【映画】プリズナーズ

「囚われた者たち」という題のこの映画。
誰が一体、何に囚われているのか、宗教も軸にありながら描かれる。

平穏な田舎町での感謝祭の日、ふたりの少女が失踪する。手がかりは少なく、警察の捜査も進展しない。苛つく少女の父親は証拠不十分で釈放された第一容疑者の証言から、彼が誘拐犯だと確信。自らの手で娘を助け出そうと、一線を超えていく。

サスペンスホラーでもあるこの映画だが、私は宗教観を強く感じた。

冒頭では、息子が鹿を仕留めるときに祝詞(?)を唱えるシーンがあり、他にも様々な要素などから一家がキリスト教徒であることがわかる。
特に父のケラーは十字架を常に身に着けた、敬虔なキリスト教徒だ。

事件を調査する刑事ロキの名は北欧神話に出てくるし、レストランで干支の話をしたり身体に宗教的な入れ墨をしていることから、少なくともキリスト教徒ではなさそうだ。

そして最後に犯人のホリー。
彼女は元は敬虔なキリスト教徒だったが、息子が癌により亡くなったことから信仰心を失い、夫と共に子どもの誘拐を繰り返している。「子どもをさらうのは神に戦いを挑むこと」と言っていることからも、それが彼女の生きる意味になってしまっているのだろう。

つまり、この映画は
①神を信じる父
②キリスト教徒ではない刑事
③神を信じない母
の3種類の人間が登場するのだ。

①の父は、神を信じるあまり、無罪のアレックスを犯人だと信じを拷問してしまう。だがこのアレックスは、実はホリーに誘拐された被害者だったのだ。

③のホリーは神を信じなくなったことで、誘拐を繰り返す。夫も共犯だったようだが罪に耐えかねて神父に相談し、地下に閉じ込められミイラ化していた。夫が好きだったという蛇も、キリスト教的にはあまりよろしくないシンボルだ。
迷路や笛など他にも宗教を映すアイテムはあるのだろうが、キリスト教に詳しくないのでよくわからない。

結局、事件を解決に導いたのは②の刑事だった。
このことから、これは宗教や自分の考えに囚われた者たちの映画だと言える。

真犯人だと思われたボブもホリーに攫われた被害者であり、その経験からか蛇をトランクケースに閉じ込め、豚の血や子供服、マネキンなどを使い誘拐の模倣をしていた。
恐らく、被害者の自分ではなく加害者になることで恐怖や屈辱感を忘れようとしたのではないだろうか。

この映画の真の被害者はふたりの女の子ではなく、それぞれ囚われた①と③に標的にされたアレックスなのかもしれない。





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