最も、汎用性の高いコインローファーは?
皆さん、こんにちは!
今回は、『最も汎用性の高いコインローファーは?』について解説していこうと思います。
そもそも汎用性とはなんでしょうか?ビットローファーとタッセルローファーの使い分けならスムーズに伝わると思いますが、コインローファーに使い分けってあるのでしょうか?
実は、あります。
革靴といえば、革の質や履き心地が先行しがちなイメージですが、しっかりとその靴自身が持つ印象があり、靴によってコーディネートがガラッと変わります。
男性的である靴、女性的である靴。フォーマルやカジュアルな靴。クラシックやモードな靴。
靴にはディティールによって様々な印象がありますが、つまり『汎用性が高い』ということは、全ての要素のちょうど真ん中に当たる靴がそれに当てはまると言えるでしょう。
今回は、様々な要素を検証していき、全てのちょうど真ん中に当たる靴。つまり、最も汎用性が高い靴について解説していきます。
最も汎用性が高い靴は?
それでは早速、今回の答えから参りましょう。
私的に、最も汎用性が高い靴は・・・
JM WESTON 180シグニチャーローファーです。
人によって感性に違いはあると思いますが、私が思うにこのローファーが最も汎用性が高く、ほぼ全てのコーディネートに馴染んでくれる優秀な靴だと思います。
私は『1番初めに買うべきローファーはなんですか?』という質問には、間違いなくこの靴と答えるでしょう。
しかしながら、なぜそう思ったのか、論理的に答えなくてはなりません。今回は、
フォーマルか、カジュアルか
男性的か、女性的か
クラシックか、モードか
の3つの要素を検証していきます。
フォーマルか、カジュアルか
フォーマル度に関しては、ドレスに合わせられるか、私服に合わせられるかで全て説明ができると思います。
ドレスに合わせるのは、問題ありません。ジャケパンやカジュアルスーツなど、オンの格好では非常に重宝する靴ですね。
問題は、カジュアルかというところです。
答えとしては、使えるというのが答えなのですが、一体なぜカジュアルでも使える靴なのでしょうか?
グッドイヤー製法
実際のところ、製法はドレスかカジュアルかにさほど影響しません。重要なのは、製法によるコバが出ているか否かが重要になります。
グッドイヤー製法は、マッケイ製法やセメンテッド製法と比べてコバが出っ張るのが特徴なのですが、パラブーツなどに代表されるノルヴィージャン製法などと比べて出っ張りはなく、バランスの取れた製法と言えます。
事実、パラブーツのシャンボードには二つのラインが存在し、皆さんがよく知るノルヴィージャン製法の靴と、ドレスラインとしてグッドイヤー製法の2種類が存在します。
ウエストンのローファーは、グッドイヤー製法を採用しており、コバの張り出しは出過ぎている訳でもなく、シャープで綺麗すぎる印象という訳でもありません。
トゥのデザイン
カジュアルかフォーマルかというところで、トゥのデザインも関係してきます。皆さんカジュアルの最たる例であるデニムを想像してください。
デニムに、丸みのあるボリューミーな靴か、細くて華奢な靴どちらが似合うと思いますか?
ボリュームのある靴だと思いませんか?
つまり、フォーマルによるためにはスクエアトゥのような細く角ばった先端のデザイン、カジュアルに寄るためには丸みがありボリュームのあるデザインでなければなりません。
まとめてみると
ウエストンのローファーはドレスには問題なく合わせる事が出来ます。更には、グッドイヤー製法やラウンドトゥという丸みのあるデザインから、カジュアルでも合わせられる一面も持ち合わせています。
実は意外と、このどちらにも振れる靴というのはさほど多くはないのです。ジョンロブのロペス(ジョンロブの代表的なローファー)をオフの服に合わせようという方はあまりいませんし、逆にGHBASSのローファーをオンのカッチリした服装に合わせようという方はあまりいないと思います。
そういった意味でウエストンのローファーは、カジュアルな一面も持ちながら、同時に縫製やディティールでドレスな一面も持ちうる『いい意味でどっちつかず』の靴なのです。
男性的か、女性的か
靴における女性的というのはどういうことでしょうか。
そんな時はパンプスを想像してみてください。
パンプスは、ソールが薄く、先端が短いのが特徴ですよね。これが、女性的な靴です。つまり、肌の露出面積がより多く、より華奢な靴が女性的な靴と言えます。
ここで、メンズ革靴で男性的か女性的かを判断する部分で最も重要なディティールがあります。それが、
ノーズのデザイン
こうみた時に、ショートノーズがより肌の露出面積が多く、ロングノーズがより少ないと思います。
ウエストンは、ややロングノーズ寄りですが、ロングほどではないという長さになります。
細部のディティール
左がウエストンのローファーなのですが、非常に綺麗で主張の少ないディティールをしています。
まずは、サドルのデザイン。アメリカンディティールに代表されるビーフローフ(見た目が紐で結んだビーフのように見えるから)はワイルドで男性的な印象、逆にウエストンのフルサドルは、綺麗で女性的な印象を受けると思います。
また、モカシン縫いの違いも見られます。
右のつまみモカ(摘んだような丸みが特徴)は丸くボリューミーで男性的な印象、左のウエストンは拝みモカ(手で拝んだ形に似ている)で主張が少なく女性的な印象になります。
ウエストンは、坊ちゃん靴と呼ばれる靴
以上で解説した通り、ウエストンのローファーはロングノーズでやや男性的な印象のある部分もありながら、綺麗でシャープなディティールで女性的な印象も持つ靴です。
それぞれが上手く中和し合っているので、結論であるちょうど真ん中にくる靴と言えるのではないでしょうか。
結論を裏付けるエピソードが一つあります。
ウエストンは『坊ちゃん靴』と呼ばれることがたまにあるのですが、皆さんは坊ちゃんという単語に、男性的か、女性的かどちらの印象を抱きますか?
