Web広告のカスタマーサポートの品質が低下し続ける理由
前回、Microsoft広告に不当な理由でブロックされた話を書きましたが、Microsoftに限らず、全体的にWeb広告プラットフォームはカスタマーサポートの品質が低いです。
一般的に、カスタマーサポートやカスタマーサクセスには「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」の3種類があります。Web広告に当てはめると、
ハイタッチ:顧客とのミーティング
ロータッチ:電話・メール・チャットでの問い合わせ対応
テックタッチ:オンラインヘルプやコミュニティ
となるのですが、ロータッチの対応はひどいものが多いです。
特に対応がひどいのがGoogle・Metaです。YahooはGoogleに機能面で劣る部分が多いのですが、それをカバーするためか、CSは丁寧なことが多いです。Microsoftは前回のブロックの件では最悪な対応でしたが、平時はきちんと対応してくれます。
具体的に、カスタマーサポートの質が低い点を説明します。
カスタマーサポートの品質が低い対応例
①文章をきちんと読まずに回答する
これはメール・チャットでの問い合わせでよく発生します。
顧客が問い合わせの文章やスクリーンショットを送信する
担当者が文章を確認する
担当者が回答を送信する
という流れで進むのですが、担当者が1の文章をきちんと読まずに回答してくることが多いのです。
私の経験談でいうと、
Meta広告にてレポートが上手く表示できない不具合があったので、「レポート機能で添付のような不具合があった。原因が◯◯かと思い××を試したのだが解決しない」とチャットで、不具合のスクリーンショットも付けて送信した
担当者が「レポートに関するお問い合わせですね。少々お待ちください」と返信した
担当者が「××をお試しください」と回答した
という事件がありました。私は「××は試したが解決しなかったと問い合わせ時に書きましたよ」と返答したので、担当者は「失礼しました。再度確認します」と待機状態になったのですが、結局その場では解決せず、Meta社内で調査いただく形でチャットは終話しました。担当者は私の問い合わせの文章をきちんと読んでいないか、読んでも意味を理解していなかったのだと思います。
こうした齟齬が起きる原因ですが、日本語ネイティブではない人を配置していることが大きいと思います(外国人差別のようで好ましい話ではありませんが)。Web広告のカスタマーサポートは問い合わせ時に「サポートの◯◯です」と名乗るので、外国人かどうかは名前を見れば分かります。たまに外国人が偽名で日本人名を名乗っていることもありますが、助詞がおかしかったり、不自然な日本語を話すことが多いので、日本語ネイティブではないことは分かります。
※特にGoogleやMetaの場合、外国人がアサインされる確率が非常に高いです。Yahooは日本人がアサインされることが多いため、こうした齟齬はほとんどありません。
もちろん、職業選択の自由があるので外国人をカスタマーサポートに置くなとは言いませんが、サポートは顧客の問い合わせを理解することが必須なのですから、理解できるだけの日本語能力を持った人を配置してほしいものです。それが無理なら、せめて日本人のCS担当者がフォローすべきでしょう。
②勝手に問い合わせをクローズする
一般的に、カスタマーサポートとは顧客の問い合わせに回答して終わりではなく、問い合わせが解決したことを確認するまでがミッションだと思います。具体的には、以下のような流れです。
顧客が問い合わせる
担当者が回答する
担当者が解決したかどうかを確認する
顧客が解決したと回答する(しなければ1に戻る)
クローズする
ところがWeb広告の場合、3〜4の工程を踏まず、2からいきなり5に飛ぶことがあります。
これは前回話したMicrosoft広告のブロックの件が分かりやすいでしょう。12月中旬に、「審査チームでの審査の結果、悪質なポリシー違反によりアカウントがブロックされた」とメールで通知されたのですが、回答の最後で「これにて終了とさせていただきます」と、こちらの意思も確認せずに勝手にクローズしています。
Metaなどはさらに質が悪く、勝手にクローズした上で満足度調査のアンケートメールを送ってきます。そもそも解決していないのですからアンケートに回答するはずもないのですが、これ以上回答することはないという最後通牒のような対応です。
この問題については、カスタマーサポートのミッションが問い合わせの解決ではなく回答になっているのが原因ではないかと考えています。
③既存顧客からの問い合わせを受け付けない(Google)
元々、Google広告にはオンラインヘルプが存在するのですが、ヘルプでも解決しなかった場合の対処方法として、
電話・メール・チャットでの問い合わせ窓口
が存在しました。2024年2月にGoogle広告の不具合があったので、久々にGoogleの電話番号に問い合わせたのですが、そこで以下の回答を貰いました。
Google広告では既存のお客様からの問い合わせ窓口を閉鎖した
