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【鑑録】メッツァ

長野の別荘地、カラマツ林の中の一軒の家の前に、「ペンションメッツァ」と書かれた看板が控えめに立っている。そのペンションの客室は一室のみで、その家に住むテンコ(小林聡美)はひとりでマイペースに暮らしていた。たまにふらりと現われる客はだいたいがひとり客ばかり。そんな客たちと関わっていくうちにテンコ自身も、自分のありように気付き始める。

《 『ペンションメッツァ』公式サイトより 》

WOWOW オリジナルドラマ『ペンションメッツァ』。

主演、小林聡美。
で。もたいまさこのカラミがある。
さらに…EDテーマ大貫妙子、とくれば。
やっぱり、『やっぱり猫が好き』。(笑)

まぁね、別れた旦那のシナリオでこの設定はありえんわな。いや、それ以前に方向性が違うもんね。

ただ、好んでみる人は大半、アレをEDテーマで連想されることでしょう。

『かもめ食堂』
『めがね』
『プール』

を、個人的に「意識高め、ゆるふわ三部作」と位置付けております。

個別にはかもめ食堂は見たけど、あとの二つは見ておりません。フードコーディネーター飯島奈美さん起用という、鉄壁の布陣で臨む本作。好きな人は好きなんだろーなぁ、これ。

糸井重里さんが喜んで評価しそうなかんじ、とでもいいますか。伊丹十三さんなら、少なからずアチコチにツッコミやらダメ出ししてくれそうです。

年間、数多の映像作品が世に出てくる中で。何パーセントとは云いませんが、確実にこの切り口で出てくる作品ってあると思います。本作でも適材適所。小林聡美さんという人を外しては、恐らく成り立たない空気というものが漂います。

だから、そういう意味では鉄板(需要は確実にある)作品。

余人をもって変えがたい、という言葉は、とりもなおさずキャラが立ってるということでもあり。旦那の脚本家が劇団の若いオネーさんと浮名を流し。「夫婦という構成単位ではもう共に過ごせない」と判断して離婚した小林聡美女史の背景も…。本作を見る上ではキャラ立ちに作用しております。

ヒトは生きたいように生きていいけど、生きたいように生きられる人間しか…生きたいようには生きられない。というのが、先述「意識高い系ゆるふわ作品」への最大のアンチテーゼ。

作中、第3話(ゲストキャスト:板谷由夏)にでてくる小林聡美女史の科白。今就ている生業が適職であるかないかに対してのハナシの中で「偶然もジブンで選択してるウチに入るんだと思うのよね」的なくだり。が、とても印象的でした。

適職…っちゅーか、生き方についての読み解き方なのかしらねぇ。

やさしい時間。

ともあれ。
主人公の天子さんはいろんなお客さまとの巡り合わせから、自分なりの生き方を見つける。それも、人生の中での通過点であり。別なお話への新しい幕開けでもある、という結び方は。三部作に通じる落ち着け方でございます。

そもそも、こーいう作品をしげしげと見れる時間があることこそ。恵まれた立場だったり環境だったりするということなのよね。「ここではないどこか」「アナタではない誰か」は永遠に追い求められる命題なのでしょう。

追い求めることのできる幸せ、も…あるのが幸せ。

本作、好きな人は監督•脚本同じく『パンとスープと猫日和』(松本佳奈女史)も、いつかどこかで機会があればご覧くださいまし。

本日これまで。(合掌)