名古屋市長選挙に自民推薦候補が負けたのは共産党の支援のせいなのか?→(答え)データで言えばそれは全く言えない。

noteでははじめまして。選挙の分析感の座間宮です。

前回より投票率が上がり、河村市長が圧勝と言えない結果となった名古屋市長選挙において、以下の記事がちょっとした話題になっていたりしますね。

「共産党が横井支持を表明したことで、自民と公明支持層の半分近くが河村氏に流れたと見られてます。自民支持層だけでなく、立民支持層にもいるアンチ共産党の支持者が河村氏にながれたのは大きかった。もしも共産党が公に横井支持を表明せず、自主的な支持程度だったら選挙はもっとカオスになったと思いますよ。
 ある自民党議員は『共産党の支持がなきゃよかったのになぁ……』なんて愚痴をこぼしてたくらいです」

これが、共産党の支持がなければ勝てたのに、というようなニュアンスの印象をもって受け止めている人がでるような、世論形成の効果が出ていたりもするのですが。実際にはそういえるのでしょうか。

検証してみましょう。

まずは2017年の市長選挙の情勢報道から

河村氏は自民支持層の7割強、民進支持層の8割に浸透し、全体の約半数を占める無党派層にも支持を広げている。

なんと前回2017年の選挙では、河村氏は、自民党支持層の7割強に浸透していたのですね。

ちなみに非減税候補は、自民支持層の2割程度です。

次に今回2021年の情勢報道

今回はどうだったのかと言うと、

自身が率いる地域政党・減税日本の推薦を受ける河村氏は、自民支持層の5割弱、無党派層の4割弱に食い込んでいる。

朝日新聞と読売新聞の情勢調査なので簡単に比較はできませんが(どちらの投票日の週の頭の報道です)。河村さんは今回は自民支持層の5割弱に浸透していたことになります。非減税候補は、自民支持層の4割に浸透していました。

ただし、その差は、約2割です。あくまで異なる報道機関の調査報道なので単純に比較はできないですが、2割の開きは大きい。

各社の情勢報道を細かに、整理するとこうです。

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あきらかに、前回より今回のほうが、非減税候補は自民支持層に浸透している。

ただし、河村さんは、自民以上に自民支持層に浸透しているといえます。これは、前回も今回も同様に言えます。

まとめ。

つまり、自民は前回より今回頑張ったということでもあり、共産党が支援した今回2021年の市長選挙のほうが、自民支持層に浸透したということが言えそうです。

(共産党が支援したこととは関係がないとは思いますが、共産党が支援したから票が逃げたとまでは決して言えないということ)

なお細かなことですが、自民党の推薦状況は、以下の通り。

2014年 自民党、推薦候補擁立
2017年 自民党、推薦候補擁立せず
2021年 自民党、推薦候補擁立

2014年と2017年は、推薦を出す状況は異なっていますが、選挙結果はほぼ同じです。

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左側の濃い青色が自民推薦候補です。

2017年 河村、自民支持層の7割強に浸透(朝日)
2021年 河村、自民支持層の5割弱に浸透(読売)

自民党は今回のほうが前回より頑張ったとは言えますが、共産党のおかげで票が逃げたから負けたとは決して言えないことがわかると思います。そもそも2013年は、自民推薦でもまったく勝負になっていません。

自民推薦候補は、戦略の一丁目一番地を、自民支持層への浸透に上げていたように思います。なぜなら、自民支持層は国政選挙の開票結果でいうなら約25万票〜30万票あり、他の政党と比べて圧倒的に大きいからです。

自民推薦候補の戦略の成果は前回、前々回よりも出ていました。ただし、河村さんの浸透具合のまえに及ばなかったと言えるのではないでしょうか。

約5万票の差をどうすれば逆転できたのかという視点でも議論できますし、過去非減税候補が圧倒的に負けていたことから比べたら相当に差が縮まってきたという視点でも議論できます(あくまで今回例の件で世論が大きく動いたことが第一の原因だとは思いますが)。

建設的に、分析が行われ、良い選挙が行われることを期待しています。

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