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事業会社の出身者によるマーケティング支援会社が増えている


支援会社の出身者が作る支援会社

マーケティング支援会社というと、従来は支援会社の出身者が作ることが多かったと思います。例えば、以下のようなパターンです。

  • 大手広告代理店でデジタル広告の営業や運用をしていた人間が広告代理店として独立する

  • SEO会社でコンサルをしていた人間がSEO会社として独立する

  • 大手制作会社のプロデューサーが制作会社として独立する

大手に比べるとスピード感が速い、少額予算でも対応してくれるなど顧客にとってのメリットは色々あるのですが、弱点もあります。支援会社で培った経験をベースに独立しているため、未経験の領域に対しては提案できないことです。例えば、デジタル広告のスペシャリストなのでMAやCRMの提案ができないなどですね。支援会社は領域を絞ることで専門性を高め、属人性を減らしているため仕方ないことですが。

こうした弱点を克服するため、支援会社同士でパートナーシップを組んで提案することも多いですが、前に説明した多重下請け構造が生まれやすい原因でもあります。

事業会社の出身者が作る支援会社

さて、最近では事業会社の出身者が作るマーケティング支援会社をよく見かけます。自社製品のマーケティングをしていた人間が、その経験を元に支援側に回るということですね。特にリクルート、BtoC大手ブランド、大手スタートアップの出身者をよく見かけます。

事業会社の場合、支援会社と違って支援領域の制限が無いので幅広い業務を経験しやすいですし、「事業にとってどのようなマーケティングが必要か」という事業視点を身に付けやすいのは強みでしょう。私自身、前々職のCRM事業・支援会社でデジタル広告・MA・インサイドセールス・CSと幅広い経験をしており、それが今のベースになっています。

一方、弱点もあります。支援会社が「狭く深く」なのに対して事業会社は「広く浅く」なので、どうしても施策一つ一つに対する理解度や経験値は浅いです。事業会社の出身者と一緒に仕事をするときがありますが、事業の理解度は高くても、施策の設計や運用フェーズになると知識が少なすぎて「事業会社時代はほとんど代理店とかに丸投げしていたのでは?」と思われるような人もいます。

また、私の観測範囲の話ですが、支援会社の出身者に比べると当たり外れがより大きいのも事業会社出身者の特徴です。支援会社は優秀な人が85点、微妙な人でも60点ぐらいですが、事業会社は優秀な人95点、微妙な人が30点ぐらいです。これは、

  • 経験領域が広いため、「器用万能」と「器用貧乏」に二極化する

  • 事業理解などの上流工程が求められるため、属人性が非常に高い

  • 支援会社は何らかの資格やパートナー制度(GoogleやSalesforceなど)により一定の実力を担保できるのに対し、事業会社は実力を担保する指標がほとんど無いので、ピンキリになりやすい

  • 支援会社に比べると事業会社はマーケティングスキルの教育体制などが不十分なので、本人の努力や資質に依存する部分が大きい

などが原因と思われます。

最悪なケースは、事業会社の出身者たちの会社に仕事を依頼したら、予算が少額、優秀な人はリソースが埋まっているなどの理由で、新人や微妙なメンバーをアサインされてしまい、成果が出ないことです。これは支援会社の出身者たちの会社にも起こる話ですが、前述の当たり外れが大きい問題があるため、事業会社のほうがより深刻です。

事業会社の出身者は指名で頼むと良い

クライアントの立場からすると、どちらの支援会社に頼むのが良いのか? と悩みそうですが、もちろんどちらもメリット、デメリットがあるので普遍的な答えはありません。以下を判断基準にすると良いでしょう。

  • 「デジタル広告の改善をしたい」「MAを運用したい」など課題や支援してほしい領域が明確な場合は、支援会社の出身者の会社

  • 「何が課題なのか診断してほしい」「何をやるべきかから提案してほしい」など課題が明確でない場合は、事業会社の出身者の会社

ただし、事業会社の出身者は前述の通り当たり外れが大きいので、「この人に仕事を頼みたい」と指名することをおすすめします。指名する際も「大手事業会社の◯◯出身」といったネームバリューだけで判断せず、その人のSNSやブログを見たり、打ち合わせしたり、共通の知人に話を聞いて「この人は本当に信頼できるのか?」を判断した上で依頼しましょう。


私自身はCRM事業・支援会社、Web制作会社を経て独立したので、事業会社・支援会社いずれも経験しています。会社員時代の話は、詳しくは以下をご覧ください。

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