FUTADA Takahiro(二田貴広)

奈良女子大学附属中等教育学校の教員です。 教育へのICT活用やSTEAM教育、文学教育…

FUTADA Takahiro(二田貴広)

奈良女子大学附属中等教育学校の教員です。 教育へのICT活用やSTEAM教育、文学教育に関心があり取り組んでいます。 微力ながら生徒たちと東日本大震災の復興支援活動にも取り組んでいます。

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最近の記事

「働き方改革」で「肯定する」って、あまりないような気がする、そんな学校のお話

新聞の人生相談欄が好きな小学生だった私は、相談者の人生を「この人は、夫に馬鹿にされていて自分に自信がなかったけれど、その自信のない自分が嫌だと相談しているんだなぁ。この相談でこんな風に人生が変わるに違いない」などと、勝手に変えていた傲慢な子どもでした。 現在はさすがにそんなことはありませんが、つい読んでしまいます。回答者がどんな人生観から、あるいは思想や生き様から、どう回答されるのかがとっても興味深いからです。 相談者への興味関心が、回答者へと移っていったのは、学校の先生

    • 古文嫌いって、「正解があって、それを先生が持っていて、その正解を与えられるためには先生の掌での修業が必要」という学びのデザインが生んでいるんじゃないのかな?

      ちょっと古いデータですが平成25年度の「全国学力・学習状況調査」では、古典は好きと回答している生徒は約 29%で、「どちらかというとあてはまらない」が34.7%、「あてはまらない」が35.2%という結果でした。 「国語の勉強は好きですか」という問いには、約57%の生徒が「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と答えているので、古典の学びが国語の学びの中でも「嫌い」だと感じる中学生が多いことがわかります。 古典文学作品には古文と漢文がありますが、ここでは古文の学びに焦点

      • 高校生の「探究」ってなんだろう?

        昨年から、わたしが企画委員を務めている日本NIE学会では高校生の探究活動を支える取り組みを始めました。 NIEは、NewsPaper in Educationの略で、教育での新聞活用のことです。 じつは、高校生が取り組んでいる探究活動って自然科学系(ざっくりいうと理系)は、いろんな大学や学会が研究発表の機会を設けたり、大学の研究者がフォローしたりしているのですが、人文社会学系はそういう機会がほとんどないよな~と思っていて、ないなら作っちゃおう、ということで始めました。

        • メディアの情報について表現者や発信者の「目的」を推測すること

          高等学校卒業までに全ての生徒に育むべき情報に関わる資質・能力に、「相手の状況に応じて情報を的確に発信したり、発信者 の意図を理解したり、考えを伝え合い発展させたりす る能力」があげられています。 発信者の意図って理解できるのでしょうか?わたしは理解は難しいけれど推測はできそうだと思って授業をつくっています。 そこで、こんな問題を中学2年生の定期考査に出題する予定です。問題自体を生徒に公開しているのでここで紹介するのも問題なし! 問い、制作者や編集者の目的について、二田は

        「働き方改革」で「肯定する」って、あまりないような気がする、そんな学校のお話

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        • 未来への学びを探究する
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          小説が「読める」ってどういうことだろう?

          高3現代文では魯迅の「藤野先生」と石川淳の「アルプスの少女」を教材として、共通テストを解くためのスキル訓練+探究的に問いを立てて考える学びをデザインしています。 「藤野先生」は1926年(大正15年)に発表された小説。「アルプスの少女」は1952年(昭和27年)に発表された小説です。その2つを「あわせて読む」ことは無理筋じゃないかというご意見もあろうかと思いますが、まぁ共通テストで複数テキストの比較とか、複数テキストを比較して議論する生徒の対話とかが出てくるので(でも、上記

          小説が「読める」ってどういうことだろう?

          「答えがある」授業には意味がない?

          「答えがない課題に取り組もう!」 こうした掛け声や実践は、「探究的な学びの推進」とか「教科の学びを探究に」といった「これからの学びのあるべき姿」として推し進められています。 OECDが2015年からすすめてきた「Future of Education and Skills 2030 プロジェクト(Education 2030プロジェクト)」は、世界規模でのこうした動きです。現在の高校2年生の学びも、Education 2030プロジェクトと深い関係がある学習指導要領の理念と

          「答えがある」授業には意味がない?

          大学入試の小論文 その2

          「問い」をもって、目の前の文章や資料に向き合うって、そういう経験を積んでいないと難しいよねって思います。 そういう経験を積む際には、最初から難しいことに向き合うのではなく、例えばアニメとかが入り口でよい訳です。最初からアカデミックなにおいがする文章と方法でやろうとすると、脱落してしまう生徒たちが出てくる可能性があるからです。もし、そんな結果が生じるとしたら、それは生徒の自己責任ではなくて、学びのデザインの稚拙さだと自戒を込めて思います。 さて、「問い」をもって課題文や資料

          大学入試の小論文 その2

          生徒の判断を奪わない。先生は【メディア】

          新聞を教材にした「メディア情報リテラシー」の学びを4コマでデザインして実施しました。 上記はとても広い概念なので、私が今回目指したのは、「メディアが発するメッセージの価値観や捉え方や発想や伝える目的などを考察するために、その伝え方や表現の仕方に着目して分析し表現するスキル」、これの育成向上です。 先日、その最後の授業で、専門家の方に来ていただきました。それまでの授業では、新聞のラテ欄(テレビ番組欄。むかしはラジオ欄もあったんですよね)や、見出しの工夫などについて取り上げて

