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白紙の名言集①

 こんにちは。柚子瀬です。

 私が「階段島」「サクラダリセット」で心に残っている言葉を紹介しようと思います。単に私が見返したいだけっていうのもあるのですが、それはナイショでよろしくお願いします。

 今回は「階段島」シリーズから。

河野裕『いなくなれ、群青』(新潮文庫nex,2014)

 不幸じゃなければ、幸福だって言い張ることもできる。

16頁

「ふたりを相手にしていると、自分が誰なのかわからなくなっちゃうんだよ」

48頁

「あらゆる言葉は誰かを傷つける可能性を持っている。明るい言葉でも愛に満ちた言葉でも、どんな時にも間違いのない言葉なんてないよ」

51頁

職業的であることと大人的であることは似ている。

186頁

「ねぇ、真辺。人は幸せを求める権利を持っているのと同じように、不幸を受け入れる権利だって持っているんだよ」

216頁

「まっくらやみの中にいるような気分になることがある。豆電球がひとつあれば救われるのに、私はそれを持っていないの。二年間、何度もそんな気がした。そのたびにきみのことを思い出した」

271頁

河野裕『その白さえ嘘だとしても』(新潮文庫nex,2015)

「人に合わせてばかりだと、自分にできることがわからなくなるよ」

52頁

ホイップクリームは好きだ。まるで善意の象徴みたいだから。

93頁

ただの暇つぶしだと答えても。好奇心だと答えても。心配だからと答えても。愛しているからだと答えても。真辺由宇は変わらないし、変わって欲しくない。

95頁

なにを守り、なにと戦うのかを決めるのが、ヒーローの最初の仕事だ。

238頁

諦めるのが正しくても、それが具体的な強さだったとしても、それでも諦めたくはない。この感情を手放してしまえば本当に、生きることはひどくつまらない。

250頁

その顔を見たとき、なんとなく、どうして七草が彼女にこだわるのかわかったような気がした。

284頁

「嘘は見破られた方が、楽だよ。そりゃ、一時は苦しいかもしれないけれど、放っておいたらずっと苦しいままだから」

288頁

河野裕『汚れた赤を恋と呼ぶんだ』(新潮文庫nex,2016)

真辺の様子は、二年前となにも変わりがなかった。まっすぐにこちらをみて、迷いのない声で話した。その視線は光が進むのと同じように純粋な直線だったし、その声は小さくてもはっきり届いた。

58頁

彼女が後悔という言葉を使ったことが不思議だった。それは真辺由宇には似合わない言葉のように思えた。僕は彼女のすべてを肯定していたわけではないけれど、それでも彼女には、なにひとつとして後悔して欲しくなかった。そしてそれは、彼女のすべてを肯定しているのと、ほとんど同じことだった。

60頁

「魔女なんて関係なく、自分の重要なポイントが変化したなら、それは後悔に繋がるのかもしれません。たとえばずっと抱えていた夢を捨てたなら、それで新しい幸せを手に入れたとしても、たまに後悔するのは、自然だと思います」

96頁

感情よりも理性を取るべきだと訴えかけるのは、理性だろうか? 感情だろうか? 僕はとても感情的に、理性に従おうとしているのかもしれない。

115頁

「僕はその星の輝きを愛していたし、信仰していた。でもちょっとした事情があって、信仰の方を捨てることにした。事情を説明するのは、なかなか難しい。でも無理に言葉にするなら、信仰というのは、普遍のものにしか向けられないのだと思う。少なくとも僕はそうだった。信じる対象が変わってしまうことが僕には許せなくて、でも許せないことが問題なんだろうと思ったから、捨ててしまうことにした」

125頁

「真辺さんは嘘をつかないけど、でも言うべきこととそうじゃないことを、すごく厳密に区別しているんだと思う。自分の役割をしっかり考えているっていうか。私はね、そういう役割を忘れて話ができるのが友達だと思う。きっと真辺さんにとって、役割を忘れられる相手って七草くんしかいないんだよ」

146頁

かつて捨てたことに、過剰にとらわれる必要はないんだ。必要であれば、以前と同じように振る舞えばいい。同じではいけないところだけ変えればいい。言われてみればひどく当たり前だ。でも、思い当たらなかった。捨てた自分を本能的に避けていた。

201-202頁

これが真辺由宇の声だ。力強くて、切実で、鋭利で、脆い。ほかの誰より綺麗な、否定する理想主義者の声だ。

276頁

「うん。それで、これしかないという答えに思い当たった。本当は地図を信じていたわけじゃないんだよ。それを疑う必要もなかった。だって私はずっと、間違えてもいいと思っていたんだから」

306頁

「今思えば、私の時間は、二年前の夏に止まって、またそれを動かすには、あの公園できみに会うしかなかったっていうことなのかもしれない」

311頁

河野裕『凶器は壊れた黒の叫び』(新潮文庫nex,2016)

一方で、真辺由宇は優しくない。優しさや幸せよりも、正しさを優先する。真辺自身にとっての正しさを。私は本当に優しい人のための付属品なのだ、と真辺は思う。

37-38頁

「会話っていうのは、なにを言うのかだけが重要なわけじゃない。本当に大切なのは、なにを言わないでいるかだ」
「でも、言葉にしないと伝えようもないよ」
「伝えるべき言葉を推敲しないといけないってことだよ。君が言ったことを、相手がどう受け取るのかまで考えて、不必要な言葉は省かないといけない。もしすべてを見通す神さまが名言集を作ったなら、その大半は白紙なんじゃないかと僕は思う」

112頁

言わずもがな、この記事のタイトルはここからとっています。

優先順位なんてものを、できるならつけたくない。選べるならすべてがいい。選べないなら、いつか選べるよう努力したい。なのに七草との関係に限っては、優先順位という言葉で納得している。

