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運がいいとか悪いとか

連載漫画のネームが進まないときの苦しさをなんと表現しましょう。

なにせ漫画家のnoteなので、これまでもどこかで「ネームが進まなくて苦しい」と言うテーマの文章を書いた気がしますが、また今日違う言葉で語ってみようと思います。

安心してください。そんなこと言っていられるのも終わったからです。
ネームがなんとか40ページ目まで到達したと言うだけで、明日には全部ボツの可能性はありますが、まずは4月の間に打ち合わせのテーブルに載せることができて良かった、とホッとしてnoteを書きに来ました。

遅くなってすみませんと誰彼となく謝りたい気持ちです。

あまりに進まないので、それどころじゃないのに4月26日に韓国式マッサージ「コルギ」のサロンに行っていました。
前回行ってから8ヶ月も空いていたのですが、8回セットの回数券の使用期限が4月27日までなのにまだ半分しか消費していませんでした。
これが最後の一回になるのだな・・・と半ば観念して、進まないネームの心配も抱えつつコルギのサロンを訪れました。

↑コルギのサロンってこういうところ。

今回も同じ施術者のTさんにお世話になり、「お久しぶりですね〜〜!」とゴリュンゴリュン側頭筋と咬筋をほぐされ、グイングインと胸鎖乳突筋から脇までリンパを流されてきました。

ネームで苦しんではいたけど、体には特に不調を感じていなかったのです。肩も腰もどこか痛いということもなく、ただただ「ネームが進まない」という重い症状を患っていました。

しかしTさんに首から肩からゴインゴインと触られた時、ハッキリと、まるで獅子座流星群を目の当たりにした瞬間のようにまばゆい閃光をもって感じられたのです。

ドチャクソ肩凝ってる。

「凝ってますね〜〜〜〜右肩がひどいですね〜〜〜」グイングイン。
「ずっと右手を酷使してるんですね〜〜」ゴインゴイン。

ネームが滞っているということは、絵なんか全然描いてないということ。
描かずに腕を組んで机に座っているだけです。一週間くらいずっとなんにもせずにウンウン唸って座っているその活動(?)で右肩ばかりが凝っている。

そして最近気になっていたのが、酷使なんかしてないのに右手の親指の付け根が痛いこと。

「あの・・・Tさんハンドマッサージもお願いできますか?」
「いいですよ〜」

肩の施術が終わってから、流れるように右手のマッサージが始まります。カッサと呼ばれる陶磁器の道具で右手の腕橈骨筋(手首から肘上までついている筋肉)をほぐしていきます。

うわあ・・・・・!

親指の付け根だけが痛いと思っていたけど、腕も痛い。

触られてやっとわかる。

めちゃくちゃ腕も凝ってる。


親指の付け根の痛みは、腕からきてたんだ〜〜〜。
「肩こりって、ほんとは手から来るんですよね。手が凝っているんですよ」

全然わかってなかった・・・・!

的確に流される右腕の老廃物。凝りとして発見された右腕の野獣(疲労)は、「森へお帰り・・・」と優しく促されるように遠く遠くに押しやられていきました。
さすがだTさん。オプションのお値段とか聞かずに始まったけど、この心地よさは5,000円コースだろう・・・。

私の右手を優しく寝台のうえに置いた後、Tさんは徐に左手の施術も始めていきます。

左手もやってくれるの!!!!(当然)これは10,000円コースだわ・・・・。

右手ほどじゃないにしても左手にも猛獣がいて、「森へお帰り・・・」とやさしく促されていきます。

触られるまでわからないこの疲労のかたまり。
凝りのかたまり。

頭を使いすぎて、逆に体を使わなさすぎて、行き場のない疲労が首と肩と腕で大繁殖をしていたようでした。

物語をうまく編めないときの苦しさは、喜怒哀楽的に言えばでいえば「懼れ(おそれ)」です。(喜怒哀楽には入ってない)

中国の七情でいうところの

  1. 懼 (おそれ)

  2. 愛 (いとしみ)

  3. 悪 (にくしみ)

のなかで「懼れ(おそれ)」が今回のネーム中は一番大きくて、これは「うまく書けなかったらどうしよう」という気持ちでした。
懼れの感情が大きくなっている時にいい話など書けないし、懼れの感情を溜め込んでいる時に「凝り」はひどくなるのでしょう。

ゴリゴリとTさんに「凝り」を流してもらって、目の周りや肩の周り、腕の周りを軽くしてもらって、「ハンドマッサージのオプションは3,000円です❤️」「お安い!!」とお代を払って、
「回数券の期限の一年過ぎちゃいますけど、大丈夫ですよ。いろんな事情で来られないことあるんですから、残りの回数券使いに来てください」と言っていただいて、
サロンを出て見上げた空は来た時よりも明るくて。

一週間悩んで6ページしか進まなかったネームが、そのあと3日で40ページまで到達しました。


うまく休むことも、うまく自分をメンテナンスすることもどうにも下手だけど、限界を踏み越える前にいつも誰かに助けてもらっています。

「回数券の期限が切れちゃう」と切れる1日前に気がついたり、「ここでハンドマッサージもお願いしちゃおうかな」と思いついたり、

そういう小さなひらめきみたいなものは、もしかしたら流れ星よりも幸運をくれる電気信号で、昔の人はそういう小さな良い巡り合わせを「星回り」「運」「縁」「運命」などと呼んだのでしょう。

ネームは進まなかったけど、運は良かった。

そのおかげで、ネームが進んだ。

なくさないで持っていた回数券のチケットをまたお財布にしまって、Tさんのサロンをまた1ヶ月後に予約しました。その頃の私もきっとネームに苦しんでいてて、きっと肩と首と腕に疲労を溜めているに違いないから。

力が足りない自分を他の力に助けてもらう。
そうできてるうちは、運が良いと思うことができそうです。


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