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ゴジラの記憶 #18 「ゴジラVSキングギドラ」

この映画、実は劇場で都合3回観ている。

ツッコミどころは多々あり、タイムパラドックスとか外国人出稼ぎタレントの演技とか度重なるハリウッド映画のもじりとか・・・でも、それを補って余りあるぐらいの勢いがあるのである。出来たばかりの新都庁がぶっ壊れる様も爽快だったし、土屋嘉男とゴジラの対面シーンも、冷静になって考えればちょっと変なんだけど、何度観てもグッとくるもんがあるし、まあ、要するに好きなんですね。好きに理屈は要らないのだ。

しっかし、最初に特報映像で「ゴジラVSキングギドラ」の文字を観た時、「ありゃあ、東宝さん開き直ったなぁ」と思ったのであった(そのころは大森一樹監督が前作に続けて登板することは知らなかった)。考えてみれば前作「VSビオランテ」はクオリティは高かったのにその大人向けの内容が災いしたのか、興行的には今ひとつだったと聞く。「だったらコイツ出しときゃいいんだろ!」とばかりにキングギドラを登場させたのは潔い。映画の方はそのヤケクソ的パワーのテンションを最後まで保ち続けていて、興行成績も持ち直したのか、以降ゴジラシリーズは東宝の正月映画として定着していくのである。

ちなみに、昭和シリーズを含め、キングギドラが単体でタイトルに登場するのは実はこれが初めてで(チャンピオンまつり時代の改題を除く)、”主役”のゴジラや怪獣の都合により、人間の登場人物があっち行きこっち行き、時には性格さえも変ってしまうという傾向が顕著になったのもこの映画からだったと思う。これは言ってみればゴジラを中心とした一種のスターシステムともいえるもので、ゴジラをいかにカッコよく戦わせるか、に注力した結果であると言えよう。
五社協定などは遥か昔、テレビドラマの主演俳優やアイドルが映画の主役を務めていたこの頃、スクリーンを通してしか会えない存在というのは、それ以前からずっとスターであった高倉健とか吉永小百合とかともにゴジラとフーテンの寅さん(渥美清ではなく)ぐらいじゃなかったのだろうか?いずれにせよ、ゴジラは映画に出てくる巨大な生き物ではなく東宝、いや日本を代表する映画スターなのであった。そこんとこ押さえないと、エメリッヒ版ゴジラのように、映画の出来としては決して悪くないのに、火ダルマになるのだ。

また、この映画は大森一樹監督のハリウッド映画に対する愛がダダ洩れしている映画でもあって、映画にはスピバーグの父親と思しき人物まで出てくる。
この人の未来の子供がこの2年後にティラノサウルスが出てくる映画を作るとは、誰も思っていなかったろう。ましてや、最新の学説を取り入れて恐竜の姿を作ったため、ベタ足で歩くゴジラのあの姿は、中に人が入る着ぐるみの都合だったことを満場に晒してしまうことになるとは・・・・



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