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『#真相をお話しします』追加note記事

所感

この本はミステリー・サスペンスの短編集である。一つの作品当たり二十数ページで読むことができる。そのため、人物や情景描写は極端に薄くストーリーの骨格だけを感じるものとなっているがそれはそれでありだなと感じた。短いページ数で起承転結を上手く簡潔させるのはそれなりの技術が必要であると思われるが、これは良く出来ている部類だと思う。
ちなみに、短編集として心に残っているものには星新一のショートショートなんかがある。これは非常に面白かった。短いながらもこんなに素敵なストーリーを組み上げられるものなのかと感動までした覚えがある。気が向いたらセットでそちらも是非。
以下ではその中から一つピックアップして紹介したいと思う。当然ながらネタバレを含むので注意。


「ヤリモク」

「ヤる」ではなく「殺る」の方という昔から聞いたことがあるテーマだが最後は少し味変されていて良かった。
少々脱線するが、実はこの『#真相をお話しします』はコミカライズされており、Amazonのレビューを参考にすると小説(原作)より漫画版の方が評価が高い。この「枠組み」のみであるという点が小説ではなく漫画でウケている理由の1つではないかと推察する。この差が気になって、漫画版も少し読んでみたのだが、確かにこちらの方が良かった。小説では失われた人や情景描写が漫画では直で描かれるため、枠組み+背景描写の2つが楽しめる。もし本作に興味を抱いているなら、漫画版も一考の価値があるかもしれない。


脱線の脱線

最近はYouTube ShortsやらTikTokやら短くコンパクトにまとまっているものが評価される。これに対して、「最近の若い奴は根気がない」云々言うのは簡単であるが、それは需要側の問題という供給側の戦略によるものであると感じている。供給側はとにかく目を付けさせて、再生させないといけないため、短くオチがあって引きつけるものを用意しないといけない。だから、それに飲み込まれてこちらも必然的にそういったものを見るしかなくなるのではなかろうか。しかし、そうは言っても、それに慣れ過ぎて需要側が「自分は短いものしか見れない」と錯覚するのは良くない。僕自身、映画なんて長時間拘束されるものは飛行機の中でくらいしか見ないし、長編小説を読んだのも高校生が最後になるが、だからといってそういったボリュームのあるものを「読めない」とは全く思わない。「読めない」と自覚した瞬間、人は本当に読めなくなってしまう。コンパクトにまとまっているものを摂取するのも必要だが、時にはその対極にあるものにも触れないといけない。自戒も込めて。


最近の個人的な話

ここ最近は読書に費やす時間が極端に減っている。問題である。筋肉が運動を行うことで神経系を発達させ思い通りに動かせる状態になるように、脳も動かすことで思い通りに考えることが出来るようになる。私の経験+多くの人々の話からして読書は脳の最も刺激的な運動であるといえる。それを踏まえると、空いた時間にはSNSや動画を見ることが多い私の脳は全く「運動」出来ていない。脳の状態は大胸筋や腹筋と違って見えないため、瘦せ細っていることを感じられないが、もし見えるならガリガリかもしれない。
対策としては何回も述べているように読書である。一日1時間でも時間を作って読むことが出来れば最善だが経験上それは長く続かない。すぐ頓挫する。
ただ、頓挫させないコツ(と言うには大袈裟だし簡単なもの)もある。最近はこれを強く意識することで改善の方向に向かって行っている。
すなわち、「自分の問題意識と合致している本」を選ぶことである。
世間一般に読み易い本と言われていても、自分の問題意識との共通部分を欠いているとたちまち「読みにくく」なる。少なくとも私はそうである。
もし読み易いとされている本でも読み辛いなと感じている人がいればこのことを意識してみて欲しい。かなり「読み易く」なるはずである。

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