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23.10.17 いちばんめ欲

ふくらはぎが好きです
スラッと細い足よりも
筋肉が盛り上がっているふくらはぎが好き

あなたが右足の脛が痛いと言った時
ほんの0.5秒
「大丈夫」と声をかけるのを躊躇しました

太く長い人差し指が好きです
珈琲を飲む仕草 煙草を燻らすたび
その指に触れてみたいと想像します

あの時親指をざっくり切って
床をバタバタ転げ
ボタボタ流れる血に
知らねえよバカと戸惑いながら
いっしょに病院に行きました

ボーっと突っ立っている
だらしのない女がいたので
こっそりカメラでとりました
左隅にそれとなく このマヌケ面が
誰かに伝わってくれと願いを込めて
世界に紹介しました

このちっぽけな思い出を小箱に入れて丁寧に梱包した。外側は100均の色紙やシールを切り貼りして、レースのリボンで可愛く飾り付けてそれを眺める。

ある日、私の部屋は小箱でいっぱいになった。そしてなだれのように玄関から外ヘ流れ出してしまった。私は慌てて戸を閉めようとするが流れるスピードが強く外に弾け飛ばされてしまう。仕方なく小箱の川をそのまま泳ぐ事になり駅を目指した。駅にはアンパンマンが立っていた。私はアンパンマンの頭を食べようと手を伸ばす。彼は微笑んでいる。給料日前で水しか飲んでなかったのでお腹は空いている。遠慮なく引き千切る。味わう余裕などなく無我夢中で食べた食べた。最後の一口を口に入れた瞬間、膨れた腹がクラッカーのようにパンッと弾けた。私のお腹は紙吹雪で馬鹿みたいに目出度い。弾けた腹を抱えて立ち上がりふと空を見上げた。

飛行機が通り過ぎる
飛行機が通り過ぎる

通った後の雲にのり
上空から私のいた街を眺める
どこもかしこも真っ黒でキラキラな箱だらけ
腹に残った紙吹雪のカスをふりかける

しばらくして雲の上を北に歩き
遠く遠く
海と空の境に到着する
漂流した空箱が
山のように重なっていた

あぁ凪いでいる風が