輝き人! NO.4 田中万葉 /Mayo Tanaka

“音楽に始まり、音楽に終わる。”
気が付けば、いつだって音楽がそばにあった。
“音楽に支えられた私が、今度は別の誰かに音楽で与えていきたい。”
どんな時においても自己の音楽を変えず、歌詞に書いてあるのはストレートな私の気持ち。
音楽というツールを使って、彼女が届けたいものとは?
今回は輝き人!として、
シンガーソングライターの田中万葉さんを紹介します。

―PROFILE―
田中万葉
Tanaka Mayo
1994年2月21日生まれ。東京都出身。A型。
シンガーソングライター。
慶應義塾大学経済学部4年。
都内のライブハウスを中心に活動を展開。
作詞作曲からフライヤー、そしてHPまでも自らの手で作成している万能人。

interview

―まず初めに簡単な自己紹介をお願いします。
万葉:慶應義塾大学経済学部4年の田中万葉です。生まれは東京都の練馬区光が丘で、幼少の頃は海外にいました。普段は歌手として活動していて、「泣いて、そして笑え」をモットーに、自身の感情の叫びとも言える曲を歌っています。聴き手それぞれが自分なりの映像というものを思い描ける、映画音楽ならぬ”音楽映画”を目指しています。
―主にどこで活動していますか?
万葉:主に、渋谷、代々木、下北沢のライブハウスでライブを行っています。
―どれぐらいの頻度ですか?
万葉:月に3、4、回歌わせていただいています。
―曲に描いている世界観を教えてください。
万葉:曲は私の感情をぶちまけたものになっています。それも、孤独、寂しさ、怖さなどといった、決して明るくはない感情が主です。世界観という空間で見るならば、ひとりで暗い部屋にいて、答えもないのに悶々と悩みこんでいるイメージですかね。私自身は割と寂しがりやで、その時感じた情景をまっすぐ曲に投げ掛けています。
―音楽を通じて、世に伝えたいものは何ですか?
万葉:「一人でもいい」ということ。「人間、みんな正直であるべきだ」と思っています。人はどうしても、他人の目を気にして周りに合わせてしまいがちです。私自身、時折合わせてしまうことはあるのですが・・・でも、無理して周りに合わせるのでなく、私は自分に正直でいたいし、みんなにもそうあってほしいです。その結果、自分を理解してくれる人がいなくて孤独になってしまうとしても。もちろん、「ひとりがいい」ということではありません。ただ、嫌われないように偽物の自分を作るくらいなら、本物の自分で真正面から向かって行きたいということです。嫌われたり、バッシングを受けたりすることを恐れるのではなく、「バッシング、だからなんだ!」って思えるくらいが丁度良いと思っています。自分の気持ちを、何よりも大切にして欲しい。そんなメッセージを伝えて行きたいです。