弊社はGoogle広告を新規開設されるお客様向けに予算シミュレーションや設定案内などを行うパートナー会社であり、既存のお客様からの問い合わせには対応できない
既存のお客様はヘルプをご覧いただくか、ユーザーコミュニティに投稿いただくしかできない
何と既存顧客からの問い合わせを受け付けず、ヘルプとコミュニティに丸投げし始めました。MetaやMicrosoftですら問い合わせの無視はしないので、Google広告はカスタマーサポートの品質低下の極みといえるでしょう。
カスタマーサポートの品質低下の原因
ここからは私の推測です。
①ロータッチの優先順位を下げている
最初の話に戻りますが、カスタマーサポートには「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」の3種類があります。今回私が挙げたのはロータッチです。
ハイタッチ:顧客とのミーティング
ロータッチ:電話・メール・チャットでの問い合わせ対応
テックタッチ:オンラインヘルプやコミュニティ
Web広告のプラットフォームから見て、ロータッチは顧客満足度が向上することはあっても直接的に売上を生みづらいのだと思います。
基本的に、カスタマーサポートが売上に貢献する場合、「解約率を下げる」「顧客単価を上げる」の二つが多いですが、ロータッチではどちらも満たしづらいことが分かります。Web広告を解約するつもりの顧客はそもそもカスタマーサポートに問い合わせてこないでしょうし、媒体の仕様確認や不具合調査の対応をしたからといって、顧客が広告の配信金額を増やしてくれない可能性が高いからです。
こうした事情から、Web広告はロータッチよりもハイタッチ、テックタッチ、新規獲得を優先順位高くしていると思われます。前述のGoogleの窓口閉鎖、ヘルプやコミュニティへの丸投げなどは最たる例でしょう。ロータッチの対応はひどい一方でハイタッチやテックタッチの対応はしつこいぐらいであり、広告の配信金額が一定を超えていると毎月の定例会議を提案してきたり、しばらく広告を停止していると再開のリマインドメールを送ってきたりします。
②ロータッチ業務のルーチンワーク化
①の事情があるため、プラットフォーム社内では優秀な人材を新規獲得営業やハイタッチに回しており、ロータッチには優秀な人材をほとんど回していないと思われます。ロータッチは優秀ではない人間でも回せるようにマニュアル化しているのではないでしょうか。こうした体制が、
②「問い合わせに回答してサポート終了」というルーチンワーク
③新規顧客にのみ窓口を設ける
を引き起こしています。
③ロータッチ業務の非正規雇用人材の増加
大手プラットフォームだと顧客数が膨大なので、日々大量の問い合わせが来るはずです。ロータッチの人材を減らすとそれらを捌ききれなくなるはずですが、その対策として、正社員ではなくアルバイトなどの非正規雇用人材を増やしているのではないでしょうか(これは根拠がある話ではなく、私の邪推です)。ルーチンワークに高単価な正社員をアサインするのはもったいないからです。
カスタマーサポートには外国人が多いと①で説明しましたが、担当者の名前を見る限り(実名であることが前提ですが)、韓国人やベトナム人などアジアの人が多いのです。アジアであれば日本への旅行経験がある方も多いので多少なりとも日本語が話せるでしょうし、欧米よりも賃金が安いはずなので、そうした人たちを非正規雇用していると考えれば、①の現象にも納得がゆきます。また、その人たちは日本語が少し話せるだけでカスタマーサポートの経験はほとんど無いので、②のようなルーチンワークに陥るのも当然です。
新たなプラットフォームの登場でWeb広告が変わるか
一般的なIT製品だと、カスタマーサポートの対応がひどいと顧客の不満がたまるため、解約率が上がります。BtoCだと、既存顧客を軽視した結果、消費者が不買運動が起こすことがあります。その結果、企業側が態度を改めることもあるのですが、Web広告ではこうした動きは難しそうです。
IT製品やBtoCの場合は選択肢がたくさんあるため、Aを買わずにBを買うこともできるのですが、Web広告だとGoogleやMetaなど特定のプラットフォームが寡占しているため、そこを解約すると他の選択肢がほとんど無いからです。逆に、顧客が解約しづらいからこそ、Web広告は既存顧客軽視の態度をとれるともいえます。最近では「Web広告を使わずにSEOで」「これからはYouTube」なんてアピールする企業もいますが、Googleの検索エンジンや動画サイトに頼っている時点で同じことであり、Googleの既存顧客軽視が強まるだけでしょう。
こうした一部のプラットフォームの寡占を崩すには、別のプラットフォームの登場(Microsoft、TikTok、LINE、SmartNewsなど)か、特定のプラットフォームに依存しない集客手段(ブログ、インフルエンサー、オンラインサロンなど)が強くなるしかないでしょう。寡占が強くなりすぎないようにしたいものですね。
私のマーケティングの仕事については下記の記事をご覧ください。
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