見出し画像

世界はルールを変えた

先ほど世界は、ルールを変えた。

今朝のことだ。
なくなったんだよ、カード類が一式ごっそり全部。
まあ失せものには慣れっこだ。昨晩、カード類一式をテーブルの上に出して見ていたのは憶えているが、そこから何処に仕舞ったのか分からない。
そのへんにあるだろう、と探しはじめたが見つからない。財布の中身もカバンの中身をすべて出した。
上着のポケットを探っていて「おっと、昨日着ていた服はこいつじゃない」と気づく。
昨日着ていたオーバーコートとズボンを引っ張り出してきてポッケをすべて裏返したが見当たらない。
こいつは本格的にまずい。もしかしたら昨晩、カードを見ていたのは幻想で、道すがらの何処かですべて落っことしてきたのではないか。自分に疑念が湧く。
こうなったら、と関係ない抽斗や入っていない部屋まで探した。
しかし何処にも無い。

もう出発の時刻が迫っている。
カード類なしで出かけるしかない。
私は仏壇の前に座り、手を合わせた。南無妙法蓮華経とお題目を唱え、「絶対に見つかる!」と念じた。ひょんなところ、今日の上着のポッケなんかから出てくるような都合の良いことをイメージしながら。
そして今日の上着を着込んで出発しようとしたんだ。
すると違和感がある。
ポケットにだ。
何か塊のようなものを感じる。手で外から触ると四角い。まさかな。このポケットはさっき探ったんだ。
しかも四角いからといってカードだとは限らない。ぬか喜びはごめんだ。四角い異物は、板が扇状に広がるようにズレた。
まさか、と思いながらポケットに手を突っ込んだ。上手く手が入らない。もどかしさをこらえながらポッケの中のものを掴んで取り出した。
果たせるかな、それは失くしたカード類だった。

この瞬間、理解した。
世界はルールを変えたのだ、と。
頭が良い人は「そこに入れてたのを忘れてたんだ」と言うだろう。
しかし感性が発達した人は世界のルールがアップデートされたことを素直に受け容れられるはずだ。
強く思うと、それは現実化する。
これが、これまでよりも、もっとスピードを上げて実行されるようになった。

量子電池というテクノロジーがある。
電気を充電するのではなく、電池が満タンだった状態に戻すという仕組みの電池だ。
電気を補充するのではなく、状態を操作するという発想。
量子の振る舞いを操作するという考え。
これを突き詰めると、特殊な装置など無くとも人間自身が量子の振る舞いを制御できるようになるだろう。
つまり魔法が使えるということになる。
いまこの時代に我々が当たり前のように使っている機器は数百年前の人々には妖術や魔法のように見えるだろう。
学生が習う三角関数や数列などは超能力と思われるに違いない。

「何が常識か」が、世界のルールをつくっている。
今日も何処かで誰かが世界を少しずつアップデートさせている。
誰もが世界を変えていっている。
それな積み重なり、先ほど、分かりやすいレベルでのルール変更に、私が気づいただけだ。
僭越かつ微細ながら、私のこのレポートも世界のアップデートに寄与するものである。
今の常識は、少しずつルールとズレていく。
世界は誰かによりアップデートされるが、自分の常識は自力でアップデートせねばならない。
さもなくば不要ファイルとして最適化の彼方へ飛ばされてしまうのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?