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『数式組版』を組む技術:PDFの生成(2)

本稿において,“本書”とは木枝祐介著『数式組版』ラムダノート(2018)のことである.
>>> https://www.lambdanote.com/collections/mathtypo
また,本書はLuaLaTeXを用いて組まれた.したがって本稿ではLuaLaTeXの使用を前提としている.
本書が組まれた当時はTeX Live 2017が用いられたが,多くのコードはそれより後のTeX Live 2019まで共通して使用可能である.
本稿では,バージョンに強く依存する場合を除いて,各バージョンは明記されないことがある.

デジタルトンボ

デジタルトンボとは,PDFが内部にもつ情報で,出力はされないがPDFの仕様に定義される次の各ボックス情報を用いた通常不可視なトンボである.

▶ MediaBox:トンボ領域をも含む領域
▶ BleedBox:ページ裁ちおとしの領域が含まれる
▶ TrimBox:判型領域

参考:株式会社SCREENグラフィックソリューションズ—出力の手引きWeb—2008年09月04日 | PDFのトンボ情報(https://www.screen.co.jp/ga_dtp/dtp/40acrobat/20080804trimbox.html

これらは,`pdfinfo -box`によって確認できる.
視覚的には,たとえばAdobe Acrobatにより確認できる.
下の図では青のラインでBleedBoxが,緑のラインでTrimBoxがそれぞれ表示されている.

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◆デジタルトンボの設定
我々の目的は印刷用PDFであるので,`pdfx.sty`を`lualatex`においての使用は前提である.
この際,A5サイズの判型領域をA4サイズの中に配置することを例にとり,`\pdfpageattr`をたとえば次のように定める.

\pdfpageattr{
 /MediaBox [0.00 0.00 595.28 841.89]% A4
 /BleedBox [79.37 114.80 515.91 727.09]% A5 + 3mm
 /TrimBox  [87.87 123.31 507.41 718.58]% A5
 /CropBox  [0.00 0.00 595.28 841.89]% A4
}

:各数値はDTP pointで直接記述している.

ここで,上のデジタルトンボの説明ででてこなかったCropBoxが用いられている.
CropBoxはPDFの仕様上ページの物理的な意味を与えられていない.
それにもかかわらず,現時点のTeX Live 2019では明示的に指定しなければならない.

PDFの詳細は,次によって確認できる.
>>> https://www.adobe.com/content/dam/acom/en/devnet/pdf/PDF32000_2008.pdf

◆デジタルトンボとトンボの関係
TrimBoxは上にも書いたように,判型領域であり,BleedBoxはページ裁ちおとしの領域であった.
この二つの領域は各コーナーに配置されるトンボが表すものと同様である.

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◆パッケージによる方法
gentombowパッケージによりデジタルトンボやトンボを制御する方法もある.
詳細は`texdoc gentombow`を参照のこと.

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