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引退


サッカー選手の小野伸二さんが引退を発表した。
僕と同い年なので今年44歳のはずだ。

サラリーマンをやっていた頃、僕は「40で引退する」などと言っていた。
それまでに何を成すか、何を得るかは別として、40過ぎのオッサンが業界でデカい顔をしてるのを見て「ああはなりなくたいものだな」「若い人が新しい世界を作ればいいじゃないか」と思ったわけである。

とはいえ、流れで30代で起業して家で1人で働くことになり、気づけば僕も44歳である。
ずいぶんダラダラと続けてしまった。

この先どうするかと考えているが、なんせ金がない。新しいことにチャレンジするにも、先行投資が必要なことにはチャレンジ出来ない環境がある(家の方針で借金は禁じられているので融資などもダメ)

引退できる人はうらやましい。充分にやりきって、やめても困らないくらいの金はあって、次のチャレンジも出来る。

例えば僕が仕事でお世話になっている「作曲家」であるとか、そういう方ならそれを生涯の仕事にできるというか、「上がり」がない世界でもあるので、よほど絶望したりしない限り断筆はしないかもしれない。

僕はそういう表現者のような仕事をしていない。右から左にモノを動かしているだけだ。もちろんいくばくかの信念みたいなものはあるのだけれど、若い世代に道を譲りたいという気持ちもある。なんせ引退宣言の40歳から4年も過ぎてしまっているのだ。こりゃアカン、というわけである。

しかし僕が働いている吹奏楽系というかクラシック音楽系の業界というのはなかなかそんなに儲かるわけでもないし、音楽家になることを除いて、若い人が参入するのは心理的にもハードルが高いかもしれない。
それこそオッサンたちが鼻息荒く頑張っている世界なので、なかなかスキマがない。

仮に参入したとして、たとえば吹奏楽であれば吹奏楽コンクールを中心にビジネスを設計しない限りは、仕事も思ったようにうまく軌道には乗らず、信念を曲げることを余儀なくされるだろう。

実際に、若くして起業した次世代の星は、音信不通の行方不明になってしまった。おそらく自身が潰れてしまったのだ。

若い作曲家は若いというだけでもてはやされることもあるのに、実業家だとそうはいかない。青年実業家という言葉はあるし縁もゆかりもない人がこの業界で何か革新的なことをやったら成功する可能性もなくはないが、僕はこの業界に対しては「変化を嫌う傾向にある業界」だという印象があるので、それもまた難しいのかなと思ったりする。

別に僕がいなくても世界は回るのでやめてしまってもいいのだけれど、家の事情などもあって外で働くのは難しい。何か新しい金になることを始めるしかないわけなのだけど、やりたいことがとんと思いつかない。

まったく困ったものだなあ、というわけである。

父親から誕生日のギフトに腕時計が送られてきた。この記事のアイキャッチになっている。
彼から腕時計をもらうのは久しぶりな気がする。

父はがんの闘病中で、いまのところまだ投薬のクールらしいので合う薬があるのかないのかわからない。詳しいことは僕も聞いていない。
手術はできない段階だか状況だかだったので、手術はしていない。合う薬がなければもうすぐ彼の時間は止まってしまうのかもしれない。

腕時計に彼がなんらかの思いを込めたかどうかは知らないが、とりあえず「歩みを止めるなかれ」みたいな意味があると解釈してみる。

前に進む、と言っても進み方は色々だ。

今の仕事を続けるのか、それとも引退して新しい道に進むのか。どちらにしても歩みは止まっていない。

作家さんから作品を預かって出版している事業があるので、自分の気分で「わしはもうやめるんじゃい」とある日バッサリやめるわけにもいかない。引退にも根回しが必要というわけだ。

今の事業のどれかを縮小して別の仕事を始めるか、業界から足を洗う形で引退するか、まあそのどちらかだろうな、という感覚はある。

引退の場合は上述の理由もあるので次を考えて、出来れば先に少しやってみて、いけそうなら引退するという方向が望ましい。

とにかく引退というのは思っているよりも難しいのです。

父がサラリーマンをやめてコンサルタントとして独立開業したのはたぶん60歳を過ぎてからだと思う。

そう考えると、もう少し続けてみてもいいのかなと思うし、「もっと若い頃に上手くいっていれば」という父の言葉を思い返すに、引退(ある意味自分への損切りである)もするならするで早い方がいいのかもしれない。

父のようにスポーツ用品会社の営業を何十年続けた後にスポーツショップ専門コンサルタントになるというようなやり方もある。そういう意味では彼はまだ業界から引退していないし、死ぬまで引退しない。

そもそも「40で引退」という昔の僕のこだわりにはなんのロジックもないわけで、「若気の至り」と笑って済ませてもいいのかもしれない。

とはいえ若い世代からガツガツした人が出てこないのはちょっと気になるところです。

もしかしたら引退どうこうよりも、僕が飽きっぽいので、新しい刺激を求めているだけかもしれない。

とりあえず、子供の頃に父親に言われた教えを守り、「下を向かずに前見て歩け」のマインドは大事にしたいと思う。

さあ、どの道を行くか。

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