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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【6月29日㈬~7月5日㈫】

当ザジ通信を始めてから、今週の更新で74回目。1年半近く続けてきて、やっと海外出張ネタを書ける日がやってきました。2020年2月のベルリン国際映画祭が、コロナ前最後の海外だったので、2年4か月ぶりにヨーロッパに足を踏み入れました。行先は南イタリアのレッチェという、長靴のかかと辺りに位置する街です。目的は“イタリアン・スクリーニング”というイタリア映画の新作ショウケースに参加するため。マーケットや映画祭でお披露目される前の、出来立てホヤホヤの新作を、過去1年イタリア映画の配給の実績がある各国のバイヤーを数社ずつ招待して優先的に試写してもらい、セールスを促進するための催しで、主催はCINE CITTAの自国の映画をプロモートする部門。毎年6月下旬に行われていますが、一昨年はコロナで中止、去年はヨーロッパのバイヤーに限定して小規模に行われたので、通常開催は3年ぶりとなります。

カフェやレストランが立ち並ぶ、レッチェの路地裏

実はヨーロッパの何か国では同種の新作ショウケースが存在します。フランス映画であれば1月の“パリ・ランデヴー”、イギリス映画ならカンヌ後の“ロンドン・スクリーニング”が名前の通り、パリ、ロンドンで開催されますが、イタリアン・スクリーニングとドイツ映画の“ジャーマン・スクリーニング”は、2年毎に開催地を変えています(ドイツ映画の配給実績が少ないザジは“ジャーマン・スクリーニング”には参加したことがないので、情報がありません。同じ業界にいても、参加者以外にはほとんど情報のもたらされない、きわめてクローズドな催し、ということがうかがわれます)。“イタリアン・スクリーニング”のここ10年ほどの開催地の変遷を書いてみますと、クール・マイユール、バーリ、ナポリ、そしてレッチェ。ここのところは南イタリアばかり。私はバーリが初参加だったので、南イタリア責め。たまには北に行きたい!(招待なのに贅沢言い過ぎ)

出発は6月28日。羽田発のトルコ航空の夜便で先ずはイスタンブールに行き、同じくトルコ航空でローマに乗り継ぎ。ローマからはITA Airways(旧アリタリア)でブリンディシというレッチェ近郊の空港に到着し、そこからは迎えのシャトル。会社を出てから、レッチェのホテルにチェックインするまで、何と28時間!ブエノスアイレスに行くよりも時間がかかりました!(イメージだけで言ってて、実際の日本⇔アルゼンチンの所要時間は未確認ですのでご容赦)

イスタンブールの空港で聴く「飛んでイスタンブール」(笑)

他国のスクリーニングに参加したことがないので比べられないのですが、“イタリアン・スクリーニング”は、ひたすらフレンドリー。着いた日の晩からウエルカム・レセプション的なブッフェ・パーティが催され、6月30日からのスクリーニング3日間も連夜懇親ディナー。主催者側のCINE CITTAのスタッフや、イタリアのセールス会社の面々が、陽気に盛り上げてくれます。が、しかし、イタリア時間で進行するので、毎晩8時半に送迎バスに乗って、街の中心から30分前後離れた“マッセリア”という昔の農園主の邸宅を再利用したパーティ会場に連れて行かれ(南伊には、この“マッセリア”という施設が無数にあるようで、毎晩場所は違います)、食事しながら懇親を深め、帰りもまた送迎バスに乗って、解散が24時、25時に及ぶ、というかなりタフな毎日です。何気にバックレて親しい人同士、ホテル近くのレストランでゆっくりディナー、という人も実際にいますし、「中日ぐらいは懇親ディナーは遠慮して、どこか別のところに行かない?」と、今回同行の日本の2社の方をお誘いしましたが、「そりゃダメでしょう!招待してくれたんだから、ちゃんとホスピタリティには応えなくちゃ」とのご意見を頂き、きっちり皆勤賞で参加してきました。

懇親ディナーの様子。4日とも野外だったのでコロナはちょっと安心。

さてさて。肝心の“スクリーニング”についても書かなくちゃですよね。会場はホテルから徒歩圏内の街中の5スクリーンある映画館。基本的に朝9時、11時、指定のレストランでの懇親ランチタイムを挟むので13時の回は無くて(懇親責め。笑)、15時、17時、の4コマを3日間なので、マックスでも12本しか観れませんが、ざっくり言うと全60コマで、30作品が2回ずつ上映される感じです。なにぶんクローズドな催しなので、上映された作品の詳細情報については言及を控えますが、今後映画祭に出品が予定されている著名な監督の新作や、ややローカル色の強いコメディ、スリラーやホラーなどのジャンル物など、バラエティに富んだラインアップ。題名と監督、出演者、ジャンルと上映時間、という情報だけのまっさらな状態で映画を観るのは、毎回自分の選択眼を試されるようで、すぐに消えてしまう英語字幕を追うのが大変ですが、刺激的な体験ではあります。

で、「これはザジで配給したい!」という作品が見つかったのでしょうか?それは今日時点ではナイショにしておきたいと思います(笑)。

ラストナイト in レッチェの懇親ディナー、後半はお約束のダンスタイム。DJが入って懐かしのディスコミュージックが流れ(出席者の年齢に合わせていると思われます。笑)、皆でガンガン踊ります。私も「恋のサバイバル」がかったタイミングで踊りの輪の中に入り、「ステイン・アライブ」だの「YMCA」だの、“旅の恥はかき捨て”とばかりに、汗ダクで踊ってきました。某イタリアのセールス会社の方が、自身のFacebookにパーティ最後の「ジェンカ」のような“輪になって踊ろう”な動画をアップしていましたが、いくら野外とは言え濃厚接触は明らか。これで日本再入国時に必要な陰性証明書を得るための“帰国前72時間以内のPCR検査”が陽性になろうものなら、ただの自業自得の大バカであることが、白日の下に晒されてしまう…と、本気でドキドキしました。が、無事陰性。予定通り帰国することが出来ました。良かった!というか、助かった!

texte de Daisuke SHIMURA










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