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『ラストエンペラー』 溥儀の半生を映画的に描く。ヴィットリオ・ストラーロの撮影は神のごとく美しい。

評価 ☆☆☆



あらすじ
1950年、第二次世界大戦が終わり、満州国の崩壊と国共内戦によって中国は共産主義国である中華人民共和国となった。その都市、ハルビンの駅の構内で5年間にわたるソビエト連邦での抑留を解かれたひとりの男が、列から離れる。



1987年公開の『ラストエンペラー』を最初に観たのはいつだろうか。良く覚えていない。ある程度の年齢(25歳以上かな)を経てからだったと思う。この映画の監督はベルナルド・ベルトリッチ。出演はジョン・ローン、ジョアン・チェンなど。撮影はヴィットリオ・ストラーロ。音楽は坂本龍一。



この映画の面白さは10代にはわからないかもしれない。映画をそれなりに観るという経験を経て、この映画を観ることをお勧めします。この映画の凄さがさらにわかるはずだ。



映画は愛新覚羅溥儀の半生を映画いている。溥儀といえば中国と台湾そして日本との現在の複雑な国交問題につながる問題だが、映画はそんなことおかまいなしに、皇帝として生まれ、没落していくひとりの男を追っていく。



アカデミー賞作品の代表格というと『シンドラーのリスト』や『ゴッドファーザー』が上げられるが、僕としてはこの『ラストエンペラー』がもっと注目されてもいいと思っている。ベルナルド・ベルトリッチ監督の作品があまり好きじゃないが、この映画は他の作品と異なるオーラのようなものを感じるのがその理由だ。



もちろん、ベルトリッチの『暗殺の森』にも十分にオーラはある。しかし、『暗殺の森』はスタイリッシュすぎるきらいがある。この映画には『暗殺の森』とは違った魅力、例えばゴージャスさ、例えば豊潤さ、イマジネーションの豊かさみたいなものを感じることができる。



多分、ヴィットリオ・ストラーロという撮影監督がその才能を120%以上発揮しているからだろう。プロローグ部分の美しい布の舞からラストに至るまでの計算された色彩は本当に美しい。



ラストも映画的だった。僕は常々、見えないのもを見せるのが映画だと思っている。その意味では完全に映画となっている。『うなぎ』や『ツィゴイネルワイゼン』のラストもすごいけどね。しかし、この映画は驚きというより、畏怖に近いものを感じた。



もちろん坂本龍一の音楽もいい。こういうと付け足しみたいだな。ちなみに坂本龍一とベルトリッチはかなりケンカしたらしい。ボツになった音楽のいくつかはのちにオリジナル曲として発表されている。



初出 「西参道シネマブログ」 2006-03-03



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