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新世紀のつながる人たち


宗教学者のエリアーデは、20世紀なかばに、同時代の西洋文明人を「非宗教的人間」としたうえで、「宗教的人間」について論じた。

「宗教的人間は<開かれた>宇宙の中に住み、かつみずから世界に向かって<開いて>いる。これは彼が神々と交流していること、また彼が世界の神聖性に関与していることを意味する」(『聖と俗』みすず書房162P)。

エリアーデの時代、まともなインテリにとって神(または神々)は過ぎ去った時代の遺物で、彼の論じた「宗教的人間」はおもに文明以前の存在だった。

でも、21世紀のいま、「自ら世界に向かって開き、神々と交流し、世界の神聖性に直接関与している」人たちが、文明社会の中に急増している。それも宗教の枠組みなしに。

日本のスピリチュアル界にもいろいろな人が現れては消えていくけれど、ここ数年で流れがずいぶん変わったように思う。

20世紀後半には恐怖の大王のような例の導師や、やたらに人を脅しつける霊能者などが世間の注目を浴び、スピリチュアル界のイメージがますます悪化していった。でもここのところ、恐怖感を煽らず、高額な物品やセミナーに囲い込みもせず、押しつけがましくなく比較的小規模なコミュニティに向かって語りかける「スピリチュアルリーダー」や「カウンセラー」が増えてきた。

本気で神々と直接的に交流している彼らの多くが説くのは、以下のような結果(体験)を得るためのノウハウだ。

まず自分が幸せになる実感を味わうこと。
そのために、感覚(身体感覚、五感)を磨き、自分にとって何が心地よいのかを知ること。
執着、我、感情の葛藤を手放して自由になること。
そのために、感謝をもって繊細な視点で生活し、よく内観すること。
神(「宇宙」)には善なる<意思>があると確信すること。
自分のなかに、神(「宇宙」)の神聖性が直接的に備わっていると確信すること。
万物は聖性を持つ神の体現であり、すべてがつながっていると感得すること。
目に見える他者も見えない存在も尊敬をもって大切に扱うこと。
自分の人生のあらゆる体験に価値があると考えること。

その(「真理」またはノウハウの)情報をどんな宇宙人や天使や使徒や神から聞いたか、どんな「ワーク」によってその感覚や技術を磨いていくのがいいのか、さらにはそれにまつわる前世や輪廻転生や宇宙のなりたちの秘密についての魅力的な物語は、それぞれ重なっているところもあるけれど、みんな微妙に違っている。

でもそこを神学論争に発展させず、「感じ方や見え方はそれぞれだから」と、あくまで他人の考えにこだわらず、ゆるふわに突き放していられるところが、新世代スピリチュアルのすごさだと思う。

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