見出し画像

東京最後の晩餐回転寿司店にて。

引っ越し業者に荷物を引き渡し、掃除をしてポストに鍵を入れキャリーケースをゴロゴロいわせ家を出た。あれはもう私たちの家ではない。

鍵を閉めようとしたときオットが「ちょっと待って!動画撮る」とスマホを向けた。また無駄なデータを増やすのか……。彼は確か512ギガのを使ってて、私のは128ギガだ。

今日が6年ほど住んだ東京で過ごす最終日です。

今日はホテルに泊まり明日の朝飛行機で移動する。

ホテルに着いたら荷物を置き駅挟んで反対の商店街にトンカツを食べにいこうとフンフンしていた私たちだが、5階の部屋から見えた「はま寿司」の文字で寿司の口になり順番待ち予約とやらをした。

呼び出され足を運んだらまだ9組待ちで店内で待つことに。

待合スペースはぎゅうぎゅうでまさにすし詰め。
高校生と思われる3人組は、1人がソファに座りもう1人はその膝に座っていた。残りの1人は少し離れたところで立ち待ちし、たまにその子たちに会いにくる。何度目かで「代わるよ」と声をかけられ私はホッとする。開けられたスペースにキュッと座り「ほら…詰めたらもうひと1人座れるよ」と、立ち上がった1人を隣に座らせ、最後の1人は専用の膝に座った。


目を皿にして見つめたモニターにようやく私たちの番号が表示され、ぅおおぉおおーーー!!と発券機とやらに駆け寄りQRコードをかざすと手順が間違っていたようで、その後2組に追い越される形になった。

すでに空腹と疲労のボルテージは最高潮で、再度呼ばれたときのQRコードさばきはシミュレーション通り。レーンに乗り席へ運ばれる寿司のよう席についた。


……あんまり良くない最終夜だなぁ…と思った。
東京でしか食べられないもの…東京での思い出のお店…東京で食べたかったもの…などなど欲張ればどこへだって行けたはずなのに。
引っ越し先にも当たり前にあるチェーン店に2時間半待ち私たちは若干イライラしている。


〆の2貫を決めにかかっているとオットから
「東京での思い出って何?」と投げられた。
漠然とした質問に「…うーん、ツラいことが1番に思い出されるかもな」とちょっと嘘をついた。

オット的「思い出深い妻の出来事でランキング」も聞けたのはよかった。やはりツラいことだった。

オットはすでにお腹いっぱいなのにデザートにミルクレープを食べると言い出す。さっき頼んだメロンクリームソーダはデザートじゃなかったのか!!
チョコチーズバスクケーキと悩んでいたのを、それ欲張りすぎじゃない?美味しいの?と制し、ミルクレープに。
無事ミルクレープの先っちょを譲ってもらえ、この6年でオットも成長したな…とお茶をすすった。


東京で思い出深いのは、ミルクレープの先っちょくらい特別な友人が誰もいない土地だったおかげで、1人で過ごす時間が増え自分の世界が広がったこと。
絵を描き好きなドラマ作品に出逢い、鑑賞して読書をして文を書き写真を撮りバスに乗り公園で胸を躍らせ好きなお店に通い買い漁った。
自分の好きなこと、行ったところ、楽しかったことを年賀状に書けるようになった。

そして飛び跳ねるほど幸運なことに東京にもミルクレープの先っちょくらい特別な友人ができた。多分もうお互いやる気がなくて会えないが、もし旅行かなにかで訪れてくれたら連れて行くところはもう決めてある。その旅はチョコチーズバスクケーキくらいてんこ盛りだけど、とても楽しくなる。


…今思えば悪くない夜だったな、と思う。
ツラいことも多かったが東京の生活も悪くなかったしむしろ良かった。全部ほんときらきらしてる。ありがとうありがとう。

・・・おしまい・・・

おまけ。
〆は、いくらにした。
ところでチョコチーズバスクって美味しいの?
なぜ空は青いの?なぜ海はしょっぱいの?
ん?チョコバスクチーズだっけ?

この記事が参加している募集

この街がすき

今日の振り返り

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?