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「水車館の殺人」を真剣に読んだがまたしても真実には辿り着けなかった


前回「十角館の殺人」を読み、めちゃくちゃテンションが上がってnoteに感想を書き殴っていた人です

クリスティの「そして誰もいなくなった」振りの衝撃的な読書体験ができたので、これはシリーズを読まなくては……と思い翌日には本屋さんへ行っていました

で、購入したのが綾辻行人先生の館シリーズ2作目「水車館の殺人」です

前回は割と真剣に謎を解こうと読んでみたものの、メタ的な思考や「そし誰」に引っ張られまくり見事に惨敗。今回こそは真実に辿り着きたい……!と息巻いての挑戦
(しかしこの時点で私は既に先生の手のひらの上で踊らされている※後述)

なお日常生活にも追われなかなかまとまった時間が取れず、読了まで3週間かかりました。毎日数ページずつが出来ず、読む時はガッと読みたい派なので……


※以降、ネタバレを含みながらのポンコツ読書記録になります









冒頭

1985年9月29日早朝、いきなり事件が起きている
女性が落ちて、絵が消えて……なんだなんだ
そしてどんどこ人が出てくる。誰が誰だかよくわからないけど、身体的特徴が随所に書かれているのでメモメモ

とりあえずわかることを書いていく
(後から出た情報の付け足しもある)

なんかいかにも館の主人ですって男と美少女、他に数人という感じ。仮面って聞くと思い浮かぶ人物、犬神家はじめ割といるな……

彼らの捜索を見守っていると、まもなく焼死体(しかもバラバラ)が発見される。焼死体と一緒に見つかった薬指には指輪の跡がある=正木という人物では?となる

★ポイント:こういうのって絶対後で何かあるから気にしておきたい


不穏なプロローグを終えページを進めると、物語の舞台になる水車館のマップが。さらに登場人物名一覧が!これは前作にはなかった。とてもありがたい

そして章立て、どうやら今回は1985年と1986年の9月28日と29日、過去と現在を行き来するスタイルらしい。どういうことなのだろうか

1986年9月28日

プロローグ後、舞台はいきなり一年後へジャンプ
館の主人「藤沼紀一」の独白から始まる
館の朝の様子を描きつつ、いくつか読者時点での謎が既にちらほら

★開かない書斎
★紀一が素顔を隠す理由
★由里絵が「塔の部屋」にずっといた理由

どうやら今日、9/28-29にかけてお客さんたちが水車館にやってくるらしい

★プロローグにいた人たちはこのお客さんたち?

早速前作で私の操作を撹乱した(勝手に掻き乱されただけ)、カマキリ(※)島田フラグが立つ。
あいつ、くるぞ……水車館に

※島田はカマキリっぽいと言う描写が前作にあったため

紀一さんに「追い返せ」って言われている。まあ不審者だし致し方なし

次の場面では家政婦の野沢さんが登場し、焼却炉から変なにおいがするなどと話していてもう不穏

1985年9月28日

ここで舞台は一年前に戻る

一年後と全く同じか?と思わせる描写だけど、ちょっと違う

★視点の差
1985年:彼は〜と描写される(第三者の視点)
1989年:私は〜と描写される(紀一の視点)

ここの差分に気づいたくせに…と、未来の自分に蹴りを入れたい

他にも、紀一の身体面の差分や、過去に関する描写が続きつつ、家政婦の根岸さんが登場。テンプレ肝っ玉家政婦(?)ってキャラだが多分プロローグで落下しているのこの人なんだよなあ、かなしい

由里絵は幼い頃からずっとこの水車館にいるようだが、館内を自由には動けるようで幽閉って感じではなさそう。とはいえ明らかに外界からシャットアウトされた状態……
こういう状況って殺人の動機になり得るよねと思いつつ、前回失敗したのであまり考えないようにする

そしてプロローグで燃えたとされる正木さんが登場。過去に何があったらしく、それから水車館に居候しているらしい。しかも紀一が12年前に起こした事故でフィアンセを失っている……

★プロローグの指輪は結婚指輪?

1986年9月28日

フラグ回収と言わんばかりに島田登場。失踪した古川と大学時代知り合いだったらしい。
(関係者がどんどん事件に巻き込まれる、典型的死神キャラ)

最初は追い返せとか言われてましたが島田も無事部屋を用意された。ヨカッタネ
今年も事件、起きるぞ

1985年9月28日

昼をすぎ、三田村(イケメン外科医)と森(大学教授)が水車館に向かうシーンに移る

この後2人が夜通しチェスをしていることが後半に出てくるんですが、仲良しか?
(なお森は三田村のことはあまり好意的には見ていない、前泊させてもらい運転もしてくれているのに……)

★「幻影群像」という、紀一の父、藤沼一成が残した幻の遺作。今は水車館にあるが、見ることはできない

★12年前の事故:当時紀一が運ばれた病院で、三田村の父と三田村が手術に立ち合っていた

★藤沼夫妻:由里絵が16歳の時に籍を入れていたが、それに対して三田村はかなりの嫌悪感を示している

一方その頃水車館、昼食を終えた館メンバーの様子が描かれるが、どうやら由里絵の居室である塔の部屋のバルコニーのドアがおかしいらしい
いやこれあとで根岸さん落ちるでしょ

嫌な予感がしつつ、水車館へハイヤーが到着。美術商の大石が到着する。ほどなくして三田村・森組も到着し、場面は一年後へ

1986年9月28日

一年後も、同じように大石・三田村・森がやってきたが、迎える紀一の心は重いようで、皆を招待したくなかったとか、一年前の事件を思うと不安などと心理描写が並ぶ。今年は島田もいるしね

