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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【7月28日㈬~8月3日㈫】

5月28日から再映がスタートした『ファンタスティック・プラネット』は、東京・渋谷HUMAXシネマで満席続出の3週間の興行を終え、1週空けて6月25日からはアップリンク吉祥寺に劇場を移して続映。当初1、2週の上映予定でしたが、好評につき7月29日まで断続的に5週に渡って上映して頂きました。で、まだまだ見逃している方もいらっしゃる気配なので、急遽8月6日から今度はヒューマントラストシネマ渋谷での上映が決定しました。映画館を変えて続映する、興行用語でいうところの“ムーブオーバー”に次ぐ“ムーブオーバー”という幸福な道を辿っております。引き続き全国各地でも上映中!未体験の方、ぜひこの機会にご覧ください!

ファンタスティックプラネットb

一方、先日情報解禁になりました、10月公開の『MONOS 猿と呼ばれし者たち』は、プレス試写も始まり、早くも絶賛評がSNSに上がったりして、幸先の良いスタートを切っております。メイン公開劇場のシアター・イメージフォーラム渋谷では、既に予告編の上映も始まりました。ケリー・ライカート特集やインド映画『ジャッリカットゥ 牛の怒り』を観に行くとご覧になれます。オンラインでの予告篇配信解禁も間もなくですので、どうぞ楽しみにお待ち下さい。

さて。一通りのお知らせが終わったところで、今週のザジ通信。相変わらずのコロナ禍で、ネタになるような出来事が無いので、またしても想い出話。ちょうど8月4日からロカルノ国際映画祭が始まるので、ロカルノの話を少し書こうかと思います。スイス南部、イタリア語圏のティテーノ州、マッジョーレ湖を臨むリゾート、ロカルノで70年以上前から行われている、新しい才能の発掘に積極的な映画祭。84年にはジム・ジャームッシュ監督が『ストレンジャー・ザン・パラダイス』で金豹賞(グランプリ)を獲得しています。

うちの会社は基本、カンヌとベルリンという見本市のある映画祭にしか参加していないので、ロカルノは年間の出張スケジュールに組み込まれているワケではありません。が、会社を始めた当初から、いつか行ってみたい映画祭ベスト3のうちの1つでした(ちなみに後の2つは、サンセバスチャンカルロヴィ・ヴァリ)。ちょうど開催が毎年8月上旬なので、「仕事じゃなくて、夏休みで行けばいいのだ」と考え、初めて行ったのが2002年。当時、映画祭側がバイヤーの参加を積極的に受け入れていて、「映画祭登録料とホテル代4泊分出しますよ」というオファーが来たのも、背中を押してくれました。それから、すっかり気に入ってしまい、2006年までの間に4回参加しました。

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映画祭、一番の目玉は街の中心の広場ピアッツァ・グランデでの野外上映。ヨーロッパ最大と言われる大きさのスクリーンを貼り、客席は8,000席。そこで毎晩、特別出品作の上映が行われます。一昨年には黒沢清監督作『旅のおわり世界のはじまり』が上映され、主演の前田敦子さんが壇上で挨拶する姿がyou tubeに上がっています。

私もここで何度か映画を観ましたが、スクリーンの上、空に目をやると満点の星。数分眺めていれば、いくつも流れ星を見ることも出来ました。映画を観ながら、本物の流れ星を見る、なんて経験はそう出来ませんよね。映画と映画の合間には、湖の遊覧船に乗ったり、ロープウェイに乗って山に登り、下界を見下ろしたり、夏休み気分を存分に味わうことが出来るロカルノでした(昔撮った写真を探したのですが、ピアッツァグランデの良い写真は見つからず。トップ画像は、コンペ部門が上映される体育館のような上映会場の様子です)。

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またコンペティション部門や各部門に加えて、レトロスペクティブなどの特集上映部門が充実していて、「JAZZ in Cinema」なんていう特集のあった年などは、その部門に通い詰めていた記憶があります。なので、その時観た『真夏の夜のジャズ』はぜひザジでリバイバルしたかったのですが、買付け交渉、玉砕しました(´;ω;`)

最近すっかり行かなくなってしまったのは、主に経済的な理由(泣)。ロカルノ、スイスだから元々物価が高いのですが、リゾート地なのでなおさら。10数年前の当時でも、ランチで軽食をとるのも、ちゃんとしたレストランで夕飯を食べるのも、軽く日本の倍、という印象でした。デフレ日本な今だったらもっとでしょう。加えてアクセスの悪さ。日本から参加するとなると、ミラノのマルペンサ空港から、映画祭のシャトルに迎えに来てもらうか、いったん市内に入って電車を乗り継ぐか、もしくはスイス・チューリッヒから電車に乗るか。映画祭のシャトルは当時、小さなバンで、後ろにリヤカーのような荷車が繋いであって、そこにスーツケースを積んでいました。標高の高い山間部を2時間余り。スーツケースが崖から落ちちゃうんじゃないか、とハラハラしたのを覚えています(2006年に参加した際は、同じシャトルに、今考えれば『ゲルマニウムの夜』が出品されていた大森立嗣監督が乗っていました)。

それでも、去年は久々に参加しようと、映画祭事務局にホテル招待の要請を出したりして準備をしていましたが、年明けから始まったコロナ禍ですっ飛んでしまいました。いろいろ思い出しながら書いていたら、ますます行きたくなってきた。来年は絶対行く!

最後に。「で、4回も行ってて、買い付けた映画は無いの?」とお思いの方もいらっしゃるかと。あります。2004年に公開した『ある日、突然。』というアルゼンチン映画は、2002年のロカルノで観て気に入って買付けに至りました。残念ながら、興行はヘロヘロでした。そうそう!この映画の監督のディエゴ・レルマン!『MONOS 猿と呼ばれし者たち』の共同プロデューサーに名を連ねていたのを、先日エンドクレジットを見ていて発見しました!!19年ぶりに雪辱を果たします!!

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※ 2004年公開の弊社配給作『ある日、突然。』ロカルノ映画祭では銀豹賞(準グランプリ!)

texte de daisuke SHIMURA



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