見出し画像

なぜ、未亡人は美しく見えるのか? Chapter 2 「会社・お店・施設」の驚きの「色」仕掛けを解明する(2)

オフィスのたくらみ

オフィスで感じる時間感覚の違い

「会社にいるのって、もう、つらくてつらくて、ほんと時間がなかなか経たなくて…」
あるいは、
「もう、なんだか朝会社行って、ちょっと作業したと思ったらもう夕方だ」
そんなふうに感じられることはありませんか?
長い、短い、退屈だ、落ち着かない、夕方になると必ず肩が凝っていてつらい…。
たぶん家にいる時間より多いかもしれない、会社での時間。皆さん、どんな感覚をお持ちでしょう。
もちろん仕事の内容によって、オフィスで過ごす時間の感覚は大きく変わることでしょう。しかし、そんな仕事の内容の他に、オフィスでの時間の感覚に大きな影響を与えるもう一つの要素があります。
オフィスに配された色です。
何色の中で一日を過ごしているか。これが、先ほどのレストランのお話と同様、そこで過ごす皆さんの時間の感覚にとても大きな影響を与えています。

オフィスの色ってどんな色?

ためしに皆さんが今いらっしゃるオフィスをざっと見渡してみてください。
何色がありましたか?
まずお馴染みのOA機器。コピー機、ファックスや電話は、グレーあるいはアイボリー(クリーム色)では?
パーテーション(間仕切り)はいかがでしょう。これもアイボリーが多いはずです。あるいは薄い青の布張り、といったものも多いようです。
壁。やはりアイボリーです。木目調になってる部屋もありますが、これは応接間とロビーに多いケースです。日ごろデスクワークしている部屋はやはりアイボリー。
壁にはところどころにポスター。絵なども各所に飾ってあります。
机。やはりこれもアイボリー。薄い木目調になっているものもありますが、こちらは打ち合わせ用の机です。
天井もアイボリー系。そして床は、アイボリーやグレー系。部屋によっては薄いワインレッド系の色になっているところもあります。
椅子。これだけはとてもカラフルです。ワインレッド、緑や青、結構はっきりした色が多いようです。
みなさん例外なくこうしたオフィスで働かれているというわけではないでしょうが、ちょっとした人数のオフィスなどですと、規格品が多くなることもあって、だいたい似たりよったりの色事情ということになりそうです。

オフィスの時間の経過と色の関係

先ほどレストランの説明で登場した暖色(時間がゆったり流れる。
「ゆっくりしたなー」と思っていてもあまり時間が経たない、と感じる色)と、まったく逆の効果が得られる色があります。これは寒色といって、寒い感じを与える色。青などが代表的なものです。
オレンジや赤、黄色などの暖色系に囲まれると、実際の時間がなかなか経ちません。
これとは逆に青、紫といった寒色系の中で過ごすと、時間があっという間に過ぎていきます。
ではオフィスではどちらの色になっているのか。
ここで先ほどのオフィス色チェックを思い出して欲しいのですが、結果として、特に大型のオフィスの場合、無難な中間の色を配する、ということが基本になっているようです。
時間の感覚が速い、遅い、どちらも行き過ぎは避けたい。だから中間色です。時間に対してあまり影響のない色。オフィスのアイボリー中心の配色には、実はこうした配慮がなされています。しかもアイボリーは非常に落ち着いた印象を見る人に与えます。
ただ、あまりゆったりした感覚だけだと、頭を使うオフィスではまずいことになります。そのため、「興奮」のワンポイントとして、椅子やポスターの色の存在が効いています。
確かにアイボリーの壁やパーテーションしかないオフィスより、いろいろな色のものが、適度に壁に貼ってあったり、置いてあったりする方が「働きやすそう」に感じはしませんか。その感覚が、安定の中のちょっとした刺激、つまり中間色に配された刺激色の効果を感じている証拠です。

もし冒頭のように「すぐに時間が経ってしまう」
「会社の時間がものすごく長く感じる」といった感想があったなら、もう一度、オフィスを見渡して色チェックをしてみてはいかがでしょう。暖色系、寒色系、どちらかの色に、少なくともあなたの見える範囲の色が偏っているかもしれません。
こうした色と時間の関係は、実はさまざまな場所で利用されています。
単純な作業が中心になっている工場などの壁は、すぐに時間が経つように感じる薄い青などの寒色系が中心です。
「あーゆっくりした!」と居る人に思って欲しい飲食店関連は、先ほど申し上げた通り、時間がゆっくり、しかし実際にはそう時間が経過しない暖色系です。くつろげた感想を持っていただきながら、しかも短時間でお客様が回転する。レストランにはなによりありがたい色です。
同じ効果を狙ったものとして、結婚式場の赤い絨毯があげられます。実際には何組もの結婚式が行われ、5分たりとも遅れが許されない進行の中で、赤は、おめでたいと感じさせる効果とともに、お客さんに時間以上にゆっくりした、という印象を与えるために配慮された色でもあるのです。
そして、もちろん、どの場所よりもゆっくり過ごしたい自宅のリビングルームは暖色系が多いのはご存知の通り。皆さん知らないうちに、時間がゆっくり感じられる色を選択しているのです。

仕事が10倍つらくなる色

先ほど、単純作業をする工場などの場合は、時間がすぐ経過する感覚を与える寒色系、薄い青や薄いグリーンなどが向いていると申し上げましたが、工場の仕事には、もう一つ大切な要素があります。
それは実際に扱う製品。運んだりする品物そのものに対するイメージです。
色には、食欲、時間に作用する力があると申し上げましたが、実は色は重さにもとても大きな関係があります。
たとえば同じ四角い箱。これを何色にするかで、人の感じる重さはまったくといっていいほど違ってきます。たとえば過去に、色と重さに関するこんな実験がありました。
同じ重さの箱を白とそれ以外の色で包んだ場合、どのように重さを感じるかの実験です。
仮に白い包装紙に包まれた箱の重さを1とします。
まったく同じ大きさ、重さの箱を今度は赤い色で包んでみます。
ただこれだけの違いで、赤い箱は白い箱の約1・7倍もの重さに感じてしまうのです。これが黒の場合ですとなんと約1・8倍。つまり、白の倍近く、赤や黒で包むことで重さ感じてしまうことになります。これは色の持つ明るさ「明度」の違いによって起こります。明るい色ほど軽く、暗い色ほど重く感じます。
色一つで増える負担は信じられないくらい大きいものなのですね。
つまり、日常荷物を移動させたりする作業が日常的に行われている場所で、荷物ボックスの色が重さを感じる黒などの色だったら。
しかも、壁の色がなかなか時間の経たない暖色系に塗られていたとしたら。
荷物は重く、いくら働いても(働いたと感じても)まったく時間が経たない。こんなつらい仕事場が出来上がってしまうことになります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?