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20051118 へちまの語源

 へちまの語源は何か。「へちま」は漢字で「糸瓜」と書く。糸瓜を普通に読めば「しか・いとうり」だ。「へちま」と言う読みは熟字訓$${^{*1}}$$である。「大和」のようにどの漢字がどう読むかは決まっていない。熟語全体で読み仮名が当てられている。

 「糸瓜」というのは実の中に海綿状の筋$${^{*2}}$$があり、それが糸のようだからとも言われている。

 糸と言っても一筋の糸を指しているのではないだろう。おそらく束ねた生糸$${^{*3}}$$を指しているのだと思われる。旧字体の糸も「絲」も糸の束が二つ並んだ様子$${^{*4}}$$を表している。へちまが二つ並んでぶら下がっている様はまさに「絲瓜$${^{*5}}$$」だ。

 さて、へちまの語源である。「いとうり」の最初の「い」が略されて「とうり」と呼ばれるようになる。この「とうり」の「と」はいろは歌$${^{*6}}$$で言えば「へ」と「ち」との間にあるので「へちま」と洒落た。これが語源である、と言われている。大槻文彦$${^{*7}}$$は言海$${^{*8}}$$の中でこの語源は疑わしいと書いていた。いろは歌の洒落ではなく外来語ではないかとしている。

 考えてみれば「と」の一文字だけから「『へ』と『ち』との間」というのは、ちと強引の様な気がする。せめて二文字は欲しい。例えばもともとは「とちうり」と呼ばれていて「とち」は伊呂波の「へ」と「り」との間だから「へりま」ならば成る程と思う。恐妻家が自分の妻のことを「山の神」という。これもいろは歌で「うゐのおくやま」が語源という。妻を意味する「奥」は「山」の上だから「山の上(かみ)」となった。これも語源としては疑わしいが、洒落としてはへちまの数段上である。「山の神」は山を守る神様で、女神の場合は山姫(やまひめ)である。本来ならば「山姫」となるが、自分の女房を恐れて「姫」というのも変な話なので「山の神」にしたのだろうか。因みに山姫はアケビの別称らしい。開いた実$${^{*9}}$$が女性器を彷彿させるからだろうか。

 一文字では何でもできてしまうので面白味に欠ける。逆ではないのか。外来語なのか何か分からないが、とにかく糸瓜が「へちま」と呼ばれるようになる。洒落として、誰かが語源不詳の「へちま」の由来として「いろは歌の『へ』と『ち』との間」というのを作る。これが民間語源説として定着した。この程度ではないか。

*1 鍛冶橋
*2 ヘチマ P3
*3 埼玉県/生産振興課 特産 埼玉ブランド繭「いろどり」のページ
*4 shi.gif
*5 hechima5.jpeg ヘチマ(糸瓜)
*6 20001025 あさきゆめみし
*7 大槻文彦年譜
*8 福岡大学 図書館報No.90 4/8ページ目
*9 筑波山の四季

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