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20020625 片仮名表記

 常用漢字表$${^{*1}}$$にない漢字は、公文書や新聞では仮名に置き換えて表記される。一般的に置き換えで使用される仮名は平仮名である。片仮名をわざわざ使う例は殆ど見かけない。変体仮名$${^{*2}}$$となると皆無である。逆に変体仮名を使うと読めなくなる。これでは仮名に置き換える意味がなくなる。

 現代の国語では片仮名は外来語を表記する$${^{*3}}$$のによく用いられる。外来語を平仮名で書くと違和感があり、特殊な効果を狙った表現と認識してしまうのが普通である。「コンピュータ」を「こんぴゅーた」と表記すれば何か漫画の主人公の名前か、幼児用の書籍に出てくる表現かと思ってしまう。

 元々和語や漢語をわざわざ片仮名で書くと強調した表現と取られ易くなる。終戦直後$${^{*4}}$$ぐらいまでは片仮名が一般的に国語表記に使われていたが、現代では特殊な表記方法として受けとめられてしまう。

 先日、元素名の日本語表記$${^{*5}}$$について書いた。外来語の元素名は片仮名を使う。漢語の元素は漢字を使う。その中には常用漢字表にない漢字を使った元素名は仮名に書き換える場合がある。

 燐、硼素、珪素、砒素、沃素、弗素は常用漢字にないので「リン」「ホウ素」「ケイ素」「ヒ素」「ヨウ素」「フッ素」と表記されることが多い。

 片仮名は外来語を表記するのに用いるのが普通なので、本来ならば外来語が語源である「弗素」と「沃素」だけに片仮名使用が適用され「フッ素」「ヨウ素」となり、他は漢語なので「りん」「ほう素」「けい素」「ひ素」という表現が適当であろう。実際「りん$${^{*6}}$$」「ほう素$${^{*7}}$$」「けい素$${^{*8}}$$」「ひ素$${^{*9}}$$」とも表記される。同様に沃素と弗素とも外来語としてではなく、常用漢字以外の漢字の書き換えとして「よう素$${^{*10}}$$」「ふっ素$${^{*11}}$$」と表現することもある。

 化合物名や元素名の大半が外来語なので片仮名で表記される。従って常用漢字以外の漢字の書き換えは、統一感を狙って片仮名を使うようになったのかもしれない。学会で常用漢字表など気にせずに常に漢字で表記するようにすれば表記の統一が出来てこのページ$${^{*12}}$$のようにいちいち悩まなくても済んだだろう。

*1 Kanjibukuro
*2 20010418 BVLGARI(2)
*3 文章の書き方・ととのえ方
*4 学制百二十年史: 第三編 教育・学術・文化・スポーツの進展と新たな展開: 第十章 文化: 第四節 国語施策の改善
*5 20020623 窒素
*6 職場のあんぜんサイト:化学物質: りん酸
*7 ほう素とは何? Weblio辞書
*8 けい素鉄・快削けい素鉄 | 軟磁性材料ラインナップ | 大同特殊鋼の軟磁性材料 | 製品情報 | 大同特殊鋼
*9 ひ素(As)
*10 よう素化合物 | 素材研究 | 素材研究 | 有機合成・素材研究 | 関東化学株式会社
*11 ふっ素のふふふ | ふっ素樹脂の中興化成工業株式会社
*12 第3回 「亜ヒ酸中毒」を許していいのか?

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