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Miitopiaが貴方にとって"理想のRPG"かもしれない理由

Miitopiaは、あくまでRPGの基本的な文法を踏襲している。しかし、Miiを活用しキャラクター同士のコミュニケーションに重きを置いたことで、他のゲームでは体験できない独特かつ"確かな冒険感"を味わうことのできるゲームになっている。
所詮Miiのゲームだと侮ってはいけない。むしろMiiを使ったからこそ、新しい「RPGの理想形」を表現することに成功した傑作なのである。


Miitopiaは意外とオーソドックスなRPG

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『Miitopia』は2016年12月8日に任天堂よりNintendo 3DS向けに発売された「みまもりシミュレーション」ゲームである。魔王の手によって顔を奪われた人々を救うため、仲間と共にミートピアの世界を冒険する作品だ。
2021年5月21日にNintendo Switch向けにリマスターが発売され、一時話題となった自由度の高すぎるメイク機能や、キャラクター同士の新たなイベント、新たな仲間キャラクターなどの追加要素を含み、さらに手に取りやすくなった。

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本作の最大のウリは、今ではおなじみとなった任天堂のアバター「Mii」を使って、ゲームの登場人物全てを貴方の思いのままに配役できるという点である。貴方自身や、旅を共にする仲間は勿論、魔王や王様、お姫さま、村人、兵士、エルフの美少女三姉妹など、登場する全てのNPCを好きなMiiにできてしまう。

任天堂は過去、トモダチコレクションやWiiスポーツ、すれ違いMii広場など、Miiを活用したゲームを数多くリリースしているが「RPGの登場人物全てを貴方の思うMiiに配役してしまおう」という意欲的なシステムも、誰でも手軽にアバターを作れるMiiの利点を活用し続けてきた任天堂ならではのアイデアと言えよう。

そんなMiitopiaは、ゲーム全体を見ると、現代において多様化し様々なアイデンティティに分化している国内のコンピュータRPGの中では意外に無難な作風だ。
RPGといえば、国内においては『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』、もしくは『ポケットモンスター』シリーズなどに代表されるように、一般的にはいわゆるターン制やコマンドバトルを採用したゲームを指す場合が多く、RPGと言われてまずイメージされるのはそういったタイトルだろう。
もちろんターン制でなくとも、アクションゲー厶の側面もしくはFPSやTPSの側面を持ち合わせたタイトルでRPGとして売り出されている場合も多い。
本来の語源と言えるロールプレイの面を強調した海外タイトルなどもRPGと呼ばれる。

そういう意味でMiitopiaは、前者のドラクエやポケモンと同じくターンベースでコマンド選択式の戦闘システムを採用しており、システムとしても国内では比較的オーソドックスなRPGに近い印象のゲームだ。
世界観も、RPGと聞いたら真っ先にイメージされるようなスタンダードなファンタジーになっており、やはり任天堂がこのゲームにおいて注力したかったのは、凝った世界観を描くことというよりも、誰もがイメージするRPG世界を"Mii"で冒険できるという部分だろう。
実際のところ、ストーリー展開やNPCの心理描写などはベタで浅い印象のものが多く、その分Miiの大げさなリアクションやコミカルなテキストなどにフォーカスされた進行になっている。

全てのNPCを好きなMiiに配役できるという仕様上、仮にどんなに深いストーリーを用意しても人によってはギャグにしかならないだろう。
あくまでベタなファンタジー世界を用意し、そこにプレイヤーが予め配役したMii達と出会い、進んでいくゲームになっている。

RPGの戦闘の裏に今まで隠されていたドラマ

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さて、タイトルにもある通り、筆者はこのゲームはある意味で一つの理想的なRPG体験を提供してくれていると感じている。
このゲームの何処がRPGとして理想的なのだろうか。

このゲームでは、主人公ら一行のパーティメンバーの一人一人に性格と職業を割り振ることができる。それによって戦闘中であっても移動中であっても、宿屋で休憩中であっても、メンバー同士での多彩な会話やイベントが起こり、それをニヤニヤしながら"みまもる"というデザインになっている。

キャラクター同士の仲の良さや性格によって戦闘中に起こるハプニング、移動中のキャラクター同士の他愛もない会話など、このゲームのキャラクター達は常に予想外の展開を起こしプレイヤーを楽しませてくれる。このゲームのジャンル名が「みまもりシミュレーション」と表記されている理由はこういったところにあるだろう。

戦闘システム自体も、主人公に設定したキャラクター以外は操作することが出来ず、各自思い思いの行動を取るようになっている。戦闘中にキャラクターがよかれと思って起こした行動が、他のMiiをイラつかせ喧嘩に発展してしまうこともあれば、喧嘩の結果凄まじいパワーを発揮し、敵に大ダメージを与えることもある。もちろん、思い思いに行動する仲間達がプレイヤーの思惑通りの絶妙な連携プレイを発揮した時の快感もひとしおだ。

