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20070509 ビートルズの犬笛(2)

 ビートルズの「A day in the life」に録音されている犬笛について$${^{*1}}$$読者の方から指摘を頂いた。

 「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band$${^{*2}}$$」というアルバムの一番最後に収録されている。犬笛は超音波なので人間の耳には殆ど聞こえないと言われている。人間が聞こえる音の周波数は大体20kHzまで$${^{*3}}$$で、それ以上になると聞こえない。だから超音波と呼ばれる。周波数というのは波の数のこと$${^{*4}}$$で、音の波の山と谷とが一秒に二万個あると20kHzと言うことになる。その数が多いほど音が高く聞こえる。

 実際の犬笛$${^{*5}}$$を聞いたことがないのでどんな風になるのか判らない。全く聞こえないのか、それともかすかに聞こえるのか。犬笛の音$${^{*6}}$$を見つけた。聞いてみると時代劇の捕り物に出てくる呼び子のような音だ。犬笛は聞こえないはずだが、聞こえる。この笛の説明には音の高さが調整できるとある。それに調整できる範囲は5.4kHzから12.8kHzで、十分人間の聞こえる範囲である。だから聞こえるのだろうが、犬笛は本当に超音波なのか判らなくなってきた。

 レコード盤に入っているA day in the lifeの最後の犬笛は殆ど聞こえない。「スー」というか「ツー」と言う、か細い音であった。CDの方は「ピー」と甲高い音がになっている。指摘を頂いた読者の方によると、この原因はデジタル録音特有の現象ではないか、ということである。超音波が擬似的な信号として可聴音に変換される現象かも知れないのである。エリアジング$${^{*7}}$$と言う。ローマ字で「aliasing」と書く。「alias」は別名とか偽名という意味である。Macintoshではよく使う言葉$${^{*8}}$$で、ファイルの分身機能を指す。Windowsではこれを「ショートカット$${^{*9}}$$」と呼ぶ。

 アナログ信号からデジタル信号に変換する時、一定間隔の時間で信号の電圧を読み取る$${^{*10}}$$。その読み取り間隔$${^{*11}}$$が音の波の間隔よりも十分短ければ問題がないが、長いと本来の信号と全く違う信号を作り出してしまう$${^{*12}}$$。これを防ぐために予め高い音はフィルタで除去$${^{*13}}$$してからデジタル信号に変換するらしい。これをやらずに犬笛の部分をデジタル化すれば聞こえないはずの超音波が可聴音として変換される可能性がある。最近はわざわざ超音波が記録されたCDが発売されている$${^{*14}}$$。これはこういった擬似的な信号が発生する周波数を高くすることによって可聴音に雑音が紛れ込む可能性を低くしている$${^{*15}}$$らしい。

 それにしても、何故わざわざ聞こえる音としてCDに入れたのだろうか。それともフィルタが上手く働かなかったのだろうか。何となくだが、意図的に入れたのではなくフィルタの所為のような気がする。マスターテープ$${^{*16}}$$にはかなり大きな音で犬笛が入ってフィルタで取りきれなかったのではないか。出来上がりを聞いて「これも又良し」ということでそのまま発売したのかもしれない。

*1 20010114 ビートルズの犬笛
*2 51SKN7EYK4L._SS500_.jpg
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*6 おすすめの犬笛7選 音の周波数が変わる犬笛や吹き方、効果も紹介 | イエコレクション iecolle | インテリア、雑貨情報が満載のWEBメディア
*7 電気/電子用語の定義:Aliasing - マキシム/ダラス
*8 ASCII.jp - アスキー デジタル用語辞典 - エイリアス
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