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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【5月25日㈬~5月31日㈫】

5月28日、カンヌ国際映画祭が閉幕。パルムドールはリューベン・オストルンド監督作『Triangle of Sadness』が受賞しました。前作『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(’17)に続いて、2作連続のパルムドールという偉業を成し遂げたことになります。クロージングまで現地に残った日本人の皆さんも続々帰国して、カンヌの季節も終わり。しかし、映画祭は終わっても、買付け合戦はまだ決着がついていない作品もあるみたいで、「あの映画は、あの会社が買ったらしい」、「あの映画は値段が吊り上がって、まだ決まってないらしい」等、風の噂が聴こえてくる今日この頃です。

それにしても国内のテレビのニュース。全てをチェックしたワケではないのですが、“カンヌ閉幕”の話題は取り上げるものの、ある視点部門に出品されて、“カメラドールスペシャルメンション”(新人監督賞の第二席的な意味合いらしいです)を受賞した早川千絵監督の『PLAN 75』と、コンペ部門の是枝裕和監督『ベイビー・ブローカー』で、ソン・ガンホが男優賞を受賞したのを伝えるのみ。パルムドールを何が獲った、なんてナレーションですら触れていませんでした。「なお、最高賞にあたるパルムドールは、スウェーデンの××〇〇が受賞しました」と、5秒もあれば伝えられるのになぁ。

さて。日本時間の土曜深夜、カンヌでクロージングセレモニーが行われるその日の日中、私は日本で何をしていたのか、というと、4年前の5月27日に亡くなった映画評論家 大和晶さんのお墓参り。レスリー・チャンが大好きで(というより愛していて)香港映画に造詣が深く、「冬のソナタ」に始まる韓流ブームの立役者のお一人という、アジア映画に強いイメージの方ですが、元々はフランスが大好き。年に一度、カンヌに出向くのを何よりも楽しみにしていらっしゃいました。初カンヌが1990年で私と同期。亡くなる前年の2017年まで25年以上通っていたことになります。日本で“カンヌの申し子”と言えば、某K瀬N美監督という話もあるようですが、私にとっては大和晶さんに他なりません。

トップに貼った画像、下に貼った画像はともにカンヌの中心地から車で20分ほどの丘の上にあるムージャン(Mougins)という村で撮った一枚。ピカソ終焉の地で、現在は芸術村としてアトリエや画廊が多く集まり、レストランも点在する観光地。今回お墓参りにもご一緒した、大和さんと親しかった配給会社のWさんに誘われて、カンヌの期間中に3人で出かけるようになったのは、カンヌデビューした翌年だったでしょうか?大和さんは、映画祭の最中は食事をする時間すら惜しんで映画を観まくっていて、期間中唯一まともにご飯を食べられるのが、ムージャンに3人で出かける晩だけだったので、それはもう、ザ・開放感!というムードに溢れていました。観光地とは言え、カンヌの喧騒から離れて、村は静か。何年か通っているうちに、お気に入りのレストランも定まり、私もその年中行事を楽しみにしていました。

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前述の配給会社のWさんと大和さんはとても仲が良かったので、カンヌに入る前、前乗りして女性同士、束の間のパリの休日を過ごすことも多かったようです。私も一度だけ、その“前乗り”に参加させてもらい、パリで食事をご一緒させて頂いたことがあるのですが、これが最悪なディナーで(笑)。パリ大好き、フランス料理大好きな大和さんですが、甘えん坊なのでレストランのセレクトや予約はWさん任せ。Wさんは、条件に見合った店がなかなか予約出来ず、フランスに発つ直前やっとのことで、とあるフレンチを予約してくれていました。が、席に着いた途端、大和さんのご機嫌が悪い。「えぇ~、英語メニューがあるの~?」。大和さんはツーリスティックな店である気配を感じ、落胆の色を隠そうとしませんでした。 苦労して席を予約したWさんも、その態度にムッとしてしまい、(仲が良いゆえに)険悪なムードに…。おまけに大和さんが食べたかった“Lapin (ウサギ料理)”は、あまり感じの良くない店員に「シーズンじゃありませんから」と一蹴されてしまい、私は間に挟まってどうしようかと思ったのを、昨日のことのように思い出します。Wさんと、大和さんとの思い出話になると、必ずと言っていいほどそのディナーが話題に上る、今となっては良い思い出…なのか?(笑)尚、Wさんの名誉のために書いておくと、その店は人気女性誌のパリ特集で「お薦め!」とされていた店でした。

大和さんが人生最後にスクリーンでご覧になった映画は、うちが配給した香港映画『29歳問題』。闘病中にプレス試写にお越しくださいました。レスリー・チャン好きなヒロインが登場する香港映画ネタ満載の作品だったので、「どうしても観たかったからムリしてきちゃった。良かったよ~」と喜んでくださいました。この3月に大阪アジアン映画祭で上映された『アニタ』の感想も、お聞きしてみたかったな~。天国でチェックしてるかな~?

さて。話は変わりますが、先ほど6月17日に公開が迫った映画『三姉妹』の第二弾ビジュアルによるコメントチラシの内容が情報解禁になり、各上映劇場での配布も始まりました。

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作家の柚木麻子さん、山内マリコさん、姫野カオルコさん、角田光代さん、あさのあつこさん、深緑野分さん、近藤史恵さん、俳優の渡辺真起子さん、中村優子さん、占部房子さん、安藤玉恵さん、和田光沙さん、大島葉子さん、臼田あさ美さん、映画監督の西川美和さん、大九明子さん、翻訳家の村井理子さん、斎藤真理子さん、タレントのYOUさん、モデルの小谷実由さん、詩人の金原瑞人さん、フリーアナウンサーの堀井美香さん。総勢22名の熱のこもった絶賛コメントを、チラシを手に取ってぜひご一読ください!

texte de Daisuke SHIMURA



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