―でも、多くの方と幅広く付き合うには多少なりとも自分を曲げなくてはならないですよね?
万葉:深く広くなのか、浅く広くなのか、ですよね。やっぱり合う合わないってありますし。私の場合は、出会って半年ぐらいは、自分を曲げなくてもやっていけるのですが、その後はそうも行きません。半年のうちで自分を曲げなくてはならないと感じた人とは、自然とその後は離れて行きますね。
今の私の力量では、「自分を曲げなくては、この人と付き合えない」って感じる人とは、それなりの関係しか築けないです。
―どんなことを思って曲を書いていますか?
万葉:自分の気持ちしか考えていません。(笑)普段の生活では、強がって嘘をついたり、他人に合わせたりしてしまうのですが、歌っている時はストレートでありたいです。
―そもそも、音楽を始めたきっかけを教えて下さい。
万葉:母がピアノの教師であったこともあり、物心ついた時には、もう既にピアノに触れていました。歌手になる夢を抱いたのは中学生の頃でしたね。
―どうして歌手を志すようになったのですか?
万葉:Janne Da Arcの歌を中学の時に初めて聴いて・・・です。
小さい頃にオーストラリアなど海外を転々とし、人付き合いや環境の変化などで精神的にきつくなっちゃって・・・。でも、当時の私は強がりで、内側にどんどんそれを溜めちゃっていたみたいなんですよね。そんな時に、Janne Da Arcのyasuさんの声を聴いて、号泣しちゃったんです。(笑)でも、そのおかげでスッキリできて、その時ですね。自分の感情を送り出すために歌を作ることを決めたのは。
―ずっとシンガーソングライターとして活動なさって来たのですか?
万葉:弾き語りだけでなく、去年はバンドをやったりもしていましたが、”田中万葉”はあくまでひとりのシンガーソングライターであったはずです。
―バンドを組んで、あえて音楽性を対立させて、高い次元に行こうとは思いませんか?
万葉:今はまだ自分が固まっていないので、対立してもそこから高い次元に行けるのか…。行く行くはそういった経験を踏むのも良いかもしれませんが、今その道に踏み出そうとは思っていません。
―バンドだと一人あたりの負担が軽減され、自分の仕事に集中できると思うのですがどうですか?
万葉:バンドになると要領よく折り合いつけて、分担できるので羨ましいです。私は一人なので、「曲も作らないと、フライヤーも、ライブも・・・・」なんてよくオーバーヒートしています。(笑)
―そのように、多くのことをひとりでこなしていく万葉さんはやるべきことの優先順位の付け方や管理に長けていると思うのですが、優先順位の付け方はどのように決めていますか?
万葉:音楽のことを優先に考えているつもりです。でも、私自身は管理がものすごく下手なんです。やることリストは作りますけどね。(笑)
―歌手としての成功を感じる瞬間はいつですか?
万葉:演奏が上手くいった時ですかね。
―上手くいくというのは、どういう意味合いですか?
万葉:歌っている時に、めっちゃ浸れている、ということですかね。上手くいったライブの後は「今日歌って良かった!」と思えます。逆に、冷静なままで歌い切ると、どっと疲れが出ますね。
―最近は万葉さんのなかで“上手くいく”という状態はできていますか?
万葉:つい最近までは調子が悪かったです。(笑)でも、6月10日のライブでは 良い演奏が出来た気がします。

―たくさんのライブをこなす万葉さんですが、緊張とかしませんか?
万葉:しますよー。MCとかも、自分が何言ってるんだか分からない状態になったりします。最近はちょっと強くなって来た気もしますが、まだまだ不安定です。
―音楽活動を通じて発見できたものは何ですか?
万葉:「人間はひとりひとり違うからいい」ということ。自分はたった一人しかいなくて、どんな自分になるかも自分次第。それが私たちの持てる自由ってことだと思います。私は元々“孤独”が大嫌いで、独りにならないように、「みんなと同じ」になれるようにと思っていました。でも、今は「まよはまよだから、これでいいんだ!」と思えるようになりました。
―音楽を辞めたいと思う瞬間はありますか?
万葉:ありますよ〜。(笑)曲の方向性とかどうしていいか分からなくなって、行き詰った時ですかね。
―そのような時はどう対処してきましたか?
万葉:1回歌うのをやめて、聴く専になります。 “珍しくiPod聞いてるな”って感じる時は、そんな時です。(笑)
―シンガーソングライターとしての悩みを教えてください。
万葉:私の歌手としての軸として、“孤独”という大きなテーマがあります。
だから、孤独が必要なんです。孤独は寂しくて嫌なものですが、私が孤独じゃないと私の音楽は成立しません。そのジレンマに悩まされています。
―“孤独”というものは、いつ頃から万葉さんのなかで大きな存在になったのですか?
万葉:小学校のころから、無意識のうちにずっとありました。中学の時から認識し始めて、高校の頃には強く感じるくらいになりました。
―友達が少なかったのですか?
万葉:視覚的な孤独ではないです。周りにはたくさんの人がいても、一人だけ冷静になってしまう自分がいて、「今この人たちと通じ合えているのかな?」と思うことがありましたし、今でも日々感じる時はあります。ひとりで勝手に寂しくなってるだけかもしれないですね(笑)
―孤独である空間を大事にしている万葉さんですが、そうなると結婚とかは難しいですよね?
万葉:そうなんです。(笑)よく分かってますね。結婚するなら、ずっと安心できる人がいいです。でも、今はまだ、一つの部屋にもう一人の人間がいるのはムリですね。
もし結婚したとしても、家の中で空間を分けちゃうと思います。
―好きなタイプとかはありますか?
万葉:誰よりも私にかまってくれる人がいいです。一緒にいない時も私のことを考えていて欲しいです。
―独りでいる時は何を考えているのですか?
万葉:先のことを考えている時が多い気がします。明日はなにしようかなとか、次のライブのセットリストはどうしようかな、とか。
―独りで考えていると辛くなりませんか?
万葉:そうですね。独りで抱え込むのは辛いです。独りの時間が終わった後に、無駄な時間だったと思うことは多々あります。あと、変に疲れちゃいます。
―でもそれを繰り返すわけですよね?
万葉:その繰り返しが曲になっていくんです。(笑)

