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閃輝暗点になったかもしれない

私は偏頭痛持ちだ。
こう自称できるほどの頻度で頭痛がやってくるようになったのは、20代前半の頃だったと思う。

痛みが強くなると頭痛薬も効かず、むしろ服薬によって胃が荒れ、起き上がれないほどの吐き気を伴うこともあるし、かつ、私は嘔吐に強い恐怖感を覚えるたちなので、猛烈な吐き気があってもそれをアウトプット(?)することができず、まさに八方塞がりである。

とはいえ、長いこと偏頭痛と付き合っていると、なんとなくのやり過ごし方も見えてくる。

頭痛薬は痛みを感じ始めたら速やかに飲む。服用前は何かを胃に入れておく。水分不足で頭痛を招くことがあるので、水は忘れずに飲む。

などなど、誰でも聞いたことのあるような対処法は、劇的な効果をもたらすわけではないけれど、全く意味がないこともなく、私はここ10年ほど、頭痛と付かず離れずの関係性を築けていた。そう思っていた。先週まで。

客先訪問の帰り、駅構内のパスタ屋で注文したカルボナーラを待っている時だった。
ふと気づくと、視界の左下に一点、強い光を見た直後に現れるような、「ぎらぎら」があった。あれをなんと呼んでいいかわからないので、「ぎらぎら」と言うしかない。

はじめは、店内の照明とか、文字通り何か強い光を視界に入れてしまったのだろうと気に留めなかったのだが、どうも様子がおかしい。

「ぎらぎら」がプリズムのような、三角形をいくつも組み合わせたような光(▼△▼△▼△←こういうの)を自ら放ち、最初は点だったのが、徐々に輪の形に広がり、視界を覆うようになったからだ。挙句の果てには激しく点滅し出して、スマホの文字はもちろん、運ばれてきたカルボナーラもうまく見えなくなった。

カルボナーラを飲み下しパスタ屋を出て、駅構内の電光掲示板を見上げるも、やはりぜんぜん見えない。「ぎらぎら」と電光掲示板のデジタルフォントの相性がひどいし、何より「ぎらぎら」が点滅するのも最悪で、脳が点滅に気を取られ、文字を文字として認識してくれないのだ。私はめちゃくちゃに焦りつつも、失読症ってこういうことなのかも…と、トム・クルーズに思いを馳せたりした。

なんとか電車に乗り込んだあたりで、それまで拡大と縮小を繰り返しながら視界を塞いでいた「ぎらぎら」が少し落ち着いてきて、代わりに右目の奥にずっしりとした痛みが現れた。
この時点で私は「閃輝暗点(せんきあんてん)」かも、と認識した。症状が、巷で言われているものとだいたい一致したからだ。

頭痛はここ10年の知見があるのでなんとかなる、と思っていたが、頭の痛みよりも、これに伴う吐き気に苦しめられた。帰宅して横になっても、勝手に食べものが上がってきてしまうのだ(嘔吐が怖いので、何度も飲み込んでやりすごすのもつらかった)。

これら症状が落ち着いたのは、「ぎらぎら」が現れてから約7時間後だった。長すぎる。各症状の持続時間をまとめると、こんな感じ。

・「ぎらぎら(左目)」:30分〜1時間
・頭痛(右目奥):6時間
・ものすごい吐き気:2時間
・軽い吐き気、むかつき:4時間
(おおよそ時系列、頭痛と吐き気は並行して発症)

症状の何がきつかったかと言えば、やはり「ぎらぎら」である。
「閃輝暗点」と調べると、「強い偏頭痛の前に現れる光の輪」と解説しているサイトも多いが、あの迷惑さとセンセーショナルさに比べれば、頭痛などモブキャラに等しい。
突如、視界が得体の知れないものに遮られる恐怖、文字を文字として認識できない衝撃は、とうぶん忘れることはないだろう。

あらためて閃輝暗点と思しき症状を経験してみて、頭痛とはかくも恐ろしい病なのか、と再認識することになった。視界まで奪われるのに「頭痛の前兆」みたいな扱いの疾患とは、信じられない。

発症の原因を検索したら、「コーヒーの飲み過ぎ」とか出てきたので、とりあえずここ数日飲んでいません。

※閃輝暗点について誤った情報を書いているかもしれないので、頭痛外来を置いている脳神経外科・脳神経内科さんのサイトを貼っておきます。漫画もあって超わかりやすい…SEO1位になってほしいです。

※MV画像は、土屋薬品MEDIOUSS『「特集」閃輝暗点の原因について』ページより引用しました。

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