『都会』


畑山「いやー、すんごいところだ。
   とにかく人が多い。」

畑山五郎(27)は、
車窓から見える初めての都会に驚いてました。
今まで、
自分の住む市から出たことがなかったのです。

畑山「村から街へ出てバスに乗って5時間か。
   ずいぶんかかったな。
  高速バスってのは、嘘なんじゃねえか。」

高速道路を通るバス、という意味ですよ。

プシュー。
「目的地に到着しました。」
畑山「ありがとうございました。
   あ、運転手さんよかったらこれ、
   うちで作った梅酒です。
   元気が出ますよ。お疲れでしょうから。
   飲んじゃってください。」

ドライバーに飲酒を勧めないでください。
さ、早く街へ出ましょう。

畑山「あれ、すごい!」

どうしましたか?

畑山「アスファルトがつるつるだ!
   うちの道路もこんな感じならなぁ。
   トラクターが走りやすいのに。」

感動するところそこかなぁ。
もっとあるでしょ、
せっかくの都会なんだから。
たくさんのサラリーマンとか、
大きいハイビジョン広告とか、
夜なのに昼間みたいな街並みとか。
バス停の前はとても栄えていました。
都会の中でも大きい駅が近いからです。

畑山「しかし、19時なのに明るいな。
   あ~、あれか。ネオンだ。うん。
  とりあえず懐中電灯だけ用意しておくか。」

必要ない必要ない!
駅までに山道は通りませんよ。

畑山「駅はどこにあんだっぺ。」

実は、もう目の前にあります。
いつの間にか着いていたようです。
デパートやお土産屋さん、
カフェにレストランまで、
視界に入りきらないほど大きい建物です。

畑山「うーん、駅、駅」

だから目の前にありますよ。

畑山「あ!」

わかりましたか?

畑山「交番があった!聞いてみよう。
   しかし交番は林さんの派出所と、
   変わらねぇ大きさなんだな。
   帰ったら教えてやるか。」

交番に行って、駅の場所を聞きました。
お巡りさんは、
親切に目の前が駅であることを教えてくれました。

畑山「これが、駅?」

そう、大きいですよね。

畑山「こんなん駅じゃねぇ!」

え、どうしたんですか?

畑山「でっかい時計も掲示板もねぇ
   駅なんてありえねぇだろ!」

それは田舎の駅だけですよ!

畑山「普通木造だろ!」

自分の価値観で喋りすぎです!

畑山「認めねぇ!認めねぇ!
   なんだお前ら!集まるな!
   俺にその四角い鉄を向けるな!」

スマホは知ってるでしょ!?

畑山「四角い鉄越しに俺を撮影して見るな!
   tiktokにあげるな!」

知ってるじゃないですか!

畑山「くそ、ここにはいらんねぇ。
   本当に駅か、確かめてやる!」

大きい駅の中に入っていきました。
たくさんの人やお店が並んでいます。

畑山「ははは、やっぱりな!
   駅の中に店があるわけねぇ!
   あっても無人販売の野菜くれぇだ!」

はぁ。
上を見てください。

畑山「あれ、看板がある。
   あ、ここ駅だ。」

そうです。

畑山「え、あ、ここ駅だ。」

そうですよ!
懐中電灯で看板照らしても意味ありませんよ!
絶対に駅ですから。

畑山「絶対に駅だ。
   でも、電車も線路も見当たんねぇぞ。」

改札に行かないと。

畑山「駅なら、改札があるはずだ。
   その先に、線路があって、
   そこを電車が通る。
   まず改札を見つけんべ!」

そうです!

畑山「あそこ、いっぱい人が出てくるな。
   電車から降りた人が、
   あっこのゲートを通って駅から出ていく。
   その人の流れの先に店を構えることで、
   多くの収益が見込める、なるほどな。
   つまりあそこが改札だ!」

無駄に推理力はあるんですね。
都会の知識がないだけで。
   
畑山「俺は知ってんだ。
   緑色のあのゲート、競馬みてぇなやつ。
   あそこに自分のスイカを当てれば、
   財布出さずに電車に乗れるってな。」

そうです!そうそう!

畑山「隣の農家のフミおばあちゃんからもらった、
   このスイカで、いけるだろうか。」

あれ、まさか。

ピッ。
畑山「よし、行けた。」

よかった。てっきり果物の方かと。
Suicaを持ってるフミおばあちゃん、
すごいな!

畑山「電車の乗り方は、
   事前に姉ちゃんに聞いておいたんだ」

そう。
お姉ちゃんは都会に詳しいんだ。
おかげで、すぐにホームにたどり着いた。

畑山「よし、もうすぐ電車が来るな。」

あとは乗るだけですから。

畑山「って、ええ!なんじゃこれ!
   鶏舎?」

満員電車を鶏に例えたのは、
この駅では君が初めてなんじゃないかな。

畑山「え、みんな乗るの!?
   おかしいよこんなの!!」

乗るしかほかにないんです!

畑山「いやだ!やめろ!無理やり!
   駅員さん!やめ、おらっ!」

スイカを投げるな!
ってか果物の方も持ってたんだ!

畑山「ぐ、苦しい・・」

むりやり押し込まれました。
30分間、それは今までに
経験したことのない苦痛でした。

「終点です。ご乗車ありがとうございました。」

畑山「なるほど。これが都会の洗礼か。
   朝晩とこれをすることで氷の精神を鍛えるんだな。」

推理力が行き過ぎて変な悟りを開いてます。

畑山「鶏小屋、新しく作ってやろう。」

それはそうしたほうがいいでしょう。

畑山「しかし、こんなところに
   住んでるんだな、姉ちゃん。」

そう、お姉ちゃんに会いに来たんですよね。

畑山「実家には帰ってきてたけど、
   こっちから来るのは初めてだなぁ。」

よかったですね、家族に会える。
でも、あのよかったら、会うのやめませんか?
だって会ったら終わっちゃうっていうか、
そもそも僕たちはまだ旅の途中というか、

「おーい、ゴロウ~。」

畑山「あ、姉ちゃん!」

お姉ちゃん、迎えに来てたんですね。

「うーん、やっぱり。」

畑山「なに?見える?」

そろそろお別れみたいです。

「うん、いま払うね。」

畑山「払うって、そんな簡単に・・・
   あ、肩軽くなった!」

「うん、意外とあっさりいったけど、
 あんた、すごいの憑いてたよ。」

畑山「やっぱりそうかぁ。
   この一年、しんどくてなぁ。
   姉ちゃんに相談してよかったなぁ。
   ちなみにどんなやつだった?」

「売れないナレーターの霊。」

畑山「前例がなさそうだなぁ。」

~おわり~

読んでくれた方ありがとうございました。
次はより良いものを書けるようにします。
描写とか視線誘導を意識して書くべきである。
プロットがないまま書いているので、
成り行きにまかせて書いてしまいました。
推理力や懐中電灯、スイカなど、
もっと拾い方はあったと思います。
田舎あるあるをもっと入れるべき。

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