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オーボエを職人(マイスター)に修理してもらった話

久しぶりのnote更新、普段は歴史など人文系の記事を投稿しているが、今回はただの日記である。しかし、とても印象に残る出来事だったので書き留めておこうと思った。

オーボエの音が出ない…

X(旧Twitter)のプロフィールには記載しているが、実はオーボエを中学1年生の頃から続けており今年で12年目になる。中高の部活でオケに入っていた時は吹く機会も多かったし、保証期間内だったので、季節の変わり目などこまめに楽器をメンテナンスに出していた。大学に入って音楽系のサークルに所属したものの、昔よりは演奏の機会が減ってしまったこと、保証期間が切れてメンテナンス費用が高くなってしまったこともあって、気づけば以前メンテナンスに出したのがいつだか分からないくらい放置してしまっていた。
あまりにもメンテナンスを放置し調子の狂った楽器に慣れてしまったことで、自分のオーボエの音のピッチの悪さや音色の汚さが楽器の故障に由来するものだと気づかなかった(もちろん上手くないのもあるが…)。

冬は乾燥して管体割れが怖いし今年こそはメンテナンスに出そうと思っていた。出す前に少し吹いておこうと思い吹いたら音が全然出ない。High A以上が異常にピッチが高くなってしまう上に、息が入らないのだ。リードが悪いのかもしれないと思い変えてみたが、どうやら楽器の調子が悪い。もしかして自分が想像しているより楽器の調子が悪いのでは?となり、急いで楽器屋にメールしたのである。

都内のダブルリード楽器専門店

東京都内には新宿の日本ダブルリード株式会社(JDR)や渋谷のノナカ・ダブルリードギャラリーなどの有名なダブルリード楽器専門店があるが、この2店舗は訪れる人が多く、簡単な全体調整でも保証期間外だと1ヶ月以上待たされる場合がある。そこでせっかちな私が行ったのは、JDRの近くにある株式会社ルボアだ。

電話やメールでの来店予約は必要だが、基本的に即日対応・当日返却可能のダブルリード楽器専門店である。完成リードや備品、中古楽器やリード製作工具も販売しており、修理以外の目的でも来店する価値がある楽器屋だと思う。リードはショートスクレープの2種類のみだが、個人的にはとても吹きやすい。自分でリードを削る際に参考にした。

そして何より素晴らしいのは、店主の萩森弥郁夫(みかお)さんである。

ルボアの魅力

ルボアは上記の店舗とは違って「工房」と言うのが相応しいかもしれない。店舗は大きくなく、入ると試奏スペースの隣に修理作業スペースがあり、修理中のオーボエやファゴットが置かれている。こじんまりとはしているが、修理をしてくださる職人さんたちととても近い距離で話せる温かい空間だ。

修理の際は事前に電話やメールで、

・どういった不具合があるか
・リードのタイプ(アメリカンやフレンチやジャーマンやインターナショナルなど)
・楽器の悩み

などを伝えた上で納期と見積もりを出してもらい、実際に来店して直接楽器を見てもらい、さらに不具合が見つかれば対応してもらうという形である。
簡単な全体調整であればその日のうちに基本的に受け取ることができ、7000円前後で調整してもらえて非常に良心的だ。それでもサービスの質は非常に高く、誇張ではなく本当に楽器が別物みたいに綺麗な音を出せるようになる。
そして短時間で済む調整の場合店舗内で待つことができるのだが(コロナ禍以降の対応は要確認)、店主の萩森さんから楽器や音楽の話を聞くことができるし、楽器や演奏の悩みの相談に乗ってもらったり、逐一試奏して好みの吹奏感に微調整してもらうこともできる。自分の楽器が修理されているところを見られるのも魅力的だ。

店主の萩森さんは、東京音楽大学でオーボエを専攻したのち、様々なダブルリード楽器メーカーや工房でリペアの研鑽を積まれ、東京都優秀技術者(マイスター)の資格を持つ、生粋の職人である。お人柄も素晴らしく、温厚で優しくて素敵な方だ。後進の育成もされており、同じくリペアマンの岡田さんもとても優しい方である。

修理された楽器を試奏してみた

いざ修理された楽器を吹いてみたところ、何が起きたのか最初全く分からなかった。吹奏感が何もかも違ったのだ。

修理箇所が記された伝票

思ったよりも楽器がガタついていてショックだったことはさておき、最初に記していた高音域がとても楽かつ正しい音程で出せるようになっていた。今までは無理やり吹いてオーバーフロー気味かつ金切り声のような音だったのだが、調整で少ない息の量で丸い音が出せるようになった。
また、私はアメリカンリードで吹いたことは無いはずなのだが、なぜか楽器がアメリカン仕様になっていたらしく、それを現在の私の吹き方であるヨーロピアンにしてもらったことで、中音域のFのぶら下がりもなくなった。キーオイルもさしてもらい、運指も非常にスムーズに。これで7700円である。

最近は依頼が多く、オーバーホールが必要な修理は断らざるを得ないようだが、季節の変わり目や大事な本番前の調整の際にはぜひ行ってみてほしい。


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