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20051109 大気を温めるもの(2)

 大気を暖めるのは地表$${^{*1}}$$であるが、地表から出てくる赤外線によって温められるのではない。空気の大部分を占める窒素と酸素とは赤外線を吸収しない$${^{*2}}$$からである。大気中に含まれる気体のうち、赤外線を吸収するのは0.04%を占める二酸化炭素や1%以下の水蒸気などである。これらが地表から放出される赤外線を吸収して大気全体を温めているのだろうか。

 地表は昼の間、晴れていれば太陽の光によって温められる。温められると、大抵の物は温度があれば赤外線$${^{*3}}$$を出すので、地表からもその温度に応じた赤外線が放出される。この赤外線は最終的には宇宙に放出される。地表と宇宙との間には大気があり、その大気の中には赤外線を吸収することができる気体が含まれているので、そこで赤外線が吸収されて大気が温められる。一方、大気と地表とが接触することによって地表の熱が大気に伝わる。これは窒素だろうが酸素だろうが二酸化炭素だろうが関係ない。

 赤外線は大気の層全体で吸収するが、赤外線を吸収するのは大気中の1%も満たない大気成分のみである。地表からは、大気成分100%が熱伝導によって温められるが、これは地表と大気とが接触している部分だけの作用なので、大気全体が温まるには対流や熱の伝導が必要である。これは地球規模になると時間が掛かる。

 赤外線の吸収は一瞬だろう。時間は掛からないはずだ。二酸化炭素や水蒸気は大気中に万遍なく散らばっているから、赤外線で温められた二酸化炭素や水蒸気は近くにいる窒素や酸素を温める。二酸化炭素や水蒸気のすぐ近くに窒素や酸素があるからそれほど時間は掛からない。これは地球規模とは関係ない。瓶の中の空気でも大気全体でも赤外線を吸収することができる気体の分量の割合が同じならば、赤外線を吸収して全体が温まる時間は同じ筈である。ということは照射される赤外線の量に大気の温度は敏感に反応するということにもなる。

 実際はどうか。一日のうち日射量が最大になるのは午後十二時頃だが、気温は二時頃に最高になる。これは地面が温められてから空気が熱伝導によって暖められる$${^{*4}}$$から、と説明される。一方、地面の温度が一番高くなるのは一時頃$${^{*5}}$$なので、出てくる赤外線の量はこの時一番多くなる。赤外線による空気の温度上昇はこの時一番大きくなる。瓶の中の空気の温度が上昇するのに一時間も掛かるというのは考えにくい。こうやって考えると空気の赤外線吸収の影響がどれくらいなのかがよく判らなくなってくるが、言えるのは少なくとも空気の温度上昇の要因は赤外線吸収ではなさそうであるということである。

 そうなると地球に降り注ぐ太陽からのエネルギーと地球から放出される赤外線エネルギーとの収支を描いたこの絵$${^{*6}}$$が少しあやしくなってくる。太陽からのエネルギーは342$${W/m^2}$$で、地球からは雲と地表からの反射107$${W/m^2}$$と赤外線放射235$${W/m^2}$$とで収支は合っている。大気と地表との間で350$${W/m^2}$$程度のやり取りがあると書いてある。これはこれでいい。地表が温められ大気が温められる。逆に大気も地表を温める。ところがその説明として「Surface Radiation」「Back Radiation」とある。「Radiation」では「放射」になってしまう。前述のように大気が温まる要因が赤外線でないとすると、地面と空気とが接触することによって起こる「熱の伝導」である。物と物とが接触して熱が伝わることは「Conduction$${^{*7}}$$」というので、これでは説明が少しおかしい。何か意図があるのだろうか。それとも私の勘違いだろうか。

*1 20051108 大気を温めるもの
*2 2 二原子分子の振動
*3 温度について(Temperature)
*4 気象・天気のはなし 気温
*5 理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-057/139page
*6 Earth's Annual Global Mean Energy Budget(Kiehl and Trenberth, 1997 )
*7 THREE-MODES-BIG

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