仲間達の行動をコントロールできないので、プレイヤーができるのは、主人公として仲間を守り、神の視点としてそれをみまもり、たまにアイテムでサポートしてあげることだけ。何が起こるか分からないファンタジー世界での冒険、戦闘をハラハラみまもるという要素が、結果的にその世界に没頭できるRPGとしてのリアリティを与えているのである。

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確かに、よく考えてみれば、実際にファンタジー世界で魔法使いや剣士、僧侶などが魔物に挑んでいる状況で、お互いに淡々と技を打ち合う状況になるはずはない。そこには必ずドラマが生まれるはずだ。

ドラクエなどに代表されるコマンド選択式の戦闘では、あくまで戦闘そのものの面白さに注力するため、そういったドラマは省略されている。
強いていうなら、攻撃をミスする、クリティカルヒットになるなどの不確定要素によってそのドラマを想像することができるようにデザインされていると言えるかもしれないが、あくまで想像だ。
しかし、Miitopiaはあえてそこを省略せず、システムとして実装しきったことで、RPGの戦闘で起こるドラマをロールプレイに昇華させた。

クールな性格の魔法使いは、時折冷静な判断力を発揮し、敵の急所を突く。
げんきな性格の盗賊は、勢いだけで敵を攻撃して自分もダメージを受ける。
てんねんな性格の剣士は攻撃する敵を間違えるが、敵の不意をついてクリティカルヒットになる。
マイペースな性格の僧侶は味方を盾に使って味方の不満を買い、最終的に喧嘩に発展する。喧嘩の巻き添えを食らった敵が大ダメージを受ける。宿屋で仲直りして、さらなる絆で連携プレイを起こす。
仲の良いキャラクター同士では、お互いの行動を助けることがある。味方の攻撃に助力し、追加のダメージを与える。逆に味方の代わりに自分がダメージを受けに行くこともあれば、攻撃を避けるように指示を出すこともある。
他のロールプレイングゲームの世界の戦闘の裏で、プレイヤーの預かり知らぬ場所で実は起こっていたであろうドラマが"その場で生成される"。これがこのゲームの唯一無二の特徴であり、テーマでもある。

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プレイヤーは思い通りにならないMii達をとても愛おしく感じ、ゲームに実装されているシステム以上の関係性を想像し、命を与える。そしてキャラクター達のその先の冒険が見たくなるのである。
ゲームにはもちろん、そんなプレイヤーの期待に応えるために、戦闘にもストーリーにも、冒険にアクシデントを与える仕掛けが数多く用意されている。キャラクター達に降りかかる災難、困難、そして幸福や絆。コミカルな表現と、可愛らしいアートスタイルで描かれているが、そこには確かにゲーマーが夢見るRPGの冒険がある。

トモダチコレクションなどで培われた、Mii同士の交流、不確定のドラマにプレイヤーが一喜一憂するゲームプレイ。それをRPGの戦闘に組み込むことには確かな合致があった。
RPGの世界を冒険する仲間たちが、こんな性格だったら、こんな職業だったら、こんな困難が降り掛かったら、どんな展開を起こすのだろうか?
それを主人公の視点でロールプレイしつつ、同時にプレイヤーの視点でニヤニヤとみまもる、理想のRPGロールプレイングゲームシミュレーション
それが『Miitopia』だ。

このゲームは、かわいい外見の裏に強烈なポテンシャルを隠し持っている。
コミカルなビジュアルで子供向けを彷彿とさせることや、Miiというキャラクターへの先入観から、このゲームの革新的なゲームプレイは埋もれてしまっていると言わざるを得ない。むしろ、多くのRPGに親しみのあるゲーマーにこそ、プレイした時に感動があるはずだ。

貴方もこのゲームを手にとって、そして『Miitopia 2』の発売を待とう。

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余談だが、今作はCMやPVだと、プレイヤーの家族や友達、憧れの芸能人などを配役して遊べることがプッシュされているが、筆者はすべての登場人物をオリジナルキャラクターにして遊んでいた。
こうすると"あの人と冒険できるゲーム"というイメージが一転、
"登場人物すべてをキャラメイクできるゲーム"という解釈になる。
筆者は元々キャラメイクのできるゲームが好きなので、Switch版の新要素であるメイク機能も活用し、ほぼ全ての登場人物を愛を込めて作成した。
そしてゲームをクリアした時、”自分のためだけのRPG”が誕生した。
この体験はまずMiitopiaにしか出来ないので、続編が出てくれないと困る。

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