185頁

「内気というのは態度の話だ。旗からみていてもわかる。でも内向的というのは心の動きの話で、傍目ではわかりづらい。コミュニケーションが得意でも、ディベートに強くても、内向的な人はいる」

203頁

受け入れなければならない痛みもあるのだと、真辺は思う。肉体の痛みは避けた方がいいけれど、胸が痛いのからは目をそらしてはいけない。それは自分の一部が血を流しているということだから。目を逸らして痛みを忘れると、自分の一部さえ失ってしまうだろう。

245-246頁

「僕は幸せになりたいわけじゃない。でも不幸にはなりたくない。本当に大切な夢を諦めるのは不幸だ。幸せになれたとしても、不幸だ」

262頁

こんなにも豪華な明かりはいらない。足元を照らす、豆電球ひとつでいい。みるべきものから目を逸らさないための光が、一筋あればそれでいい。

264頁

「詳しいことはよく知らないけれど、少なくとも堀さんは泣いていたから、改善されるべきだよ。苦しくても続けるのは、悪いことじゃない。素晴らしいと思う。でも苦しいまま続けるのは間違っている。今は苦しくても、改善される未来がみえているなら努力には価値がある。でもいつまでも変わらず苦しいなら、その努力は間違っている」

347-348頁

河野裕『夜空の呪いに色はない』(新潮文庫nex,2018)

「感じ方が変わるのには、時間がいるんだ。君が笑ったとき、心の底から楽しんでいるんだって僕が信じられるようになるまで、もう少し時間が欲しい。できるだけ早くそうなれるようにするから、それまで待っていてくれないかな」

52頁

「もちろん、理想的でなきゃいけないってわけじゃない。でも、まずはそこを目指すべきだろ。妥協を探すのは、充分に手を尽くしてからでいい」

102頁

「違うよ。苦しいことや、悲しいことを、乗り越えられると信じるのが信頼だよ」

172頁

「取り返しのつかない失敗をするかもしれない。私にはどうしようもないくらい、誰かを傷つけるかもしれない。それでも、できなくても責任を取るんだって言い張って、足を踏み出すのが大人になるってことなんだ」

236頁

「もしかしたら私は、なにもしないのが正解なのかもしれない。貴女の言う通り、ただ怯えていればいいのかもしれない。でも、全員がそんな風に考えていたら、ぜったいに、大地は救われない。誰かが足を踏み込まなければならない」

237頁

「なら、選べよ」
と僕は言った。
ずっと僕は、これを言いたかったんだ。足を踏み出そうとして、でもその先をみつけられなくて、なにかを踏み潰すことを怖れて、同じ場所で足踏みをしているような彼女に。本心ではずっと、こんな風に言いたかった。
「以前の君のように、ではないよ。今の君のまま選べばいい。優しくありたいなら、いちばん優しいのを選べばいい。正しくありたいなら、いちばん正しいのを選べばいい。間違えてもいい。また選び直せばいい。僕は君を──」
否定しない、と言いかけて、だが胸の中の僕が強く首を振った。
──そうじゃないだろ。
と、いつか捨てた僕が言った。
──それを、恋だとか、愛だとか呼んでちゃいけないだろ。選べと言いながら、真辺に責任を強要しながら、僕だけがそこから逃げてちゃいけないだろ。
ああ。その通りだ。それは、幼くて、ずるい。
初めて、もうひとりの僕に同意した。僕も、選ばなければならない。
息を吸って、言い直す。
「もしも君が間違えたなら、僕が否定するよ。いくらだって、反論も議論もしてやるよ。僕も、僕にとって正しいひとつを選ぶから、君だって選べよ」
きっと。そんな風にしか、僕たちは進めないんだ。なにも間違えないままではいられないから、誰かが間違えてもいいように、愛情を持って否定し合うしかないんだ。

252-253頁

「嬉しいから、泣くんです」
その言葉は、神さまの耳には、嘘に聞こえたかもしれない。だって僕は、悔しくて泣いていたんだから。でも僕にとっては、言葉の方が真実だった。これを嬉しくて流した涙にしようと決めて、そっちに足を踏み出した。なら、きっと大丈夫だ。これからの僕は、ネガティブな涙を、もっと肯定的な意味に変えていける。

259頁

これが信頼なのだ。自分を忘れるくらいに自分のままでいられる、その土台を与えてくれるものが信頼なのだ。

321頁

そこから解放されたかった。ひとつの純粋な意志になりたかった。なれるのだ、という気もしていた。崇高なものではなくて、絶対的なものではなくて、ちっぽけなひとりの私と同じサイズの意志だ。それが何十億か集まってできているのが人間の社会なら、なんて素敵なんだろう。生きるとは素直で、語り合うことは幸福で。できるならそうなりたかった。
──七草とは、そうであろう。
たったひとりの彼と、たったひとりの私を忘れた私であろう。
真辺由宇は階段を下る。
今は世界が、シンプルにみえる。

322-323頁

河野裕『きみの世界に、青が鳴る』(新潮文庫nex,2019)

「そのときだけ楽しいのと、本当に楽しいのは、違うんだと思う。全然違うんだ。僕は毎日楽しいけど、でもたまに辛くなる。夜、眠るときなんかに。その一日が楽しかったら、楽しかっただけ、辛くなる。それはたぶん、本当じゃないんだよ」

162頁

「相手のための優しさじゃなくて、自分に誠実だから、七草くんは声にならない言葉まで聴こうとするんだと思う。私には、それが、純粋なもののようにみえる」

203頁

「私ひとりでみつけられるものよりも、きみとふたりでみつけたものの方に、価値があるに決まってる。だから、無敵だよ」

253頁

 どれかひとつでも素敵だなと思っていただけたらうれしく思います。

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