          生徒の判断を奪わない。先生は【メディア】

          大学入試の小論文

          どれを選んだらいいか迷うよね~ 「ちゅーる」ってどのわんこも大好きなので、いったい何が入っているのか気になる今日この頃です。うちのわんこもちゅーるの袋を見ると目の色が変わります。 ところで、総合型とか学校推薦型とか共テ後の入試とかで、小論文が入試にある大学があります。そうした入試にチャレンジする生徒たちの支援って、いろんな学校でさまざまに行われていると思います。 国語科が中心に「指導」をおこなったり、進路指導部が中心だったり学年がお願いしたり… どんな体制でどんな方法で

          大学の教職(国語)の授業をしているお話 その⑤

          ちょっと仕事が立て込んでしまったので、6回目と7回目の大学での授業のお話をまとめて載せます。 教職課程の講義「中等教科教育法国語Ⅲ」の第6回と7回 第6回は、学校と社会の「乖離(かいり)」の話からはじまりはじまり~ 学校はアジールで社会に直接接しない場で子どもたちが安心安全に学べるところ。そういう面もとっても大切だと思います。 でも、あまりにも学校と社会とを切り離してしまうのもどうかと思うのです。その結果、高校卒業したら突然社会に放り出されてなんでも自己責任ってなっち

          大学の教職(国語)の授業をしているお話 その⑤

          大学の教職(国語)の授業をしているお話 その④

          今週は、いくつかの仕事と仕事以外のアレコレが重なったので、授業までに記事を上げることができなかったんですよね…… 授業前に記事を上げることでイメージトレーニングになっていたのですが、まぁ、仕事が回らなくなりかかっていたので仕方がない。事後ですが授業のご紹介~ 教職課程の講義「中等教科教育法国語Ⅲ」の第5回 国語の学びから離れて「みなさん部活動って何してました?」という問いかけから入りました。 学生さんからはバラエティーに富む返答で、中興の部活って、文化的スポーツ的体験を

          大学の教職(国語)の授業をしているお話 その④

          大学の教職(国語)の授業をしているお話 その③

          教職課程の講義「中等教科教育法国語Ⅲ」の第4回 「どんな問いを作る?」という問いから入ります。 けっこうたくさんの人が中学2年生で読んだ「走れメロス」。 冒頭部の「メロスは激怒した」が印象に残っている人もいるのでは?そういう私も先生に怒られた後に「〇〇は激怒した」とか言っていたようないなかったような… 問いを作ってもらうのは、「問いを作るとはどういうことか」を考えてもらうためです。 「メロスは激怒した」 この部分についての問いを作ってもらいます。 メロスは激怒したのは

          大学の教職(国語)の授業をしているお話 その③

          大学の教職(国語)の授業をしているお話 その②

          教職の授業「中等教科教育法国語Ⅲ」の第3回 どうしたら「よりおもろい」になるか考えてこんな感じとなりました ここ数日、千田是也とアングラ演劇の関係性をいろいろな書籍を見ながら考えていて面白かったから、なにか使えないかなぁとか。 意外なことに蜷川幸雄が千田是也の演出をリスペクトしていたことがわかったりしたけれど、どんなところをどう、の具体がわからない。 大学時代せっかく下北沢の近くに住んでたんだからもっと演劇見に行けばよかったなぁ。 うだうだ考えで、とりあえず「おれは

          大学の教職(国語)の授業をしているお話 その②

          大学の教職(国語)の授業をしているお話 その①

          大学の授業「中等教科教育法国語Ⅲ」 中学高校の国語科教員の免許を取得する学生さん向けの授業のお話 何をしようと考えているのか、こちらにポストして思考を整理しようという目論見(笑) 授業の目的:「生徒の近未来への展望を背景としつつ、オモロい授業をしようと考えて方法や教材に工夫を凝らす教員がひとりでも増えればいいなぁ」 で、第1回 ・まずはドローンを飛ばしてもらう ①プログラムして ②映像を撮りながら ←それは「国語なの?」 ・芥川龍之介の「トロッコ」を読んで、ドローン

          大学の教職(国語)の授業をしているお話 その①

          部活動って何のために?と振り返ってみた話

          以下は数年前にFacebookに書いたことです。ブラック部活と批判が高まりつつあったその頃、全国大会とかを目指す部活動ではないバスケ部の顧問として考えたことをまとめました。 中学バスケ市民体育大会。 お久しぶりに顧問として帰ってこられた先生にお会いして、自分がバスケ部の顧問をつとめ初め、お世話になっていた頃を思い出しました。 なぜバスケをこの生徒たちはしているのか。 なぜ放課後や休日の時間を費やしてバスケに取り組むのか。 なぜ私はバスケ部の顧問をしているのか(管理職に任

          部活動って何のために?と振り返ってみた話

          受験学力と探究する力

          高校3年生の現代文の授業は、「受験学力」とは何かを理解し伸ばしてもらうことと、「探究する力」とは何かを理解し伸ばしてもらうことの2つを目的としています。 本音は(といっても生徒にも話してますが)、「受験学力」なんて目的にしたくないのですが、ニーズに応えるのも必要ですので。 「受験学力」は、たとえば共通テストの現代文ではどんな「力」が求められているのかを明確化してそれを伸ばすという順番で教科書教材を利用して練習するといった方法。 例えば、魯迅の「藤野先生」の冒頭部分、「私

          受験学力と探究する力