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【日記】木星と私

「木星と私、どっちが重いと思う?」

家に帰ってくるとすぐに娘は妻に問いかけた。娘の瞳は満点の星空のように輝いている。

「さぁどっちだろう?」

妻は、誰かさんのようにヘンテコな表現をするようになった娘に、目を細めながら返事をしていた。

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はま〜と娘は、神奈川県藤沢市にある湘南台文化センターに出かけた。

湘南台文化センターは、小田急線の湘南台駅から徒歩5分で行ける施設だ。子供が遊んで学べるものが充実しており、プラネタリウムやビデオギャラリーまである。

入館料は大人300円、子供100円。半日は時間が潰せる。かなりお得な金額だ。

入館するとまず2階に向かった。湘南台文化センターは地上3階地下1階の大きな施設だ。2階には宇宙の展示ホールがある。

展示ホールに入ると色々なものが展示していた。空から見た地球の様子や雲の動き方、太陽系軌道の展示など。映像ギャラリー、パソコンもある。

展示コーナーをまわっていると惑星の重さ比べのコーナーを見つけた。各惑星の重さを10の23乗分の1で表したものを展示している。

惑星は手のひらサイズのものから、ポリタンクで表現されたものまである。

娘は軽いものからひとつずつ持ち上げていった。「水星ってちょー軽い。海王星は片手で持てるよ。」などと言いながら、ひとつひとつの重さの違いに関心している。

最後は一番重い木星だ。

「もし私がコレを持ち上げられたら、私が木星より重いってことでしょ?」

娘はイタズラな笑みを浮かべている。

「あぁ、そうだね。持ち上げられたら、お前の方が重いってことだろうな。」

木星の模型は19kgも重さがある。小学3年生になったとはいえ、持ち上げられるとは思えなかった。

娘は両手を震わせながら持ち上げようとしている。全身から力を絞りだしていた。まるで重量挙げの選手のように。

少しずつポリタンクが浮いていった。10cmほど持ち上がっただろうか。見事に娘は木星を持ち上げることができたのだ。

数秒だけそのまま耐えて、木星を下ろした。

娘は鼻の穴を少し広げ満足げな表情をしていた。

「イェーイ」

はま〜と娘はハイタッチして喜び合った。

「私が木星を持ち上げることができたから私の勝ちだね。私の方が木星より重いでしょ?」

あぁそうだねと返答すると、娘は展示コーナーの出口に向けて歩きだした。

その後ろ姿は、はま〜が思っていたより少しだけ大人に近づいていた。

「このコーナーは充分楽しんだから次のコーナーに行こう」娘は満遍の笑みを浮かべながら、はま〜に振り返った。

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