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20030603 ペイオフ

 「ペイオフ制度$${^{*1}}$$」というのがある。日本語で言うと「預金保険制度$${^{*2}}$$」のことで、預金者の預金の保護を目的に作られている制度である。

 この制度は預金「全額」保護ではなく、あくまで預金保護である。この考え方は預金保険機構$${^{*3}}$$が1971年に発足した時から変わっていない$${^{*4}}$$ようだ。

 生半可な英語の知識から「ペイオフpayoff」の「off」の語感$${^{*5}}$$で、金融機関が破綻した時に預金が全額払い戻されないことを意味すると勝手に思っていたが、調べてみるとそうではないようだ。payoff$${^{*6}}$$とは「精算」とか「賃金の全額支払い$${^{*7}}$$」という意味である。これがどうして預金「一部」保護の意味に使われるのだろうか。

 預金「保護」制度ではなく、預金「保険」制度という言葉があやしい。金融機関が破綻して預金者に預金を払い戻しできない事態が発生した時のために金融機関が保険を掛けて備えている銀行側の制度であって、預金者の預金を保護して守ることを念頭に名付けられた預金者側の制度ではないようだ。「ペイオフ」とは「預金保険機構から保険の範囲内で支払われる」という部分を指してそう言っているのだろう。

 この制度が発足してから約25年後、実際に金融機関の破綻が起こった$${^{*8}}$$。この時、預金保険機構からの金融機関への資金援助のみで預金者に預金が直接支払われる事態には至らなかったが、預金者の動揺を抑えるために特別措置として96年から5年間は預金保険機構から預金を全額払い戻すような仕組みにした。結局、それ以降も預金保険機構が預金分を直接支払う局面発生していない。

 「ペイオフ解禁$${^{*9}}$$」とはこの96年からの特別措置を解除するという意味になる。5年間の全額預金払い戻しも預金保険制度すなわちペイオフ制度の一環であるので英語の「payoff」の本来の意味からすれば「ペイオフ解禁」は変な言葉のような気がする。

*1 預金保険制度(いわゆるペイオフ制度)とは
*2 預金保険制度の解説-制度の概要及びQ&A-
*3 預金保護機構
*4 「預金保険よもやま話」
*5 Mug Web Magazine 「松本おじさんのトピック解説」 ペイオフについて勉強しよう
*6 pay・off - goo 辞書
*7 payoff. The American Heritage® Dictionary of the English Language: Fourth Edition. 2000.
*8 バナナ円 預金保険制度とは
*9 ペイオフ解禁への対応について

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