「君たちはどう生きるか」

この映画を観終わった私は、もやもやとした得体のしれない気持ちにさせられていた。

そのときは、感想を書ける気がしないと思った。

だけど、少し経って、感想を書きたいと思い始めていた。おそらく宮崎駿の人生の集大成としてこの作品を公開したことに対して、私は言語化できない感想を無理やり言語化して、下手で歪んで間違っていて全然違うっていうそんな感想を、書きたいと思った。

これから、感想を書いていく。具体的なネタバレのない抽象的な感想だけど、それでも感想を読むことは先入観に繋がる。

この作品は事前情報を一切見ずに鑑賞できる稀有な存在で、そうすることに一定の意味があると思わせられるものだったから、絶対にそうするべきとは言わないけれど、そうしてみてもいいんじゃないかと私は思う。

もちろん、どちらでもいいのだけれど、読んでしまえばまっさらな状態では楽しめなくなる。私はなにも知らないまま見てよかったと思ったけれど、それは人によってはどうでもいいことかもしれない。

選択は、自分の意思でするものだ。


感想文

何を見せられているんだろうと思った。

思いつきで書いたような脈絡のないストーリー。背景には様々な設定がありそうだし、ある程度の世界設定については想像できなくもない。だけど、それらは全く語られないまま進むし、最後まで見ても結局なんだかわからないことのほうが多い。物語上の必然性がないものばかり。まるで寝ているときに見る夢のよう。

それは宮崎駿自身も自覚していると思う。だけどそれは、やりたいことをやった結果なのではないかとも思う。

描きたいものを詰め込めば、作品というのは必然的にそうなる。

例えるなら、好きなものばかりを詰め込んだ夢いっぱいのお弁当。ご飯にふりかけ、タコさんウインナーとだし巻き卵は定番だよね。あとはお寿司も食べたいし、お肉も入れちゃおう。それから半熟卵と冷奴。最後にショートケーキとプリンとクッキー、それからアイスクリームとかき氷も食べたいな。そんなお弁当。そこに入っているのは全部自分の好物で、てもお弁当としてはひどくバランスが悪くておかしなもの。それでも、それこそが自分にとってはそれは宝物のみたいに夢のようなお弁当なんだって言える。人からどう思われたって関係ない。大好物ばかりなんだもの。

中学生や高校生の時に創作に手を出したなら、経験があるかもしれない。好きなように作った結果、バランスを欠いていて、技術も足りなくて、とても鑑賞に耐えない意味不明なものになる。

ストーリーだけで言えば、この作品も大して変わらないと思う。たぶん、いろんな設定があるんだろうけど、全然説明されないし見る人を置いてけぼりにしている。

でも、だからこそ監督がやりたいようにやった結果なんじゃないかと思う。意味不明でもなんでもいいから、いろんなことを考えずに夢を詰め込んだ結果なんじゃないかと。

私たちはみんな、人からどう見られるかを考えて作品を作るようになる。このシーンは要らないとか、やりすぎると意味不明になるとか、これを付け足すとバランスが悪くなるとか。そうやって、思いついたものをどんどん省いていく。自分が上手じゃないってわかっていても、できるだけ上手に見えるものを作ろうという努力をする。

だから、こんな作品を商業作品として公開できることが、素直に羨ましい。きっと、色んな人がこの作品について肯定的な解釈を試みる。無名の人間なら酷評されて終わるのに、この作品は色んな人が読み解こうとしてくれる。そうしてもらえる人は世界でもほとんどいないだろう。だから、羨ましい。

これは、宮崎駿という人間が、その人生において評価されるだけのことをして積み上げた実績に対する、ご褒美なんだ思う。

絶賛されるとは思えない。だって、客観的に見れば意味不明だし、それは絶対に否定しようがない。だけど、一部からの称賛は得られるだろう。狂ったように惹きつけれれる人もまた、いるだろう。

評価されるかどうかは、もはや重要ではない。この夢いっぱいの作品を創ったことが一番大事で、それ以外は何も大事じゃない。

きっと、宮崎駿は人生最後の作品になる覚悟があってこれを作った。また作るかもしれないけど、最後になる覚悟はしているはずだ。

満足しているといいな。 この意味不明な作品を創ったことに、満足していてほしい。

私は、この感想文を書いたことに満足しているから、彼もまた、満足していてほしい。じゃないと私は、あまりに惨めで救われない。

上手く書けたとは思わない。自分でも、何が書きたかったのかよくわからない。書くことに意義があるとも思わない。そして、私がこんなものを書いても誰も読み解こうとしてなんてくれない。それでいい。

それでも私は、満足しているから。

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