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愛し方は人それぞれ『無銭優雅』(山田詠美)

今回は、昔大好きだった山田詠美さん(愛称:エイミー)の『無銭優雅』の感想回です。

ここ数年の作品は追えていないので、心を躍らせながら読み進めていきました!

はたして・・・。

慈雨ちゃんと栄くんの場合

「みーみーと言って体をすり寄せて来るのは猫ではないのである。」

P.9

その始まり方は、同じ著者が書いた『ラビット病』を想起させました。

大人の男と女が四六時中くっついて、二人にしかわからない言葉で会話をするその作品を読んで、当時かなりの衝撃を受けました。

「大人の恋愛ってこんななの~~~!???」
と感じたから、あの本に出会ったのはきっと、恋愛経験のない学生のころだったはずです。

あなたはどうですか

「心中する前の日の心持ちで、これからつき合って行かないか?」

P.9

これ、、、言われたら嬉しいですか?

“前の日”というのがポイント。
ほんとに死んぢゃダメ。

この発言は、心や感性でつながりたいと感じる水のグループ(蟹座・蠍座・魚座)的な恋愛観を彷彿とさせます。

束縛嫌い!愛してはいるけどお互いの自由も尊重しようね!というタイプの人間からすると、「おもーっ(重)!くらーっ(暗)!」と感じて、今すぐ全力疾走で走って逃げたくなってしまいそうな発言。もっと軽くいきませんか。

経験を経て生涯、もうこの人以外の男はいらないな、と思った。

慈雨ちゃん以前の人生、なかったことにしたい。

ともにP.187

色んな経験を経て辿り着いた女と、それまでの経験をすべて捨てたい男。

この男女の違いを比較すると、特に、男の人ってピュアだよなぁと感じました。

ここまで愛し愛されていたら幸せ・・・なんでしょうか。水っぽさリターンズ!

生きることへの姿勢

「いい年齢(とし)だから女、優先してもいいんじゃないですか。誰にも文句言われないんだし」

「おなかいっぱいになるまで生きることを堪能してみたい。」

P.96,128

つくづく山田詠美という人は、“本能的に生きること”に貪欲な人だなぁと思います。

彼女の元旦那さんが米軍基地勤務の方で、予測不能の出来事で最愛の人を亡くす可能性が一般よりも高い生活を16年続けていましたし、妹の旦那さんを早くに亡くすという経験もされています。

9.11を背景にした小説(『PAY DAY!!!』)も書かれているので、人の死について深く触れた結果、生きていることの喜びや幸せを本能で味わいたくなったのかもしれません。

2人だけの愛の確認方法

「斎藤慈雨?!」

p.154

一番好きな四文字熟語の回答として、彼女の名前を答える栄くん。

なんてバカバカしくて、なんて愛が詰まっているんでしょう。

ずっとこんなくだらない会話で爆笑できているうちは、お互い以外に恋愛対象としての異性を必要としないんだろうなぁ。ウラヤマシイ。

家族の幸せを願うということ

「栄さん、ふつつかで間抜けな叔母ですけど、どうかよろしくお願い致します」

P.161

姪の衣久子が深々と栄くんに頭を下げて言うセリフ。

私も姉が結婚する際の顔合わせで、旦那さんとなる方にほぼ同じ事を言いました(さすがに間抜けとは言っていないけれど)。

「(“ふつつかもの”と)言いたいだけでしょ(笑)」なんて姉は笑っていたけれど、心から姉の幸せを願っての気持ち8割、言ってみたい気持ち2割だったように思います。笑

いつか、私が結婚するときにもお姉ちゃんが言ってくれるといいな。もう覚えてないかもしれないけれど。

まとめ

私たちのほうがバカップルだ!こんなのまだまだ甘い!と思える人、自分の恋愛はいったん忘れてラブラブな中年男女の恋愛を楽しめる人には向いてる作品だと思います。

全体的には、けっこう好き嫌いが分かれそうなラブストーリーという印象を受けました。


関連がありそうなオススメ作品

  • 『ラビット病』(山田詠美)

  • 『PAYDAY!!!』(山田詠美)

  • 『人間失格』(太宰治)





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