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明治神宮ミュージアムへ

世界にたった一つ現存し、それが日本の正倉院にある という
螺鈿の五弦琵琶を観るために、明治神宮ミュージアムへ行ってきました。
8年かけて現代の専門家たちによって模造されたものです。

東南アジア産の紫檀、螺鈿は奄美大島近海の夜光貝、
鼈甲(ベッコウ)はタイマイという海亀の甲羅、
どれも現代では入手困難な材料を年月をかけて集められました。
夜光貝は割れないように細心の注意をしてミリ単位に小さく切り抜き
唐花の模様に貼っていく。。
鼈甲は透けるほど薄く削り、表から見えるように
裏から細かく模様を描いていく。。

弦に使う絹糸は、小石丸という古代種の蚕から。。
皇室で、皇后さまが桑の葉をあげる、あの蚕さん達です。
一般的な種の繭よりかなり小さくて、輝くように真っ白な細い糸が採れるそうで
それを強く捻りをかけていく。。

完成品は3.3kg以上あって、これを抱えて弾くのは
かなりの重労働なんじゃないかと。。
ラクダの模様があることから西アジアかインドの方から
聖武天皇のもとへ渡ってきたものかしら。。
いずれにしても1300年前の、その当時の最高級の宝物が
埋蔵物とかではなく、日本の正倉院に当時から保管されているなんて
日本はすごい国だと、改めて思いました。

そもそもなぜ美術品の模造事業が大事なことかと考えてみると
・焼失や盗難など万一の時のため
・破損や無くなっていても資料研究により元の姿を見ることができること
などのために、必要で重要なんだと改めて納得です。

明治神宮は、明治天皇、皇太后を祀られた神社で
明治天皇は在位中に奈良で正倉院の宝物をご覧になって
かなり傷んだり壊れたものがあることを知り
それらの整理と修理を命じたそうです。
つまりそれまでは、保管はされていても、そのまま経年劣化していたのですね。
宝物は宮内庁の管理ですから、手をつけられていなかったのでしょう。。
明治天皇の命によって模造された宝物を
明治天皇が祀られている明治神宮のミュージアムで
このたびは奈良まで行かずとも、拝見することができるということなんですね。

今回拝見した数々の模造の中で
もうひとつ印象に残っているのは、川島織物が復元した
「羅」(ら)という織物です。

正倉院の宝物は
「赤地 四菱 入菱 繋文 羅」です。

「羅」の存在は知っていましたが、美術館などで見たのは
虫喰いなどで粉々に切れた残欠ばかりでした。
「羅」は薄い、透けるような絹布です。
皇居内の養蚕所で飼われている小石丸の繭から採れた糸を
皇居内にある日本茜で染めたそうです。

日本茜で染めた赤い地に(赤地)
菱形の模様を4つ組み(四菱)
菱形に入れ込んだ模様を(入菱)
繋げた文様( 繋文)の
「羅」 ということです。
日本の工芸品はネーミングで作品の概要がわかるようになっています。

繊細かつ複雑な織りで大変苦労されたようですが
さすが京都の川島織物さん
すばらしいもので、感激でした。

本当に技術も、材料も含めて
日本の宝だな、と。

今回のことで、もっと正倉院の宝物のことを知りたくなったので
いろいろ調べて勉強します。

正倉院宝物の面白さを
見つけてしまった!

そのあと、神宮本殿へお参りをして
御苑を散策し、帰りにはスーベニアストアで
銀座 清月堂の「呉竹」というお菓子を買って帰りました。
また来たいと思いました。

大鳥居


明治神宮御苑
野鳥の声がして、原宿駅のすぐそばとはとても思えません。。
この日は午後なのに池は凍っていました

宝物の研究、維持、管理に携わる方々の地道な努力には
感謝と、尊敬の念でいっぱいです。

『正倉院宝物を受け継ぐ』ー明治天皇に始まる宝物模造の歴史ー
明治神宮ミュージアムで令和6年2月25日までです。

参考にした資料です。
*正倉院展 螺鈿紫檀五弦琵琶(1)
 https://shosoin-ten.jp/articles/detail/000177.html

*正倉院展 螺鈿紫檀五弦琵琶(2)
 https://shosoin-ten.jp/articles/detail/000186.html

*正倉院 宮内庁 繭[小石丸]を用いた正倉院裂の復元構造
 https://shosoin.kunaicho.go.jp/api/bulletins/27/pdf/0000000051

*正倉院裂 赤地四菱入菱繋文 羅 文化財オンライン
 https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/576076

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