―尊敬しているアーティストの方はいますか?
万葉:私を音楽の世界に引き込んでくれたという意味でJanne Da Arcのyasuさんです。あとは、Superflyさんです。メジャーデビューした後に、自分の音楽が変わってしまうアーテイストの方が多くて、私としては「この人は本当に今やっている音楽が好きなのかな?」と疑問に持つことがあります。でも、Superflyの志帆さんは自分を貫いていて、その上で音楽というものを楽しめていると思います。私も自分の好きな音楽のスタイルを貫いて行きたいです。
―自分の音楽を貫くことは、素晴らしいことだと思います。誰でも出来ることでは、ないですよね。しかし、一方でプロとしてお客さんのニーズに応えることも必要であって、その結果その人本来の音楽が変わってしまうことについてはどう思いますか?
万葉:商売重視で考えるならば、それも理には叶っていると思います。でも、それを自分がやりたいかと言われたら、答えは否です。私は、趣味としてある今の音楽性を変えるつもりはありません。それが、あるままの形で、多くの方に受け入れてもらえるものになればと思っています。私は、万人に好かれる音楽が作りたいのではなく、私の音楽を聴いて好きになって欲しいんです。
―そういえばSuperflyさんの曲は歌うのが難しいことで有名ですよね。それについては、歌手である万葉さんの目から見て、どのようにお考えですか?
万葉:特に宇多田ヒカルさんやYUIさんが出てきたあたりから、女性のアーティストは優しい感じで歌うイメージが広がりました。実際、女性歌手の方でも地声と裏声の狭間で歌う方が多く、声自体は“細い”感じがあります。当然、それを真似して歌う女の子も増えたわけであって、そういう彼女たちからすると、Superflyさんのパワフルで芯のある力強い声はなかなか出せないんじゃないでしょうか。丁寧に、正しい音程で歌うだけじゃSuperflyさんの歌は表現しきれないから、難しいんだと思います。
―万葉さん自身はカラオケなどでSuperflyさんの曲を歌われるのですか?
万葉:行った時にはよく歌います。カラオケ自体、最近はあまり行きませんが。
―お気に入りの曲はありますか?
万葉:「輝く月のように」と「Secret Garden」です。聞いていて、その情景が思い浮かぶところが好きです。
―学生としての万葉さんも気になるのですが、
―まず、4年生ということで、これまでを振り返って、大学生生活の思い出をお聞かせください。
万葉:サークルも楽しかったけど、一番はクラスメイトとの出逢いです。
私は1年生の時に英語で特上クラスに入り、クラス指定の必修授業が一緒に受けられなくて、クラスに入りそびれちゃったんです。でも、それを見かねたクラスメイトが声を掛けてくれて、クラスの10人くらいのグループに入れてくれたんです。いつもつるんでるとかじゃないですけど、みんなそれぞれ自分の道を歩いていて、私のことも応援してくれて、本当に良き仲間に恵まれたと思っています。私の大学時代の思い出には欠かせない存在です。
―三田時代の学業のメインはゼミになると思うのですが、ゼミではどんな勉強をしていますか?
万葉:河井ゼミに入っていて、統計学を経済学に応用した計量経済の研究をしています。
―どうして、ゼミに入ったのですか?音楽に専念する道もありましたよね?
万葉:正直、ゼミ試受けるのは面倒くさいとは思いました。ゼミに時間が縛られるっていう先入観があったんですよね。でも、ゼミによってはそんなことないんだって知って、履修申告するより、先に決まってた方が新学期に気が楽かなって思って受けました。
―ゼミでの思い出をお聞かせください。
万葉:論文がとにかく大変です。去年は三田論が大変でしたね。卒論もこれからなんですが、辛そうです。(笑)
―学業との両立に悩む時はありますか?
万葉:歌手としてやっていく中で“学校”という存在が時間的妨害であることは間違いないです。2年生の時くらいから、学校にはほとんど来れてなくて。でも、試験に関してはクラスメイトのおかげでなんとか乗り切ってます。彼らがいなかったら、私は今4年生になれてないです。(笑)
でも、音楽があるから学業が頑張れてるというのはあると思います。それに、学業や学生生活の出来事も、時には良い刺激をくれたりもするので、やっぱりどっちも大切なのかな。

