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(小説)俺が『錬金術師』になった時 第3話

久しぶりの東京である。
去年6月末に退職して以来なので、ほぼ1年ぶりか。。。
羽田空港には、ユーザとSE2名の3名で降り立った。

まずは挨拶という事で、これから本社の虎ノ門ビルに行く事になっていた。
東京に一番詳しいのは、3名の中では俺だったので、ナビゲータになった。
しかし実際には、それ程詳しい訳ではない。。。
取敢えず、東京駅に出れば何とかなるだろう。

まずは、羽田空港で昼食を摂って、それから行こうと言う事で、3人でラーメン店に入った。
しかし、東京のラーメンは『醤油味』が強すぎるらしく、2人の口には合わない。
やはり2人には、『長浜ラーメン』の『豚骨スープ』が『最高の味』なのだ。

東京駅に出た後は、ユーザの方が道に詳しい。。。
俺は大学4年の就職活動の時以来である。

『打ち合わせ』はごく簡単に終えて、板橋の新築のデータセンターを見学に行く事になった。
新しい職場である。

着いてみると、オフィス街ではなく、住宅街の中に、そのビルはポツンと建っていた。
特徴的なのは、窓が一切無かった。。。
セキュリティに配慮しているのだ、と思った。

ユーザとはそこで分かれて、SE二人は住居探しに向かった。
もう一人のSEは、SE仲間の最古参(リーダー)である。
年は同じだが、妻帯者で子供が一人いる。
彼は、2LDK以上のマンションを希望しているのだが。。。

地図を見ていると、『都営三田線』沿線が乗り換えが無く、通勤に便利そうである。
探していると、『西台駅』の駅近に2LDKの新築マンションが在った。
現地に行って、現物を見ていると、生活に便利そうで、クーラーは部屋に付いている。

賃貸料は、14万5,000円、敷金と礼金は其々2ケ月分である。
但し、3階建てで、エレベータは無い。

連れのSEは、これが気に入って、即決めた!
俺は。。。
俺の東京時代の杉並の木造アパートは、3万8,000円であった。
しかし、環8の傍で、中央線の荻窪駅まで徒歩20分近くかかった。

この木造アパートを決めた時は、初任給の14万7,000円が前提だった。。。
今の月収は、単純計算でその時の5倍ある。
『何とか成るや!』

一部屋は当面不要なのだが、この不要な一部屋が後に大活躍する事を俺は想像していた!
これまで、引っ越しを何度も繰り返していて、この大事業が、人生一番の無駄と考えていたのだ!

契約を済ませて、一息つけると、マンションの前にあった中華料理店に2人で入った。
麺類が好きな俺は、再びラーメンとチャーハンを注文したが、連れのSE(リーダー)は、
「東京のラーメンは、醬油を食べているみたいで嫌だ!」と言って、定食を頼んだ。。。

東京に来た目的は、一通り全て終えたが、連れは、これから新橋の自社営業所に挨拶に行くらしい。。。
帰りは『飲み』になると思ったので、中華料理店の前で別れる事にした。

契約したばかりの自室は、もう使っても良い様子なので、『今夜はここで寝よう!』と、決めた。
駅前で見つけたスーパーで、カーテンと電灯と喫煙用具だけ買って、今度引っ越しで来た時に、早速必要な物を見て回った。
寝具は、高校時代に買った『キャンプ用寝袋』を持って来ている。
。。。こいつさえあれば、真冬以外なら、どこででも寝られる!

マンションに戻ってみると、ここのマンションのオーナー兼管理人が掃除道具を貸してくれた。
「これで寝られる!」
俺は丁寧にお礼を言って、掃除道具を管理人に返すと、缶コーヒーを探した。
自動販売機は、中華料理店の前に在った。

スーパーで『チケットびあ』を買って来たので、明日の予定を色々と考えている内に眠ってしまった。

<続く>

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