎えたのは冬休みが終わって、三学期が始まったある日。

その頃は今みたいにLINEはなく、メールが主流だった。

私にも直接話したことはないがメールをする相手は何人かいた。

いわゆるメル友だ。

そのうちの一人から紹介したい人がいるとメールが届いた。

そこには、相手の名前とクラスと部活名が書かれていた。

それを見た瞬間、体がポッと熱を持ち心が高鳴った。

その日までその人を遠くからたまに見かけるだけの状態ではあったが、かろうじてクラスと部活は知っていた。

だが残念なことに、その時私はその人の名前を知らなかったのだ。

しかし書かれていた名前を見た時に、その漢字と響きがその人っぽいなと直感的な閃きがあった。

ただ確かめる術はその時点ではなく、私は一縷の望みをかけてそのメル友に了承の返信を送り、
それからおそらくその人であろう人とのメールのやりとりが始まったのだ。

メールのやりとりは新鮮でとても楽しかった。

大体22時頃からメールのやりとりが始まるのだが、元々私は夜に早く寝てしまうタイプだったので、20時頃に一旦仮眠してからまた起きてメールをするという生活になった。

そしてやりとりを始めてから1週間。

ついにその人の名前を知る時が来た。

私の学校は一年生の時に1泊2日のスキー研修を行っていた。

近くのスキー場へ行き、そこで初級・中級・上級とわかれて、2日間スキーを滑るというものだ。

研修の前に、各級ごとの生徒の名前とゼッケン番号が書かれていたしおりが配られた。

そこで私はそれを隙間なく調べ、メールのやりとりをしているその人の名前を見つけ、ゼッケン番号を暗記した。

そして当日、スキー場でその人の姿を発見し、祈るような気持ちで恐る恐るゼッケン番号を確認すると、その人の胸にはまさに暗記したその番号が書かれていたのであった。

目で追うだけの存在だったその人が、毎日メールのやりとりをしているその人と繋がった瞬間だった。

その瞬間の高揚感、気持ち、感情を事細かに表現できるほど今は覚えてはいないが、
こんなことって起きるんだというその奇跡に感動を覚えたのは今でも記憶に残っている。

そんなこんなで俄然メールのやりとりが楽しくなった。

単純だなと自分でも思う。

それから1ヶ月半経って、初めて一言二言会話し(ものすごく緊張した)、
その2週間後くらいに初めてのデートをして、
さらに2週間が経って付き合い始めた。

結局彼とはトータルで8年くらいお付き合いをしていたので、一緒に過ごした記憶やエピソードをふと思い出すことも極たまにあるが、(なにせ別れてから長い年月が経っているので)

その中で一番記憶に残っているのは、一方的に追いかけているだけだったその人と、奇跡のように縁が繋がって付き合うところまでの記憶だ。

今でも一方的な恋ばかりしているのは、いつまでもその時のことを忘れられずにいまだに奇跡を夢を見ているせいなのかもしれない。(知らんけど)





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忘れられない恋物語

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