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131【事業性評価融資をかみ砕いて説明する。】地方在住経営コンサルタントの思索

写真は岡山市内中心部の国道2号線です。英会話のAEON本社前の歩道橋から撮影しました。ちなみに歌手のアンジェラ・アキさんはAEON創業者の娘さんです。
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はじめに


中小企業融資の分野において「事業性評価融資」をきちんと自分の言葉で説明できる方が果たしてどれだけおられるでしょうか?

これは約10年前から打ち出された新機軸です。読んで字のごとく、企業の事業そのものを評価して融資していこうとする新たな動きです。

全く、融資に関わりや興味が無い方には分かりづらいとは思いますが、今まで銀行などの金融機関は主に、過去の経営成績と企業と代表者の資産背景を分析して、融資を実行してきました。勘の鋭い方ならお察しのとおり、伝統的企業に有利で、ベンチャーなどの「これからの企業」にはどうしてもハンデが出てきます。こういった事態を是正していこうとして新たな方針として策定されたのが「事業性評価融資」という考え方です。

何を見るのか?それは「儲け方」である。

「事業性評価」と何やら堅苦しい表現ですが、「どう儲けているのか?」を金融機関が理解できれば、未来に稼ぐ額を予測でき、それに見合った融資を実行できるはずです。

しかし、今までは「過去」に捉われた融資でした。どちらかと言えば、性悪説でネガティブな「最悪、その企業の未来よりも、貸したお金が戻って来さえすれば良い。」という必要以上に保守的な状態だったと言わざるを得ません。

こうなった背景には2002年に金融検査マニュアルが制定された世相が大きく反映されています。

90年代日本経済はガタガタでした。各金融機関の審査基準や、資産の査定方法がバラバラで、バブル崩壊後一番、政府が苦慮した点は正しい不良債権額の把握でした。資産(銀行から見れば貸金)の回収リスクの判断基準の統一はもはや時代の要請でした。そういった理由で過去の数字に重きを置いた融資判断が現在まで脈々と続いているのです。

今は融資の考え方の時代の転換点

しかし、現在は失われた30年間という考え方はあるものの、リーマンショック前は「不動産小バブル」と呼ばれた時代であり、2020年(21年開催)の東京オリンピックへ向けた、2010年代は今思えば、好景気とも呼べる時代だったのではないでしょうか?

人間の歴史の必然として、時代は繰り返します。おそらくこれからはしばらくは、コロナ禍後の後遺症的な、不景気局面がしばらく続くでしょう。但し、このコロナ禍の約3年間の中に、冷静に、自社が置かれた市場の外部環境と自社が培ってきた内部環境にある経営資源を見つめ、隙間市場に打って出て、確実に利益を上げている企業は多く存在しています。コロナ融資と事業再構築補助金は、創意工夫する企業が、今の事業が斜陽であっても、隣接した領域や、新しい投資をすることで市場で勝ち抜いていくチカラを付けて生き残って欲しいという目論見で、かつてない規模で設定された制度でした。

未来を冷静に捉え、自社の勝ち筋の精度の高い仮説を構築し、あるべき未来へ向けて打って出たい!と考える企業経営者は多く存在します。この経営者の前向きな思いを汲んで「未来へ向けた融資」の比率をどんどん上げて行こうというのが政府の目的でもあります。

市場環境は厳しいものの、未来へ挑戦していく意欲がある人間にとっては調達面で、かつてないチャンスが到来しつつあるということです。ベンチャー企業や創業から10年以内の企業は往々にして、資産は少ないと言えます。「持たざる経営」という資産が身軽な効率性の高い企業経営がトレンドであり、定石という時代でもあると思います。

VCからの直接金融だけでは、企業の成長途上で運転資金が枯渇するというケースは頻繁にあります。私としては、ベンチャー企業においても、事業性評価に基づく審査において、負債(デット)という間接金融もバランスよく考えられる企業が成長を遂げていく確率が高くなっていくであろうと予測しています。

そして、金融機関へ経営者が自社の状況を正しく言語化し、体系的に可視化させていく作業こそが、事業性評価に確実に繋がります。

金融機関・商工会議所・会計事務所・中小企業診断士・財務コンサルタントら最前線の支援家達が主体的に顧客と顧客の課題に肉薄して、向き合っていく本当の伴走支援が必須の時代が到来していると考えるべきでしょう。

最後に金融機関が目安としている、事業性評価シートの要素を記述します。

①会社概要
②組織図
③ビジネスモデル(商流・収益の源泉)
④内部管理モデル(業務フロー・収益等管理状況)
⑤市場と競合環境(価格競争力・差別化・独自性)
⑥財務・資金繰り・借入の状況
⑦設備投資計画
⑧SWOT分析など
⑨経営者について
⑩経営課題と経営方針
⑪経営計画の概要

事業性評価シートの例 一般社団法人 銀行融資診断士協会

まとめ

私は財務コンサルタントの仕事がまさに、事業性評価のサポートと言えると考えています。なぜなら、上記の11点で構成された事業性評価シートを整備していく、じっくり時間をかけて取り組んでいるコンサルテーションがまさにこの作成プロセスそのものです。

年商10億円規模までの中小零細企業経営は、リソースが限られており、1点突破の戦略でどうにかその市場で生き抜いているというのが一般的です。ですので、いびつな偏った経営体制であることが頻繁にあるため、このシートの要素に従ってそれぞれに改善をかけていけば、経営の基礎固めがきちんとできるということが言えます。

何よりも経営者の先を読む鋭い直感は大事ではありますが、ビジネスはあくまで確かな再現性が重要です。経営の要素の全項目に自社の基礎が構築できていなければ、感覚に頼り過ぎ、どうしても業績の波が激しくなります。基礎を押さえた、骨太の経営に持っていくことができる点がこの事業性評価シートの効能とも言えると考えています。

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株式会社なかむらコンサルタンツ
代表取締役 中村徳秀

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