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『傷物語 -こよみヴァンプ-』感想

本作自体、圧倒的に洗練された作品であることは間違いない。そのうえで、『こよみヴァンプ』それ自体が、三部作から「牙を削って爪を抜いてのどをつぶして去勢して」、『傷物語』に「生きて欲しいと思うんだ」と告げた物語だと感じた。

お前が明日死ぬのなら僕の命は明日まで……。お前が今日生きてくれるなら、僕もまた今日を生きていこう——尾石達也は、いや、私たちは、『傷物語』にそう告げた。

言葉を補えば、本作は圧倒的にスタイリッシュで、デザインされたアートアニメーションとして、アニメーションそれ自体やクリエイターたちの名を「延命」した。引き換えに、元あったギャグテイストだったり、性的な表象は一部、「爪」を抜かれ、「去勢」された。でもこれは「好きでやってるんだから」。

誤解なきよう言い添れば、それは圧倒的に凄まじいことなので、映画館で見るべき素晴らしい到達点だと思う。あるいはこの傷は、けっして癒えない。

2024.1.12

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