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20050821 ボウフラと重力

 人間以外に重力を感じる生き物はいるだろうか$${^{*1}}$$。多くの脊椎動物には体の平衡を感じ取る器官を持っているらしい。平衡を知るための器官のしくみ$${^{*2}}$$は、端におもりがついた構造体が重力や加速度でしなる$${^{*3}}$$のを感覚細胞で感知するようになっている。これは工業製品に使われている加速度センサ$${^{*4}}$$も同じである。

 ボウフラ$${^{*5}}$$は重力を感じることができるようだ。ある雑誌$${^{*6}}$$にそんな話が載っていた。

 水溜まりに発生したボウフラは普段は水面にしっぽをつけて呼吸$${^{*7}}$$をしている。近寄ったり振動を与えるとボウフラは危険だと思って水底に向かって泳ぎ、隠れようとする。

 この行動の根源は二つの性質によるとあった。一つは光から遠ざかろうとする性質、あと一つは地面に向かおうとする性質。前者は負の走光性、後者は正の走地性という。光から遠ざかろうとするので「負」という。光に向かうのであれば「正」になる。地面に向かうから正の走地性、地面と反対方向に向かうなら負の走地性となる。光の反対は「暗」「闇」で、地の反対は「天」だから負の走光性は「走暗性」、正の走地性は「走天性」といってもいいような気もする。

 ボウフラのこの二つの性質は身を守るための二重保障だという。自然界では太陽の光は常に上から降り注ぐので、何かあったら光の反対方向に行けば隠れることができる。太陽は昼間しか出ていないから夜は正の走地性によって地面に向かって泳いでいく。これで一日中安心だということになる。

 ところが太陽は日中しか出ていないが、重力は一日中ある。保障は「正の走地性」だけで十分ではないだろうか。何故、光に対して反応する必要があるのだろうか。本当に光に反応しているのだろうか。ボウフラを透明なガラス容器に入れて周囲を暗くして容器の底から光を当てる。容器を叩いて脅かすとボウフラは光が下から来ているので上下どっちに逃げて良いのか解らなくなってしまうらしい。

 蚊には眼$${^{*8}}$$があるので光に反応するのはわかるが、あんな小さな体で重力を感じる器官を持つことができるのだろうか。空気や水には粘り気があるので極小さな構造体のしなりで重力を感じることは不可能になってくるだろう。空気や水のちょっとした動きで構造体が動いてしまい重力だけを選別することができない。

 となると走地性とは一体何か。微小動物は重力を感じているとはとても思えない$${^{*9}}$$。それなのに何故、ボウフラは夜中でも地面に向かうことができるのか。

*1 20050820 重力を感じる
*2 Terminologia Anatomica(TA)に基づく解剖学
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*4 FUJI CERAMICS CORPORATION
*5 蚊の発生を防ぎましょう
*6 20000810 波
*7 ガイチューバスターズWEB ~滋賀環境衛生株式会社~
*8 maxresdefault.jpg
*9 20000908 磁性細菌

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