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行く手を阻まれた若いカラス

若いカラスがアパートの階段の踊り場から外に出られないでいる。なぜか上へばかり飛ぶので1階下の全開にされている大きな窓から出られないのだ。閉じ込められたと焦って全体が見えていないのだろう。完全にパニック状態に陥っている。

パンを置いて誘導を試みるもうまくいかない。脅かして下へ行かそうとしたがさらにパニックするばかり。試行錯誤した挙句、放っておくしかなさそうだ、という結論に達した。カラスが時間と共に落ち着き、窓から吹き込む風を感じて開け放たれている窓に気づくのを待つしかない。

そんなカラスを見ていると、周りが見えていない人と少しダブってしまう。

困難な状況に陥るとカラスだけでなく人もあたふたと焦って判断力を失う。いかに冷静になって周りを見回し落ち着いて判断できるのか。状況を打破するのに必要なのは焦らずに落ち着いて周囲を見渡し、冷静な判断を下す力なのだろう。

若いカラスは閉ざされた天窓と閉ざされた窓にバンバンと何度もぶつかっている。気の毒だがどうしようもない。よりにもよってカラスの動線上の窓は鍵がないので開けることができないのだ。

そのうち階下の開いた窓に気づいてくれますように。

壁にも階段のカーペットにも大量のシミがついていた。

そんな日曜日の午後。日曜日だというのに掃除機をかけ、洗濯機を2度も回した。あまりにも天気がいいのでシーツ類をまとめて洗っておこうと思ったのだ。ついでに髪も染めておいた。最近、週末にやることといったらジムに行くか友人とカフェでお茶を飲むくらいである。今日はそれすらしない「家事をまとめてやる休日」である。

ロシア語の先生はいつも授業の初めに週末に何をしたかという質問から始めるが、今週末もほぼいつものパターンで過ごしている。面白いもので数人しかいないクラスメートたちの行動パターンも週末の過ごし方で見えてくる。ひとりはほぼ毎週、親戚や友人たちと共に過ごし、ひとりは自転車で郊外に行き、もうひとりはジョギングをしたり友人たちと外食に行く、という具合に。よくよく話を聞いてみるとパートナーがロシア人だというクラスメートがふたりもいた。今のご時世でロシア語をやりたい、となるとやはりそうなるのかと妙に納得した。

そんなことより。若いカラスを見て自分は果たして自分の今の状況を冷静に見て判断できているのだろうか、と首を傾げた。もう少し落ち着いた方がいいのかもしれない。

さ、洗濯物を干したらティアキンでもやるか。



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