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20070626 やまなし

 宮沢賢治$${^{*1}}$$の作品に「やまなし$${^{*2}}$$」というのがある。この作品を初めて読んだのは、小学六年生の頃である。国語の教科書に掲載されていた。教科書の挿絵には少し薄い紺色を背景に黒い蟹や丸い果物が描かれていたような気がする。何となく藤城清治$${^{*3}}$$の絵を思い出す。「やまなし」はそれ以来読んだことがない。

 「クラムボン」という正体不明のものが登場する。確か教科書の注釈ではアメンボ$${^{*4}}$$と解説してあったので、今までアメンボのことだ$${^{*5}}$$と信じていたが、実はよく判っていないらしい。そのことは大した問題ではない。最近知って驚いたのはその読み方である。

 「くらんぼん」と読むらしい。「くらむぼん」とそのまま読んでいた。本当に「くらんぼん」なのだろうか。その根拠は「ランプ」を「ラムプ」と宮沢賢治は作品の中で表記しているかららしい。根拠がこれだけでは弱すぎる。「ラムプ」は宮沢賢治独特の表記ではなく、かっては普通に「ラムプ」と 表記した$${^{*6}}$$。だから「クラムボン」を「くらんぼん」と読む根拠には一切ならない。

 そもそも日本語で「らむ」と表記して「らん」と読むのは推量の助動詞の「らむ(~しているのだろう)」ぐらいしか思い付かない。「霍乱$${^{*7}}$$」「団欒$${^{*8}}$$」「欄間$${^{*9}}$$」「乱暴$${^{*10}}$$」など、全て歴史的仮名遣いでも「らん」と書く。

 となると宮沢の造語の「クラムボン」をわざわざ「くらんぼん」と読む必要はないのではないか。造語ならば「くらむぼん」と仮名通りに読むのが道理だろう。

 もう一つ。「やまなし」を地名の「山梨」と同じ発音で読んでいた。これも違うらしい。「山梨県$${^{*11}}$$」「山梨市$${^{*12}}$$」「山梨岡神社$${^{*13}}$$」の場合の「やまなし$${^{*14}}$$」と同じように発音するようだ。

*1 20000410 ヴとバャ
*2 やまなし
*3 藤城清治 影絵の世界
*4 アメンボ
*5 宮沢賢治/やまなし クラムボンの正体
*6 正岡子規 ラムプの影
*7 かくらん くわく― 0 2 【▼霍乱】 - goo 辞書
*8 20050806 団らん
*9 大阪欄間
*10 みなみらんぼう プロフィール|講演依頼・講師派遣のシステムブレーン
*11 山梨県-県庁トップページ
*12 山梨市 市民情報トップページ
*13 20021022 きの神
*14 宮沢賢治「やまなし」の学習

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