知る勇気がない
「明日こそ電話しよう」
父親から教わった電話番号。
画面を見つめるだけで、幾日も無意味な日々が過ぎていった。
知る勇気がない。
彼女の死の経緯を。
彼女の最期を。
本当は信じていない。
あの子がもうこの世界のどこにもいないこと。
「会わない」ということは「いない」と同じことだと思った。
思って、いたのに。
どこにもいないとわかった途端、ぽかんと胸に穴が開いた気がする。
もう何年も会っていないのに。
「明日こそ電話しよう」
そうでないと、きっと私はここから進めない。
――昔、可愛がっていた年下の幼馴染が、いつの間にか死んでいた話。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?