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マーケティングコンテンツ制作における、ストーリーテリングの技術。説得力のある物語を創るには。

コンテツマーケティングの世界において、成功の鍵の一つは、深くユーザーとのつながりを持つことにあります。
そして、それを実現する最も効果的な方法のひとつが、ストーリーテリングの技術です。

ストーリーテリングが重要である理由はいくつかありますが、その大きな理由の一つが、我々の「心」が、物語の形式で語られる情報に、非常に関心を寄せやすい、ということが挙げられます。

心は物語に適するように進化した。だから物語によって形成されうる。宗教や道徳の規範から狩りや結婚に関する具体的なアドバイスまで、あらゆる情報を保存し伝承する手段として、物語は生まれた。

ジョナサン・ゴットシャル『ストーリーが世界を滅ぼす』

これを述べたワシントン&ジェファーソン大学英語学科特別研究員のジョナサン・ゴットシャルは著作の中でストーリーテリングの大きなパワーについて触れており、「ストーリーテラーが世界を支配する」(だからストーリーが世界を滅ぼす)とまでいうほどです。

この主張は極端なものですが、ある意味では誇張ではありません。
ビジネスに於いても、ストーリーテリングは大きな威力を発揮するからです。

例えば「ブランド」を、ユーザに記憶させることにストーリーは大変、役に立ちます。
世界的なジュエラーであるヴァンクリーフ&アーペルのサイトには、テントウムシをモチーフとしたジュエリーが「物語の時間です」と掲載されています。

・そのブランドは、どのような問題を解決し、人々の生活をどのように向上させるのか?
・ブランドの価値観、ミッション、ビジョンは何か?
・ブランドはどのように生まれ、何がきっかけで誕生したのか?
・ブランドが歩んできた道のりにおける興味深い逸話、顧客の成功事例、主要な出来事は何か?

ジョナサン・ゴットシャルによれば、「世界中の部族のストーリーテラーは高い地位を享受しており」、ストーリーを語るブランドは、他とは異なる地位を獲得する可能性が高いのです。


確かに、私は現実の仕事で、ウェブマーケティングのコンサルタントとして、ビジネスの成果のために読者を惹きつける、よく練られた物語がもたらす変革の力を目の当たりにしてきました。

そこで、この記事では、デジタルマーケティングにおいてストーリーテリングの力を活用するためのヒントと方策を紹介します。


説得力のあるストーリーの核となる要素を理解する

ストーリーテリングのテクニックを学ぶ前に、ストーリーを魅力的で印象的なものにするために必要な要素を把握しておくことが重要です。

ここでは「ストーリーテリング」によって、大きく読まれた記事を題材として、検討を加えてみましょう。題材は40万PV程を記録した、この記事です。

アフリカの村で70万円盗まれたら、いつの間にかあたり一帯がバブルにわいていた。

アフリカの呪術師との戦いには辛くも勝利したものの、もちろんアフリカは日本の常識が通用するところではありません。当たり前ではありますが、「郷に入っては郷に従え」という格言通り、私たちは「現地の常識」に従う必要がありました。

本記事は「自社の広報記事となるような、ユニークな記事を出したい」という依頼主の経営陣の要望をもとに、インタビューとライティングを行い、記事化したものです。

では、このストーリーの成功要因は何にあるのでしょうか。
ジョナサン・ゴットシャルは物語をこのように定義しています。

広義の物語ないしナラティブ(二つの言葉は互換的に用いている)とは、現実世界で起きたことであろうと幼児のままごとであろうと関係なく、単純に「起きたことの説明」である。
本書では扱わないタイプの物語は「朝起きて、パンを買いに行き、新聞を読みながらそのパンを食べた」というような物語だ。
これは、情報を効率よく伝達しようとする「透明なナラティブ」とでも呼ぶべきものである。透明なナラティブには人をなびかせる特別な力はない。 

本書が扱うのは、いうなれば「加工されたナラティブ」だ。加工されたナラティブは、第4章で詳述する非常にステレオタイプ化された構造に従っており、物語が事実からフィクションまでの連続体のどこに位置していても該当する。
とりあえず、加工されたナラティブが典型的に取り上げるのは主人公の苦闘であり、ほぼ必ず暗示または明示された道徳上の対立をベースとし、最終的には何が起きたかの説明だけでなくそのすべてが意味するものの表現になっている、とだけ言っておこう。加工された物語は意味を作り出す道具であり、個々の人間ばかりか文明を丸ごとなびかせる恐るべき力を発揮できる。

魅力的なストーリーには、一般的に以下のような要素があります。

1.親近感のある主人公:
視聴者が共感し、肩入れをするための存在が設定されます。

2.葛藤と解決:
主人公が乗り越えなければならない障害や困難があり、その後に満足のいく解決策が提示され、その後物語はすぐ終わります。
これは、以下のような統計的な分析によっても確かめられています。

データサイエンティストのデヴィッド・ロビンソンは11万2000本のフィクションのあらすじを統計分析にかけ、次のような明快な結論に達した。「人間が語る平均的な物語をあえて要約するなら、事態が悪化の一途をたどった末、最後の瞬間に好転する(強調はロビンソンによる)といった感じになるだろう」。
ニュース番組ですらこの公式に可能な限り従っている。ニュース番組は現実世界の問題を取り上げた物語に圧倒的に偏っており、最後に一つ「ほっこりする」物語を入れ、視聴者に希望を持たせて終わる。

3.感情的なつながり:
ストーリーに描かれたイベントは、感情を呼び起こし、視聴者が登場人物やその体験に共感することを可能にします。

4.明確で簡潔なメッセージ:
ストーリーテラーの価値観や目標に沿った具体的なメッセージや教訓が述べられます。

では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

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