客人たちを迎えたのち、いくつかの事件が起こる

★エレベーターの故障(扉が閉まらない)
★紀一の部屋の前に置かれた便箋

便箋には、紀一に向けたであろう「出ていけ」の文言。紀一に渡したのは家政婦の野沢さんだったが、第一発見者は島田だった

便箋の件はなんとなく、由里絵が怪しい


1985年9月28日

また場面は一年前へ

★正木は「幻影群像」を見たことがない、紀一はある模様

さらに場面転換。「執事」倉本さんの水車館の仕事に対する思いが描写される
個人的に1番好きな登場人物。後半の人物描写含め、程よく人間らしく、そしてえらく仕事ができる。うちにも来て欲しい

そんな倉本さんは使用人仲間の根岸さんのことは好意的には見ていないよう。今日も根岸さんに頼んだお茶用の湯沸かしが済んでいない
つまり、根岸さんはまだ戻ってきていない

(ここで何かを察する)

直後の場面、倉本さんは目撃してしまう、根岸さんの落下を……

時同じくして、水車館にやってきたタクシー。最後の客人、古川がやってくる
紀一と由里絵が出迎えていたその時、彼らも叫び声を耳にする

倉本の報告により、根岸さんの落下を知らされた紀一たちは、水車へ向かう。しかしなすすべなく根岸さんは川へと流されてしまった

館へ引き上げ、紀一・正木・由里絵は塔の部屋へと向かう。先ほど様子がおかしかったバルコニーの手すりに異常があった

意図的な事件、と思うけど誰を狙っていたんだろう

1986年9月28日

水車館では、一年前の事件について島田が聞き取り調査をしていた。紀一視点、気づいたら島田のペースに乗せられていたよう

島田の推理が展開されるが、他のメンバーたちの反応は冷ややか。まあ疑われるの自分たちだしね

1985年9月28日

正木と古川との会話に場面が変わる。
2人の会話から、正木が絵を辞めてしまった理由があることがわかる

★正木の負ったダメージは、他人が一見してわかるものではない

さらに正木はかなり金に困っており、無一文で紀一の元にやってきたらしい。なんなら大切な指輪すら売ろうと思うレベル。でも指輪は外れなかったという

この時点で正直正木がめちゃくちゃ怪しい
しかし、一年後に彼はいない……となると、考えられることは一つしかない。プロローグで現れたバラバラ焼死体は古川という可能性

だけどまだ怪しいという話だけで結論を出してはいけない……

この後、絵を鑑賞する客人たちや夕食の様子が描かれるが、大石が品のないおじさんということや、三田村がなんか意味ありげに由里絵を見ているなってことくらいしか収穫はなかった
(ちゃんと細かいところまで読め)

1986年9月28日

お茶会後、紀一は便箋の犯人について思いを巡らせる。そこへ島田が訪問。便箋について尋ねるため、紀一が呼び寄せていた

島田は、水車館を設計した中村青司について話す。この館には主人すら知らない部屋や通路が存在しているのかもしれない、と

そして島田は便箋を見つけた時の話をする

★便箋、、、便箋の描写、、、

その後、島田と別れた紀一は、三田村が由里絵を口説く場面を目撃する。ショックを受ける紀一だが、黙ってその場を去った

場面は夕食に移り、お茶会から様子のおかしかった森が一年前の事件について思い出したことを告げる

★客人4人以外に、先に雨に濡れた人物が廊下を通っている

このあたりで、私は正木がほぼクロと判断していた。他に状況的に根岸さんを落とせる人いないので

だがそれでは真実に辿り着いたとはいえない。現に正木は一年後にはいない。古川になりかわり姿をくらましたとして、どうしているかまで見抜けなければ当てずっぽうの犯人当てゲームに正解しただけでしかない……


しかし、そこから読み進めても真実には辿り着けなかった。すっかり読書が面白くなってしまって、そのまま勢いで読み進めてしまったためである

十角館の時もそう、ひたすらに文章が面白い。サクサク読めてしまうが故に読書にエンジンがかかると本当に止まらない。もう自分の推理とかいいから続き読ませて!ってなってしまう、ずるい

で、勢いそのままに真相パートまで来てしまった

真相パート、真相という出汁をごくごく飲ませてもらえた
1985年と1986年の視点の差にはちゃんと意味があったし、真相がわかってから読み返すとヒントに溢れている


今作の犯人はマジもんにクソ野郎だなというのが率直な感想で(余罪付き)、でもちゃんと制裁を受けるに至ることまで描いてくれるのが清々しい
水車館を設計した中村青司もなかなかにとんでもない人物だったが、今回キーとなった絵の作者、藤沼一成も相当だった。館シリーズ以外に絵シリーズもいけるぞって思ってしまう

そしてあとがきで、綾辻先生が「作品の手がかりから真相を導き出せる」ことを意識した作品である、と語られていたのを目にして、自分が今まで完全に「先生の手のひらで踊らされていた」と気付かされた。私は謎を解いてやる!と息巻き、作者の思惑通りのムーブをかまし、そして敗北……


……というところで「水車館の殺人」読了です
後半の話をばっさり切ったのは(決して書くのが面倒になったとかではなく)、私の実際の読書スピードがこんな感じだったためです。どんどんギアが上がってトップスピードで後半は駆け抜けた。続きが気になって仕方がなかったんです

この感想文を書くのに1週間くらいかかりましたが、その間に「迷路館の殺人」を買いました
また元気な時に読んで感想を書き殴りに来ようと思います

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