世界14カ国で読まれ、全米で100万部売れた文章術の古典の「急所」を紹介する。
ナタリー・ゴールドバーグという人物をご存知だろうか。
「20世紀で最も人気のあるライティングマニュアル」と称される、Writing Down the Bones: Freeing the Writer Within(邦訳:魂の文章術) を著した人物だ。
この本は全米で100万部以上を売上げ、世界14カ国で販売されるほどの人気を誇る。日本でも改訂を繰り返し、初版は1986年に発売されたが、その内容については今なお色褪せない、「文章術の古典」として知られる名著だ。
実際、私の書く記事もこの本の影響を強く受けており、「書けないとき」にとりあえずこの本を開く、という運用をしている。
というのも、「とにかく書かせる」ことについて、この本より優れた本はないからだ。
例えば、書き出しだけでも15のアイデアを提供してくれる。以下に一部を紹介すると、
だが、そうしたメンタルな部分に踏み込むことが多いため、「魂の文章術」の中身を文章術というより「自己啓発」と感じる方のほうが多いだろう。
実際、Amazonのレビューには
「技法的な解説は皆無」
「禅問答的な、なにか深いことを言っているようで大したことを言っていない」
といった辛辣なコメントが付いている。
例えば、内容の一部を紹介すると、「第一のルール」として、次の項目が紹介されている。
他にも
・とにかく練習する
・何かについて書けるようになるまでは時間がかかる
・最初の5年間はガラクタを書く覚悟をする
など、「文章術」というよりもどちらかというと「心構え」や「動機づけ」などの項目が多い。したがって「インスタントに役立つ」ような技術を求めている人にとっては、多少物足りないと感じることも多いだろう。
実際、文章を書く行為は、技術的な要因で挫折するよりも「書き続けることで上達する」というあまりにも遅々としたプロセスに耐えきれなくなって、やめてしまう人が多い。
だから、ナタリー・ゴールドバーグが「とにかく書け」と励まし続けるような文章になるのも、当然だと言える。
文章術の古典たる所以とは
だが、この本が古典として読みつがれる理由は、もちろんそれだけではない。
というか、体系的に書かれているわけではないので気づきにくいが、この本はかなり多数のHow-toにあふれている。
私も読みはじめて1/3くらいまでは「退屈な本だな」と思っていたが、それを過ぎると、俄然面白くなってくる。具体的な話が増えるからだ。
特に「どう書くべきか」よりも「何を書くべきか」をここまで具体的に教えてくれる本は他にあまりない。
この切り口は、多の文章術系の本では、「前提」として、あまり詳しく触れられることがない。
が、それであるがゆえに「他の文章術の本ではあまり教えてくれない真理」に気づくことができる。
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