見出し画像

20030920 期待値

 小学校か中学の算数か数学で期待値$${^{*1}}$$というのを習う。その時に習う期待値とは、その事象が起こる確率とその事象によって得られる結果とを掛け合わせて合計した結果で、くじで言えばそのくじを引くと、平均してどれくらいの景品が期待できるかを表したものという説明がなされる。

 この期待値の考え方を実生活に活用しようとする人は沢山いる。例えば、博打をやるなら期待値が高い博打が良いだとか、宝くじの期待値は思ったより低い$${^{*2}}$$ので買わないと考える。期待値を計算してから抽選などに参加して、結果が全くふるわなくても、自分は数理的な考察によって参加を決定したのだから問題ないと思い込んでいる場合もある。

 期待値は抽選などに参加する側にとって全く意味のない概念である。300円で購入する宝くじの期待値が150円程度$${^{*3}}$$ということが判っても何にもならない。ある宝くじの期待値が250円で、同じ値段の別の宝くじの期待値は150円ということが判っても、どちらを買うかという判断には使えない。当たらなければ投資した資金はどちらも無になるからである。

 宝くじを買う人には当たるかはずれるかしかない。しかも買う人は一等を狙って買うのであって、末等や三等ぐらいを狙わない。そもそもくじは何等を狙うと言うことが出来ない。買う人の全ての「期待」は一等賞なのである。平均化された賞金の値など議論する価値は全くない。にもかかわらず期待値を計算して何かもっともらしい理由を付けるのは何故だろう。

 これは小学校や中学校での数学の出題のし方の所為だ。「一等賞金100万円が1本含まれるくじの期待値は」という計算結果自体に何ら意味を持たない問題を解かされるからだろう。「一等賞金100万円が1本含まれるくじを発売する場合、いくら以上で売れば利益が出るか」とすれば、期待値の本来の意味が出てくる。

 つまり期待値は抽選に参加する人のための考え方ではなく、抽選を主催する側の考え方なのである。それを学校の授業で、考えるべき立場$${^{*4}}$$を勘違いさせてしまっているのだ。

*1 期待値 expectation
*2 期待値いろいろ
*3 宝くじの必勝法
*4 20010428 確率(2)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?