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ゴジラの記憶 #21 「ゴジラVSスペースゴジラ」

平成以降のゴジラを劇場で観るときは、大抵2回は観ているのだけど、この映画と「ゴジラ2000ミレニアム」は1回しか観てない。要は個人的にダメだったということなんだけど、まあ、ゴジラシリーズもこれだけ続くと、各年代に”推し”ゴジラができる。自分は「キングコング対ゴジラ」から「三大怪獣地球最大の決戦」のあたりで、どうしても平成以降のゴジラに対しては見る目が厳しくなりがちなのだけど、それにしてもこれは、「何でこうなった?」と思わざるを得なかった。

一体この映画は昭和回帰なのか平成ゴジラを極めようとしているのか。そもそもメインターゲットは大人のゴジラファンなのかお子様なのか。色んなところがよく分からなかったのである。例えばこの映画に出てくる「モゲラ」(正式名称はMobile Operation Godzilla Expert Robot Aero-typeらしい。この語呂合わせを考えるの大変だったろうなあ)。元ネタは昭和32年に制作された映画「地球防衛軍」に出てくる異星人が持ち込んだ資源採掘用ロボットなんだが、ここでのモゲラは、人類が開発した対ゴジラ用スーパーメカで、そこまでだったら前作のメカゴジラと一緒なのだが、なんと宇宙空間まで行ってしまう。しかも乗組員は、宇宙服を着るでもなし、地上の戦闘服と同じ格好である。1994年でこの描写はきつい。で、いかにも吊ってますという体の小惑星帯でスペースゴジラを迎撃しているのをスクリーンで観ながら、(当時)30過ぎのオッサンが一人映画館で何をしとるん。もっと生産的なことに時間使わんと、とゴジラ映画を観て初めて思ったのだった。

前回でも触れた「ジュラシック・ショック」を経て、SF的もっともらしさをかなぐり捨てたのか、一気にテレビの「ウルトラシリーズ」いやそれを通り過ぎて「キャプテンウルトラ」(映画会社は違うが)ぐらいまで戻っちゃったのか。でも、ストーリー自体は平成ゴジラの中でも一番ハードSF色が強かった「VSビオランテ」の続きだし、三枝未希に初めて恋愛的なエピが出てくるし、柄本明は思いの外ムキムキで、何かランボーと「白鯨」のエイハブ船長を足したようなキャラで出てくるし、不思議な映画であった。でも、それでも、子ども、特に男の子は喜んだに違いない。モゲラのドリルとビームは男の子の大好物。それに、ネットとかで見るスペースゴジラの人気って、案外高いのですよ。だから、滅多なことでは悪口は言えない。とかいって、結構言っちゃったか。好きな方、ごめんなさい。

実はゴジラはこれが九州初上陸で、地元のローカル番組とタイアップしたりもしている。鹿児島、熊本、そして何故か大分に行って、最終決戦地の福岡に赴くという、中々律儀に各県を回っているのも多分、各都市からの要請があったのだろう。こういうとこからも、当時のゴジラが、怪獣というよりも日本映画が生み出した銀幕のスターだったというのがよく分かる。本当、この映画のゴジラって、寅さんと同じだ。寅さんがどの街に現れて、マドンナとどういう風に知り合うか、と同じように、ゴジラが何処から出現して、どんな建造物を破壊するかを観るため客はスクリーンの前に座る。何なら、逃げる人々の手に、「ゴジラ来る!」という垂れ幕でも持たしてやりたいところである。

ただ、そうすると、スルーされた宮崎、佐賀、長崎の立場がないような気もする。まあ、被爆都市である長崎をゴジラが襲うというのはシャレにならんが、宮崎と佐賀に関しては、ゴジラが破壊するに足る建造物がなかったのであろうか。


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