―これは人生観になってしまうのですが、万葉さんの生きていく上での軸とはなんですか?
万葉:“今やりたいことは、今やる”それに尽きます。
「大企業に入れば、ある程度の収入が入って、10年後には好きなことができるよ」と言われたりもするんですが、10年後生きているかどうかは分からないですよね?だったら、今はバイトでもして、好きなことをやって生きたいです。繰り返しになりますが、今やりたいことを全力でやりたい。今はたくさんの方に私の歌を聴いて欲しいです。その先は、そこまで行ってみないとわからないですから。
―これまでに一番辛かった経験は何ですか?
万葉:失恋です。寂しがりなんで。(笑)恋愛をするということは、“一緒にいたい。そして、通じ合いたい”と思ってしまうことであって、つまり私の孤独に踏み込んでくる人がいるということです。恋をして、孤独でない状態を知って、失恋した時には孤独に戻るわけです。孤独でないことを知った上での“孤独”はものすごく寂しくて辛いです。でもそれは、2人の空間による幸せが大きいがゆえ。逆の感情というものは、実はかなり近い距離にあって、だから一番辛かった経験と一番幸せだった経験って同じなんですよね。
―確かに改めて考えてみると、逆の感情は近いことに気づきます。
万葉:でしょ!(笑)私は、笑っているためには泣くことも必要であると思っています。普段は笑っていたくて、だから私は歌う時は全力で泣きます。だから、悲しい歌が多くなってしまうんですかね。
でも、自分の歌を歌って落ち込み切った後は吹っ切れるというか、気持ちが軽くなります。
―今最も感謝している人は誰ですか?
万葉:難しいですね・・・・・。特に“一番に”という人はいないです。でも、自分の曲を受け入れてくれている方には感謝しています。私の曲を聴きに来てくれるお客さんや音楽仲間たちですね。
―音楽に学業にお忙しい日々を過ごされている万葉さんですが、それら以外に挑戦したいことはありますか?
万葉:今はパソコンにハマってます。昔から好きだったんですけど、最近自分のホームページを作ったので、それをもっとカッコよくしたいなと思って、勉強中です!!
あとは、料理ですかね。
―普段、料理はなさるんですか?
万葉:しないですね。(笑)お腹がすいていても、食べたいものが無ければ食べません。
―好きな食べ物は何ですか?
万葉:アイスです。(笑)
―卒業までのカウントダウンに差し掛かってくる時期ですが、大学生のうちにやっておきたいことはありますか?
万葉:今の形を突き詰めて、今年中か少なくとも22歳になるまでには新しいCDを出したいです。現在ライブハウスで販売しているのはバンドサウンドのものなので。“学生時代の集大成”を、円盤にしたいです。あと、一回ツアーをしたいです。学生としては、どっかに旅行に行きたいです。
―旅行は好きなんですか?
万葉:普段は全然行かないです。(笑)
―どこか行きたいところはありますか?
万葉:田舎が好き。空が広く、高く見えるところに行って、大空の下に寝そべっていたいです。
―将来も音楽は続けていきますよね?
万葉:音楽を辞めるつもりはないです。卒業を目前にして就職という道も考えてはいますが、私が歌手であるという事実が変化することはありません。
―最後に、記事を見ている学生にメッセージをお願いします。
万葉:皆さんは、“大学生が終わる時=今後の人生が決まってしまう時”だと思ってませんか。でも、それは単なる転機の1つであって、その後どうなるかは分からないんです。だから、見えない未来より、“学生時代が終わる”その時に後悔しない選択を、常にしてください。あと、自分と向き合いたくなったら私のライブに来て下さい。思う存分向き合えると思います。(笑)
編集後記:
自分だけの世界観だったり、生きていく上での軸って結局は自分を支えてくれるものです。“今、自分が何をしたいのか?”この気持ちに正直になって、今という時間を精一杯楽しんでください。

田中万葉オフィシャルサイト  http://tanakamayo.sakura.ne.jp
取材:梶裕太 高橋祐貴

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