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弾力のある組織とは? わたしたちのチームへ

前回の記事では、キューッとフワーという繰り返しが「いのちの弾力」であるとお伝えましました。

前回の記事:いのちの弾力とは 「私などない」からスタートしましょう

「いのちの弾力」の話が当てはまるのは、個人だけではありません。組織にも「いのち」があります。

今、あなたの組織はイキイキとしているでしょうか?それとも、ちょっとお疲れ気味でしょうか。中には、エネルギーが枯渇して、危機的な状況に陥っている組織もあるかもしれません。

医師の友人の話によると、「人間は病気になると、皮膚を押したときに戻りづらくなる」そうです。病むと、まさに身体も弾力がなくなるのです。

これは組織にも当てはまります。活力がなくなっている組織は、硬直的になっています。

硬直化した組織は、コミュニケーションが滞っていて、意志決定にも創造性がありません。目に見えない鎖に縛られ、身動きがとれなくなっているのです。

これを技術論で乗りこえようとして、さまざまな仕組みや制度を導入しようするかもしれません。そのための研修やコンサルティングは、山ほどあります。もちろん、これで組織が息を吹き返せばそれでいいと思います。ただ、上手くいかない場合もあります。



私の視点は、組織における「いのちの弾力」をどう取り戻すか。

弾力の肝はシンプル。「体験」と「振り返り」です。

体験とは、サントリー風に申し上げると「やってみなはれ」という風土。振り返りとは「体験からの気づき」です。

硬直化している組織は、「振り返り」が苦手です。振り返りは嫌いというメンバーがほとんどです。それは、振り返りが責める場になっているからです。

体験は緊張の連続です。これはキューッとしている状態です。そして、振り返りでまたキューッとなるのです。これは、組織ががずっとキューッと縮こまっている状態です。

大事なのは、フワーの瞬間です。振り返りで、いかに「フワー」となれるか。組織にも「キューッ」と「フワー」が必要なのです。



振り返りには、大きく分けて「3つの視点」があります。

1.問題点を指摘し改善する

2.できたこと、よかったところを共有する

3.その場に起こっている真実に気づく



組織の多くは、1の振り返りに偏りがちです。もちろん、問題点を洗い出すことは、理論的には大事です。ただ、1つ考慮したいことがあります。行動した後に、問題点を探す行為は、どのような影響をもたらすでしょうか?

問題点を探す際、「なぜそれをやったのか」と理由を問われます。組織としては、原因や理由をはっきりさせることで、次につなげていきたいからです。

しかし、この「なぜ」という質問は、やったことに対しての否定であり、責められているという心理的な圧迫感をもたらします。これは、さらに緊張感を高め「キューッ」となっていく方向です。

人は、緊張感が高まっていくことを本能的に避けようとします。それが言い訳や自己正当化、あるいは隠すという行為になるのです。多くの組織では、フワーできる場がないのです。

フワーのために大事なのは、2の視点です。よかったところを振り返るのです。頑張ったところをシェアすることで、はじめて努力が報われたと感じ、少しずつメンバーの心は開かれていきます。フワーッと温かいエネルギーが漂うことで、メンバーは笑顔になっていきます。

1の振り返りには、緩むところがありません。結果として、組織は疲弊していきます。まずは、2の振り返りを取り入れるところからはじめましょう。

ここまでは、すでに実践されているかもしれませんね。

「いのちの弾力」の肝は、実は3にあります。その場に起こっている真実に気づくという視点です。

もちろん2の振り返りがきちんと行われれば、かなりフワーとしてきます。ただ、まだ言葉になっていないことがあるのです。

その場に起こっていることに気づくには、「わたしたちの目」が必要です。

3のわたしたちの目は「ともにいる」という視点です。
「ともにいる」というのは、「ここにいていい」という安心感ともいえます。



禅をともに学ぶ仲間が「エルダーシップ」という言葉を教えてくれました。

エルダーシップとは、プロセスワークの提唱者、アーノルド・ミンデルさんによるリーダーシップの考え方です。

「エルダーシップ」
老子の教えるタオ(道)に従うリーダーのようであり、気づきに基づいて人や組織を導く。対立する立場や考えも深く包含する長老的な在り方のことを言う。誰もが自分の深い智慧に繋がることができれば、エルダーシップを発揮できると考えている。