どちらでもない。と、思いませんか?
坊ちゃんだから、厳密に言えば男なのですが、男性的かと言われると、そうではなく、中性的なイメージと言われるとしっくりくるのではないでしょうか。
クラシックか、モードか
JMWESTONの靴はクラシックであるか。という問いは、おそらく満場一致でクラシックであると答えるのではないでしょうか。
では、JMWESTONはモードであるか。という問いはどうでしょうか。
結構、難しいと思います。
今回はモードであるか。という問いについて考えていきます。
まず、モードの定義について考える
モードとは、先鋭的、先進的という意味があります。
クラシックの対義語がモードである通り、時代を遡ると伝統的で規律を重んじる大人の服装がクラシックファッション。対して、そんな大人の服装に嫌気が差し、それに対抗するカウンターカルチャーとして生まれた若者の服装がモードと言えます。
つまり、広い意味で捉えると、モッズファッション、スケーターファッションもモードなのです。この話をするとかなり話をややこしくしてしまうので、軽めにしておきますが、デニムもモードファッションを代表するアイテムですし、M65も広い意味で捉えるとモードアイテムなのです。
話を元に戻します。
JMWESTONはモードアイテムなのか。
結論から言うと、どちらの面も持ち合わせている。が答えです。
この話をするには、話を1960年代まで戻さねばなりません。当時、フランスの情勢は非常に不安定であり、将来に希望を持てない若者が活発に活動を始めます。政府に対して、芸術への解放要求、戦争終結への解放要求。学生運動と呼ばれるモノが頻繁に行われていました。
当然、若者は大人の文化である『クラシック』に対して、『モード』で対抗します。若者は、大人が出来ない服装で対抗するのです。
この際、足元で使用されていたのが、JMWESTONのローファーでした。
今で言う、社会に対抗していると一般的に考えられている半グレや不良と呼ばれるような存在が、当時はウエストンのローファーを履いていたのです。
なぜ、このローファーが使われたのか、詳しいところまでは私もわかりません。しかし、このような歴史的事実として、大統領にも愛用されるようなフランスの大人文化の象徴として君臨するアイテムが、同時にその社会に対抗する形で不良たちに履かれていたのも、また事実なのです。
最後に
いかがでしたか。
ここまで散々、ウエストンのローファーについて語り尽くしてきましたが、私が一貫して言いたかったのは、全ての要素において『どちらとも言える』と言う事です。
男性的でもあるし、女性的でもある。フォーマルでもあり、カジュアルでもある。クラシックでもあるし、モードでもある。
つまり、全ての真ん中に位置しており、最も汎用性が高いと言えるのではないでしょうか?
実は、これまで語ってきた事は、全てフレンチファッションの一つで片付けられます。フランスは、日本と同じで独自のファッション文化がなく、イギリスの質実剛健な価値観、イタリアの華奢でエレガンスな価値観、アメリカの合理的な価値観。全ての洋服文化が混ざり合い、全ての分野においてどちらとも言えない複雑な洋服文化を築いてきました。
その上、パリモードに代表される通り、クラシックもモードの影響を受けてやや女性的な色使い、ディティールが使われることで有名です。
このローファーは、そんな価値観の根幹とも言える、フレンチファッションを代表するアイテムなのです。
という訳で、今回はJMWESTONの180シグニチャーローファーについての解説でした。特に気にせず、綺麗でカッチリした格好にも使えるし、カジュアルにも気軽に使える。こんな便利な靴はなかなかないと思います。
まだ、お持ちでない方には是非オススメしたい一足です。
では、今回はこの辺で終わります。
また次の回でお会いしましょう!
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