バランストグロースコンサルティング website より
https://www.balancedgrowth.co.jp/processwork/eldership.php

「エルダーシップ」を紹介してくれている記事はこちらから

エルダーは「その場に起こっていることに気づいている」という役割といえそうです。

これまでの組織におけるリーダーシップ論では、ビジョンを示す人、メンバーを引っ張っていく人、サポートする人などの役割は論じられてきました。

そして、私が辿り着いたのが、まさに「場に気づいている人」だったのです。

その場に気づいていると、言葉になっていない真実が見えてきます。



先日、ある組織のミーティングで振り返りをしていたときのことです。

マネージャーのAさんは、会社の中でトップの成績をあげました。ところが、周りから結果を称えられても、どこか表情が固いのです。また、その場にいるメンバーもバラバラのような感じがしました。

私からは、「Aさん、表情が固い感じがするのですが、なにか言葉にしていないことがありますか?」と尋ねました。

すると、Aさんが口を開きました。

実は、Aさんがやろうとしていたのは「自分のチームだけの成績」ではなかったのです。それは「自分のチームがトップをとることで、全社を引っ張るという覚悟と行動を他のメンバーに示す」ことだったのです。だから、全社にトップをとるという宣言をして戦いに臨み、有言実行を成し遂げたのです。その行動は他のチームにもプラスに波及しました。

Aさんはその言葉を発しながら、肩の力が抜けていくようでした。自分の役割を果たせた安堵感が伝わってきました。ものすごいプレッシャーの中で戦っていたのを他のメンバーも知り、バラバラだった場のエネルギーがまとまっていくのを感じました。

そして、最下位のチームの番がきました。結果だけをみれば、責められる立場でしょう。振り返りでも、マネージャーのBさんは、他のメンバーに対して目標を達成できなかったことを謝罪しました。

いつも陽気なBさんがとっても小さく見えました。孤立しているように感じたのです。

私は、「Bさんがひとりぼっちのように感じるのですが・・・」と伝えました。

すると、営業部長のCさんが、Bさんに関するエピソードを話し始めました。

Bさんには一つの秘めた思いがありました。「なんとか他のチームの足を引っ張らないようにしよう」

この会社では、全国の同業者との競争が利益に直結していました。全国の他社と比較してどれくらいの順位でおえるかが、自社の業績に大きく左右しているのです。

Bさんのチームは、地理的な条件などで、かなり不利な状況にありました。さらに、割り当てられる人も限られていて、人員的にもかなり厳しい中での戦いだったのです。しかし、Bさんは不平を訴えるのではなく、人員は勝てるチームに配置してもらいたいとC部長に伝えました。自分たちは限られた資源の中で、他のチームの足を引っ張らない結果を残すよう全力を尽くすと。結果は社内で最下位でしたが、会社として、全国の中での目標を達成することができたのです。

普段は厳しいC部長が、Bさんの踏ん張りを認めたことで、場の空気は安心感に変わりました。Bさんだけでなく、他のメンバーも少し涙ぐんでいたように見えました。お互いに本当に辛い中で頑張ったことを共有できたのだと思います。

振り返りにおいて、こうした存在の承認がなされることで、「ともにいる」場になっていきます。他のメンバーも知らなかった真意を聞くことで、そこには「共感」が生まれます。

本人も真意には気づいていないことがほとんどです。1人1人の「言葉になっていない真実」を引き出すきっかけになるのが「その場に起こっていること」なのです。



メンバー全員が「ここにいていい」と感じられること。それが「わたしたちのチーム」への方向性です。

「ここにいていい」という安心感が生まれることで、前に向かって進もうとするエネルギーが生まれます。このミーティングでも、これを感じました。後半から来期にむけての戦略に話が移っていったとき、メンバーにはやらされている感はなく、チームで戦うというエネルギーが場に起こっていました。

体験して終わりではなく、いい振り返りが出来ているか。それが、次の体験に勇気をもって飛び込んでいけるかの鍵になります。「ここが自分の居場所」という安心感が土台にあるからこそ、「やってみよう」というエネルギーがチームに生まれます。

その鍵は「場に気づいている人」なのです。引っ張る人、支える人がそれぞれの役割を果たすためにも、場に気づいている人がいることが大切です。

あなたの組織において、今起こっていることに気づいている人は誰でしょうか?


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